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納豆の「東高西低」を検証する

納豆の消費量に関して「東高西低」と評されることが多いが、関西で納豆が普及してきた今もそうなのか、実態をデータで探ってみた。

納豆の消費量については全国的なデータが得られないため、総務省統計局が公表している2006年の2人以上の世帯(農林漁家世帯を除く)を対象とした家計調査での納豆の都道府県庁所在市別・地方別家計支出金額の結果を用いた。無論、納豆の小売価格も地域によって異なるため、厳密には支出金額と消費量が一致するとは言えないが、ここでは大目に見る。また単に支出金額を比較するよりも、食料に対する支出金額中に占める納豆の金額を見ることで、より地域的な嗜好性が表れると推測し、都道府県庁所在市別・地方別に食料全体に対する納豆の支出金額の比率を割り出した(下図)。



全国平均の食料支出金額は年間89万2,116円、納豆の支出金額は3,847円。よって全食料費に占める納豆の割合は0.43%。ちなみに豆腐(6,416円)は0.72%だった。都道府県庁所在市別で比率が最も大きいのは、やはり本場の水戸で0.72%。次いで福島0.71%、盛岡0.62%、前橋0.62%、青森0.62%、仙台0.60%と続き、東北〜関東地方が占めている。逆に比率が最も小さいのは、和歌山で0.20%。次いで大阪0.24%、神戸0.27%、高知0.28%、岡山0.30%、徳島0.30%、鳥取0.30%と続き、近畿、中国、四国地方が占めている。だが、札幌は鹿児島より低く、九州は北九州を除いていずれの市も0.4%を超えており、「東高西低」は間違いないが、本州においてのことだと分かる。

地方別の比率を割り出すと、北海道0.54%、東北0.67%、関東0.49%、北陸0.44%、東海0.35%、近畿0.29%、中国0.34%、四国0.29%、九州0.44%、沖縄0.39%。近畿と四国地方はともに0.3%を割り込み、依然として食料支出に占める納豆比率の低さが際立っている。

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イソフラボンと乳がん

悪性腫瘍の「がん」が厄介なのは、大きくなって転移し、広がっていくことである。がん細胞は栄養を補給するために腫瘍血管という特別な血管を作り、それを通じて転移するので、がんを顕微鏡で診る際には、がん細胞の周りにできている腫瘍血管の様子を参考にして、悪性の度合いを判断する。腫瘍血管が張りめぐらされていると、取り除いたとしても転移している可能性が高い。大豆などマメ科植物に多く含まれるイソフラボンには腫瘍血管が新しく作られるのを抑える効果があり、そのためがん細胞が急速に増殖し転移するのを防ぐと考えられている。

大豆イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)と構造が似ていて、エストロゲン様作用はもちろんだが、エストロゲンの悪い面を防ぐ働きもある。エストロゲンは強く働き過ぎて、レセプター(受容体)に入ると乳がんを増殖させてしまうこともあるが、イソフラボンを取り入れて先にレセプターに入るようにしておくと、エストロゲンがレセプターに入ることができず、結果として乳がんが大きくなるのを防ぐことができる。エストロゲンのレセプターにイソフラボンが代わりに入ることで、エストロゲンがレセプターに入り込めなくなり、作用を発揮できなくなる(増殖できなくなる)のである。

かつて一部のマスコミが「女性ホルモンにはがんを大きくする作用もあるから、イソフラボンも取り過ぎは良くないのでは」と報じたが、食品安全委員会では「現在までに入手可能なヒト試験に基づく知見では、大豆イソフラボンの摂取が女性における乳がん発症の増加に直接関連しているとの報告はない」としている。実際、大豆イソフラボンの作用は、エストロゲンに比べて1,000分の1か、1万分の1と極めて小さく、むしろレセプターに入ることによってエストロゲンの強過ぎる作用をブロックする。漢方薬のように、女性ホルモンが不足している場合は補い、強過ぎる場合は抑えるのである。

また、ダイオキシンなどの環境ホルモン(内分泌撹乱物質)が、同じレセプターに長く居座ってがんを発生させると考えられているのと異なり、イソフラボンはレセプターに入ってもすぐに抜けて尿中に排出されるので、そういった心配もない。

