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所得階級別に見た豆腐の家計支出

総務省統計局が公表している家計調査には、「年間収入五分位階級別」という分類がある。この五分位別に基づいて、2005年の農林漁家世帯を除く全国・全世帯(1世帯当たり)の豆腐に対する支出金額、購入数量、平均価格を別表にまとめた。

「五分位」とは、所得の低い人から高い人を順に並べて、20%で区分したことを意味する。第1五分位は下から20%に属する人のことを指し、第5分位は上位20%の人を指す。家計全体で豆腐の占める割合を分かりやすくするために、消費支出ならびに食料に対する支出金額(食費)も表に盛り込んである。

容易に予想されるように、所得の低い方から高くなるにつれて、つまり第1五分位から第5五分位にかけて、消費支出と食費は正比例関係で大きくなっている。その半面、消費支出に対する食費の割合(大まかに言えば、エンゲル係数)は、第1五分位から第5五分位にかけて反比例で小さくなっている。要は所得が低いほど、エンゲル係数が高い。豆腐の購入頻度も第5五分位に近いほど(所得が高くなるほど)回数が多くなる。第1五分位と第5五分位を比べてみると、一年間で約10回の購入頻度の差が生じていることが分かる。

しかし、まず注目すべきは豆腐に対する支出金額だろう。第2五分位(6,060円)と第3五分位(5,989円)の間で、差額71円とはいえ、逆転現象が見られる。また、よく見ると、第3五分位と第4五分位が食費に占める豆腐の割合が0.68%で同じことにも目が留まる。所得階層が高いからといって、豆腐への支出金額が増えたり、豆腐以外の食費の割合が高まったりするとは一概に言えないのである。

さらに驚くべきことが、豆腐の平均価格を五分位階級別に見ることで明らかになる。平均して最も高い豆腐を購入しているのは第5五分位(92.68円)であるが、第5五分位に次いで高いのは第2五分位(89.28円)なのだ。これは第4五分位(86.99円)を2.29円上回る。一方、平均して最も安い豆腐を購入しているのは第3五分位(85.15円)で、第1五分位(86.39円)よりも低額だ。このランダムな結果を見る限り、単純に所得階級別のマーケティング手法は通用しないように思われる。

豆腐横丁_200701
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浜名納豆の系譜

納豆は納豆菌によって発酵した大豆発酵食品だが、浜納豆は「納豆」という名前が付いているのに、いわゆる「糸引き納豆」とは違う。麹菌を使って発酵しているので、厳密には納豆と呼べない。総務省統計局の家計調査の品目分類でも、納豆ではなく「他の大豆製品」として区分されている。

静岡・浜名湖畔に位置する大福寺で作られたことから「浜名納豆(=浜納豆)」と呼ばれ、また京都の寺名から「浄福寺納豆」「大徳寺納豆」、あるいは総称として「寺納豆」と呼ばれることもある。豊臣秀吉も愛用し、徳川家康も好んだらしい。

浜名納豆は「唐納豆」という別名もあり、その名が示すとおり源流は古代中国の調味料であり、現代中国でも食べ続けられている豆豉(ドウチ)の系統の食品。その製法について、1〜2世紀の後漢時代の『釈名』には「蒸した豆をむしろに広げ、かやで覆ってカビを生やし、これをかめに入れて漬け込んだもので、カビなどによって醸しだされた風味は複雑で、五味を調和して作る甘嗜(珍味)である」と注釈している。

豆豉の製法は古墳時代に渡来したといわれ、奈良時代、既に宮内省の大膳職で作られており、当時は「豉(くき)」という食べ物だった。塩の分量によって「淡豉(たんし)」と「鹹豉(かんし)」の2種が、寺社や調味料を専門に製造する醤院で造られ、月料として官吏に支給されていたそうだ。

浜納豆について、17世紀末の『本朝食鑑』には次のように記されている。

納豆は豉(くき)に似ているが、製法は豉と異なっている。二種の納豆があり、ひとつは今の糸引き納豆で、他は、浜名納豆、寺納豆、唐納豆などと呼ばれるもので、炒った小麦、炒った大麦、および煮た白大豆の三種の麹を塩水に浸して混ぜ合わせ、押しをして発酵させ、三〇日ほど経て撹拌し、しその葉、穂、実、それに蓼の葉、穂、生姜、山椒の樹皮等を加え貯蔵する。遠州の浜名納豆は、家康が駿河城におわしたとき、大福寺、摩迦耶寺の僧に命じてつくらせたもので、味は甘、鹹、微苦を帯びている。ただし、山椒の皮は、尋常なものでなく、甚だ辛いものである。その製法は秘密で知る人は少ない

