成分から見た豆腐の種類
同じ豆腐でも木綿豆腐や絹ごし豆腐など種類があるように、豆腐は作り方を少し変えるだけで硬軟、食味・風味、含水量、肌目といった特徴に違いが出る。だが成分にも違いはあるのか、どれくらい違うのか。それを、2000年に科学技術庁資源調査会が報告した「五訂日本食品標準成分表」で確かめてみた。豆乳と干し湯葉とも比較した。
下記の表を見ると、干し湯葉のエネルギー量が目立つが、これは水分を飛ばして乾燥させてあるため。そうでなくても、豆乳を加熱してできたたんぱく質の薄い膜である湯葉は凝縮されているため、同量では自然とカロリーも高くなる。
豆腐の場合、たんぱく質含量とエネルギー量はほぼ正比例の関係にある。もともと同じ豆乳からできた製品であれば、100グラム当たりのたんぱく質の量は含水量に左右される。水分の多い絹ごし豆腐(100グラム中89.4グラム)のたんぱく質含量およびエネルギー量が、木綿豆腐より少ないのはそのためである。木綿豆腐の水分は100グラム中86.8グラム。しかしビタミンB1やB2などの水溶性のビタミンは、木綿豆腐より絹ごし豆腐の方が多く含まれている。
「五訂食品成分表」には、他にソフト豆腐、充填豆腐、沖縄豆腐、ゆし豆腐、焼き豆腐の成分も記載されている。たんぱく質をもっとも多く含む豆腐は、すなわち堅く絞って水分の最も少ない豆腐で沖縄豆腐(100グラム当たり水分が81.8グラム、たんぱく質が9.1グラム)、続いて焼き豆腐(100グラム当たり水分が84.8グラム、たんぱく質が7.8グラム)となっている。
さらに焼き豆腐はカルシウムをもっとも多く含む(150ミリグラム)。沖縄豆腐はゆし豆腐とともにマグネシウムをもっとも多く含んでおり(66ミリグラム)、沖縄の豆腐はミネラル分が極めて豊富であることが分かる。カルシウムも木綿豆腐と同量(120ミリグラム)で豊富だ。一方で、充填豆腐がビタミンB1を0.15ミリグラム、B2を0.05ミリグラム含有していることも目につく。

参考文献:林幸子『おいしい!豆腐ざんまい』(永岡書店)
下記の表を見ると、干し湯葉のエネルギー量が目立つが、これは水分を飛ばして乾燥させてあるため。そうでなくても、豆乳を加熱してできたたんぱく質の薄い膜である湯葉は凝縮されているため、同量では自然とカロリーも高くなる。
豆腐の場合、たんぱく質含量とエネルギー量はほぼ正比例の関係にある。もともと同じ豆乳からできた製品であれば、100グラム当たりのたんぱく質の量は含水量に左右される。水分の多い絹ごし豆腐(100グラム中89.4グラム)のたんぱく質含量およびエネルギー量が、木綿豆腐より少ないのはそのためである。木綿豆腐の水分は100グラム中86.8グラム。しかしビタミンB1やB2などの水溶性のビタミンは、木綿豆腐より絹ごし豆腐の方が多く含まれている。
「五訂食品成分表」には、他にソフト豆腐、充填豆腐、沖縄豆腐、ゆし豆腐、焼き豆腐の成分も記載されている。たんぱく質をもっとも多く含む豆腐は、すなわち堅く絞って水分の最も少ない豆腐で沖縄豆腐(100グラム当たり水分が81.8グラム、たんぱく質が9.1グラム)、続いて焼き豆腐(100グラム当たり水分が84.8グラム、たんぱく質が7.8グラム)となっている。
さらに焼き豆腐はカルシウムをもっとも多く含む(150ミリグラム)。沖縄豆腐はゆし豆腐とともにマグネシウムをもっとも多く含んでおり(66ミリグラム)、沖縄の豆腐はミネラル分が極めて豊富であることが分かる。カルシウムも木綿豆腐と同量(120ミリグラム)で豊富だ。一方で、充填豆腐がビタミンB1を0.15ミリグラム、B2を0.05ミリグラム含有していることも目につく。