※「豉」は、「豆」偏に「支」。

参考文献:吉川誠次・大堀恭良『日本・食の歴史地図』(日本放送出版協会)

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大豆の輸入実績(2001〜2005年)

大臣官房国際部国際政策課情報企画班が調査したわが国における大豆の輸入実績(下表)を見ると、総輸入量は2003年の517万2,520トンをピークに減少しており、2005年は418万626トンだった。総輸入額としては2004年が最も大きく、1,923億4,869万円を記録している。
(2006年の調査結果は、現時点では公表されていない)

日本が大豆を輸入している上位4か国は、近年まったく変化がない。米国、ブラジル、カナダ、中国の順で多く、この上位4か国だけで総輸入量のほぼすべてを占めている。2003年までは中国に次いで輸入量の多かったパラグアイ、アルゼンチンは、2004年にオーストラリアに抜かれている。この年、オーストラリアからの輸入量は前年の289トンから3,506トンと4けたに復帰する一方で、パラグアイは前年の212分の1、アルゼンチンは前年の106分の1と激減ぶりが印象的だ。しかしながら、オーストラリアと上位4か国との開きはまだまだケタ違いに大きい。

中国は13万トン台から18万トン台まで底上げしている。カナダは16万トン台に落ち込んだ年があったものの、2004年に25万9,437トン、2005年は30万5,383トンと輸入量を着実に増やしている。ブラジルは2003年の88万9,920トンをピークに70万トン台、50万トン台と目減りし始めた。

わが国最大の大豆輸入国である米国はというと、輸入量は300万トン台で推移しており、最多は2003年の385万8,383トン。いずれの年も総輸入量の72〜76%を米国が占めており、改めて米国産大豆の存在感を思い知らされる。輸入額では2004年の1,350億8,330万円が最多となっている。

大豆の輸入実績_2005

大豆の輸入実績_2004

大豆の輸入実績_2003

大豆の輸入実績_2002

大豆の輸入実績_2001

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狸汁について

「狸汁」を『広辞苑』で引くと、「狸の肉に大根・牛蒡などを入れて味噌で煮た汁。こんにゃくと野菜を一緒にごま油でいため、味噌で煮た汁。仏家での代用とした精進料理」と明解に定義されている。

元来、日本は文明開化以前にさかのぼってみると、殺生をしてはならない、肉食もならないというお国柄であった。仏教が伝来し、国家宗教的なポジションを確立し始めた奈良時代前後、獣類の殺生や獣類の肉を食べることを禁じる勅令がしばしば発布されて以来のことである。そうして明治の世になるまでは、日本の一般的食習慣として獣肉食全体を忌避するようになっていた。

ただし、それは建前とも受け取れるタブーであり、日本的な精神の下では厳格な禁令として作用せず、家畜は駄目だが野生動物は良い、といった曖昧な形を取った。「薬食い」などという習慣は、本音と建前の使い分けの好例ではなかろうか。

さて、問題のタヌキである。元々は本物のタヌキの肉を用いて作ったというが、精進料理としてみても、仏法を護持する立場の僧が獣肉を食するわけにはいかない。そこでタヌキ肉の代わりに、こんにゃくを用いたのが狸汁なのだという。

安永期(1770年代)の俳人、小栗百万の著した『屠竜工随筆』では、狸汁について「狸を汁にて煮て食ふには、其肉を入れぬ先、鍋に油を別ていりて後、牛蒡、蘿蔔(だいこん)など入て煮たるがよしと人のいへり、されば菎蒻などをあぶらにていためて、ごぼう、大こんとまじへて煮るを名付け狸汁といふなり」と説明されている。

『豆腐百珍』以降の「百珍」ブームに乗って、弘化3年(1846年)に出版された嗜蒻凍人『蒟蒻百珍』でも狸汁は紹介されている。「前方の通りにして 味噌しる 大根おろし 又はきらずなどせり二分きりはらりと入べし 吸物にもよし」とある。

「前方の通り」とは先に載った「小鳥もとき」のように「湯煮し 乱にちぎり 香油にて揚 もつとも色のつくほどよろし」とするこんにゃくの調理法のことを指す。こんにゃくを油でいためるのは、こんにゃくの中から余計な水分を出す効果的な方法だが、そこからさらに汁物に仕立て上げるところが面白い。

参考文献:浅田峰子『新・こんにゃく百珍』(グラフ社)

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