参考文献:林幸子『おいしい!豆腐ざんまい』(永岡書店)
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妙解寺納豆
先月15日(=2007年2月現在)、九州産交ツーリズム(矢田素史社長、熊本市)は、江戸時代の食材・調理法を復元した「肥後54万石料理物語」を開発し、第1弾として「細川御膳」を販売すると発表。熊本城築城400年祭にちなんだ特別企画で、同社は「季節に応じて第2弾、第3弾を企画し、熊本観光振興の一助をめざす」としている。
「細川御膳」は、肥後藩主細川家の御料理頭、村中乙右衛門が書き残した秘伝書『料理方秘』(1803年)に記されたレシピを基に、郷土史家や料理研究家の協力を得て復元したもの。『料理方秘』のレシピは約200種に上り、この中から「芋茎(ずいき)」や「妙解寺納豆」など、細川家と特にゆかりの深い農産物や海産物を選んで、現代人の嗜好に合うように味付け、調理法を工夫したという。
寛永18(1641)年に細川家3代忠利公が亡くなり、その墓所を現在の熊本市の花岡山のふもとに設け、墓地を守護するために寺が建立された。寛永20年、沢庵と同門の啓室宗栄が下向、住職となり、忠利の戒名「妙解院殿」に基づいて寺号を「護国山妙解寺」と名付けた。以後、明治4年に廃寺となるまで、歴代藩主の菩提寺とされていたそうだ。
さて、妙解寺を開いた住職は沢庵和尚(1573〜1645年)と同門だった。沢庵は江戸時代初期の臨済宗の僧だが、あの大徳寺にも歴住していた。つまり大徳寺納豆(=浜納豆、寺納豆)の流れが妙解寺にも伝わり、「妙解寺納豆」に結実したとも考えられるのである。
ちなみに「細川御膳」の献立は、(1)硴ころはし・寄玉子・箱寿司(2)伊勢膾(3)煎麩(4)芋茎南関あげ巻き(5)煎酒煮(6)鰤焼・辛子蓮根・飾り絵馬(7)今出川豆腐(8)笹巻麩(9)呉汁(10)五穀米(11)青高菜(12)季節の果物——となっている。熊本交通センターホテル宴会場およびレストランで販売しており、価格は5,000円(税・サービス料込み)。予約は2人以上で3日前まで受け付けている。寺納豆は抜きにしても、大豆加工品はやはり伝統料理に欠かせないのである。
「細川御膳」は、肥後藩主細川家の御料理頭、村中乙右衛門が書き残した秘伝書『料理方秘』(1803年)に記されたレシピを基に、郷土史家や料理研究家の協力を得て復元したもの。『料理方秘』のレシピは約200種に上り、この中から「芋茎(ずいき)」や「妙解寺納豆」など、細川家と特にゆかりの深い農産物や海産物を選んで、現代人の嗜好に合うように味付け、調理法を工夫したという。
寛永18(1641)年に細川家3代忠利公が亡くなり、その墓所を現在の熊本市の花岡山のふもとに設け、墓地を守護するために寺が建立された。寛永20年、沢庵と同門の啓室宗栄が下向、住職となり、忠利の戒名「妙解院殿」に基づいて寺号を「護国山妙解寺」と名付けた。以後、明治4年に廃寺となるまで、歴代藩主の菩提寺とされていたそうだ。
さて、妙解寺を開いた住職は沢庵和尚(1573〜1645年)と同門だった。沢庵は江戸時代初期の臨済宗の僧だが、あの大徳寺にも歴住していた。つまり大徳寺納豆(=浜納豆、寺納豆)の流れが妙解寺にも伝わり、「妙解寺納豆」に結実したとも考えられるのである。
ちなみに「細川御膳」の献立は、(1)硴ころはし・寄玉子・箱寿司(2)伊勢膾(3)煎麩(4)芋茎南関あげ巻き(5)煎酒煮(6)鰤焼・辛子蓮根・飾り絵馬(7)今出川豆腐(8)笹巻麩(9)呉汁(10)五穀米(11)青高菜(12)季節の果物——となっている。熊本交通センターホテル宴会場およびレストランで販売しており、価格は5,000円(税・サービス料込み)。予約は2人以上で3日前まで受け付けている。寺納豆は抜きにしても、大豆加工品はやはり伝統料理に欠かせないのである。
大豆の“豆”知識
食品摂取の理想的なバランスは、「魚1、豆1、野菜4」と昔から言い伝えられ、豆類は安価でありながら、牛肉や魚に含まれる動物性たんぱく質より良質な植物性たんぱく質を持つ優良食材として、世界中の家庭の食卓に上ってきた。とりわけ、大豆が健康に効用のある優れた「畑の肉」であることは、繰り返し語られてきた。
中国が原産でありながらも、豆腐や納豆、味噌、醤油などに加工され、日本の歴史や食文化とは切っても切り離せない大豆だが、同じ“豆”の仲間と比較した場合、大豆は一体どれほど優れているのか。2000年に科学技術庁資源調査会が報告した「五訂日本食品標準成分表」で確認してみる。
豆類を植物学的に細分類すると、大豆類、小豆類、いんげん豆類、えんどう豆類、そら豆類の5種に大別される。また脂質をより多く含む豆類と、でんぷんを多く含む豆類とに区分することもできる。前者は大豆や落花生であり、後者が小豆やえんどう豆、いんげん豆、そら豆となる。
別表を見て分かるように、どの豆類にもたんぱく質は含まれているが、大豆のたんぱく質は100グラム中35.3グラムで最も多い。牛肉(100グラム中18.3グラム)や魚(100グラム中18.7グラム)と比べると、およそ2倍に匹敵する。魚の中でもマグロにはたんぱく質が約24グラム含まれているが、それでも大豆には及ばない。
たんぱく質だけではない。豆類には人体に不足しがちなビタミンB群やビタミンEも豊富に含まれているが、「情報化時代のビタミン」といわれるビタミンB1は100グラム中0.83ミリグラムで大豆が最も多く、「発育ビタミン」といわれるビタミンB2も0.30ミリグラムでやはり大豆が最多。いずれの豆類も身体の機能維持や調整に欠かせないミネラル分を潤沢に供給してくれるありがたい食品である。
だが、その中でも大豆はカルシウム、鉄分、リン、カリウムのすべてにおいて、小豆、えんどう豆、いんげん豆を上回っている。いわば豆の中の豆、地上最強の豆なのである。

参考文献:永山久夫・監修『からだイキイキ!豆食生活』(永岡書店)
中国が原産でありながらも、豆腐や納豆、味噌、醤油などに加工され、日本の歴史や食文化とは切っても切り離せない大豆だが、同じ“豆”の仲間と比較した場合、大豆は一体どれほど優れているのか。2000年に科学技術庁資源調査会が報告した「五訂日本食品標準成分表」で確認してみる。
豆類を植物学的に細分類すると、大豆類、小豆類、いんげん豆類、えんどう豆類、そら豆類の5種に大別される。また脂質をより多く含む豆類と、でんぷんを多く含む豆類とに区分することもできる。前者は大豆や落花生であり、後者が小豆やえんどう豆、いんげん豆、そら豆となる。
別表を見て分かるように、どの豆類にもたんぱく質は含まれているが、大豆のたんぱく質は100グラム中35.3グラムで最も多い。牛肉(100グラム中18.3グラム)や魚(100グラム中18.7グラム)と比べると、およそ2倍に匹敵する。魚の中でもマグロにはたんぱく質が約24グラム含まれているが、それでも大豆には及ばない。
たんぱく質だけではない。豆類には人体に不足しがちなビタミンB群やビタミンEも豊富に含まれているが、「情報化時代のビタミン」といわれるビタミンB1は100グラム中0.83ミリグラムで大豆が最も多く、「発育ビタミン」といわれるビタミンB2も0.30ミリグラムでやはり大豆が最多。いずれの豆類も身体の機能維持や調整に欠かせないミネラル分を潤沢に供給してくれるありがたい食品である。
だが、その中でも大豆はカルシウム、鉄分、リン、カリウムのすべてにおいて、小豆、えんどう豆、いんげん豆を上回っている。いわば豆の中の豆、地上最強の豆なのである。

参考文献:永山久夫・監修『からだイキイキ!豆食生活』(永岡書店)
斎藤茂吉とこんにゃく
歌人でありつつ、精神科医でもあった斎藤茂吉は、明治15(1882)年に生まれ、昭和28(1953)年に亡くなっている。作家の北杜夫は二男、昨年末に逝去した医師で随筆家の斎藤茂太は長男に当たる。歌人としては伊藤左千夫に師事し、アララギ派の中心人物として活躍した。
その斎藤茂吉、生地は山形である。山形といえば、こんにゃくの消費量において他の都道府県の追随を許さず、日本一を誇っているのだが、斎藤茂吉の幼い時代もそうであったのか。それとも長じてから、関東近郊の旅先で目に触れたこんにゃくに感興を催されたのか。茂吉はこんにゃくをいくつかの歌に詠み込んでいる。
旅をきてかすかに心の澄むものは一樹のかげの蒟蒻ぐさのたま
こんにゃくの茎の青斑(あおふ)の太茎をすぽりと抜きて声もたてなく
伊賀出身の俳聖・松尾芭蕉(1644〜1694年)は、こんにゃく好きが高じたあまり、たびたび句の題材としていることについて、以前にも触れたことがある。しかし、芭蕉が描いたこんにゃくが専らに食品としてのこんにゃくであったのに対し、茂吉が取り上げるのは植物としてのこんにゃくである。
定型の短詩形式の中に、生々しく、的確な描写でこんにゃくを捕らえている。こんにゃくの太い茎に入った青い斑点に見入りながら、「すぽりと」抜く肉感性に、こんにゃくの原産地がインドシナであることに思いをはせるのは飛躍し過ぎだろうか。樹の陰にひっそりと潜んでいたものは、グロテスクに見えないこともないこんにゃく玉だったのか。荒々しい情熱をこんにゃくの形象の下に押さえ込んでいるかのようだ。
日焼畑いくつも超えて茎太のこんにゃく畑にわれ入りにけり
その斎藤茂吉、生地は山形である。山形といえば、こんにゃくの消費量において他の都道府県の追随を許さず、日本一を誇っているのだが、斎藤茂吉の幼い時代もそうであったのか。それとも長じてから、関東近郊の旅先で目に触れたこんにゃくに感興を催されたのか。茂吉はこんにゃくをいくつかの歌に詠み込んでいる。
旅をきてかすかに心の澄むものは一樹のかげの蒟蒻ぐさのたま
こんにゃくの茎の青斑(あおふ)の太茎をすぽりと抜きて声もたてなく
伊賀出身の俳聖・松尾芭蕉(1644〜1694年)は、こんにゃく好きが高じたあまり、たびたび句の題材としていることについて、以前にも触れたことがある。しかし、芭蕉が描いたこんにゃくが専らに食品としてのこんにゃくであったのに対し、茂吉が取り上げるのは植物としてのこんにゃくである。
定型の短詩形式の中に、生々しく、的確な描写でこんにゃくを捕らえている。こんにゃくの太い茎に入った青い斑点に見入りながら、「すぽりと」抜く肉感性に、こんにゃくの原産地がインドシナであることに思いをはせるのは飛躍し過ぎだろうか。樹の陰にひっそりと潜んでいたものは、グロテスクに見えないこともないこんにゃく玉だったのか。荒々しい情熱をこんにゃくの形象の下に押さえ込んでいるかのようだ。
日焼畑いくつも超えて茎太のこんにゃく畑にわれ入りにけり