参考文献:家森幸男『110歳まで生きられる!脳と心で楽しむ食生活』(日本放送出版協会)

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近江八幡の赤こんにゃく

滋賀・近江八幡のこんにゃくと言えば、「赤こんにゃく」が有名である。全国的にも珍しい赤いこんにゃくだが、近江八幡では普段の食卓に上り、また冠婚葬祭にも欠かせない食材だという。

その起源は、永源寺開創の寂室元光禅師が中国から種芋を持ち帰って始まったとされる永源寺周辺でのこんにゃく作りの製法(2008年2月「永源寺こんにゃく」参照)を、僧から教わった武士が八幡村に広めたと伝わっているが、定かではない。正確な史料は残されていないため、これも民間伝承の類ではあるが、赤こんにゃくは織田信長にゆかりがあるともいわれている。

近江八幡は、織田信長が亡くなった後、豊臣秀次が八幡山城を築き、それに伴って安土から移住した人々を中心として開かれた町である。安土城下では毎年正月に左義長祭が盛大に繰り広げられており、織田信長も自ら華美な女装姿で躍り出た、と『信長公記』に記されている。現在も近江八幡に春の訪れを告げる奇祭「左義長まつり」は、そのルーツを安土に求められる。

そこから、祭り好きでかぶき者の武将・織田信長が、こんにゃくまで赤く染めさせたのが近江八幡の赤こんにゃくの由来という説も生まれた。「左義長まつり」に関しては、近江商人が祭りの山車に飾られる赤紙からヒントを得て考案したとの説もある。

文献で確認できる限りでは、膳所藩主・本多康敏の命を受けて藩士の寒川辰清が編纂に着手し、享保19(1734)年に完成した近江国の地誌『近江輿地志略』において、八幡村のこんにゃくが「八幡の土人製造する。甚だ大きく味よし」と書かれている。このことから、18世紀の初めごろには土産物として売られていたことが分かるのだが、これがいつ赤くなったのかというと、はっきりしないようだ。

『八幡町史』によると、以前はトウキビ(唐黍)の実の皮を混ぜて着色していたもので、食紅を用いるようになったのは明治以後であるらしい。旧八幡町域に当たる、近江八幡市為心町にある乃利松食品・吉井商店では現在も赤こんにゃくの製造を手掛けているが、赤の着色料には食品添加物の三二酸化鉄を使用している。普通のこんにゃくと比較すると、三二酸化鉄で着色しているため、鉄分を豊富に含んでいるそうだ。

参考文献:滋賀の食事文化研究会・編『芋と近江のくらし』(サンライズ出版)

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揚げ油の酸価値

揚げ油の酸価値にはどのような基準が定められているのか。例えば、かつて群馬県地域食品認証制度においては、油揚げ類の揚げ油の酸価値は「AV3以下」と定められていた。地域食品認証制度は「ミニJAS(日本農林規格)制度」とも呼ばれ、本来、該当地域内において製造され、主にその圏内で流通・消費される加工食品を「地域食品」として認証し、品質の改善、生産の合理化、表示の適正化を図るとともに、消費者の商品選択の目安とすることを目的とした。

この制度を設けた群馬県では、流通する加工食品のうち4品目(豆腐、油揚げ、納豆、こんにゃく)、静岡県では5品目(豆腐、油揚げ、納豆、こんにゃく、かまぼこ類)が地域食品の対象とされ、制度内で揚げ油の酸価値も規制されていた。

しかし、流通の広域化に伴い地域食品という位置付けが薄れてきたことや、「改正JAS法」で品質表示が義務化されたことなどから、群馬県をはじめ廃止に至ったところが多い。まだ制度が残存しているのは岩手、山形の2県のみ(2008年1月末現在)。ただ、過去の制度が廃止されても、揚げ油の酸価値には規制値がある。

農林水産省所管の「JAS法」では、揚げ油の酸価値に関して規制はしていない。旧来の地域食品認証制度における油揚げの酸価値「AV3以下」は、厚生労働省が所管する「食品衛生法」で定めた即席めん類(油揚げ麺)の基準値に基づいたものだった。

食衛法の「食品、添加物等の規格基準」では、即席めん類(油揚げ麺)を対象として、めんに含まれる油脂の酸価が3以下、過酸化物価が30meq/kg以下(油脂1グラム中の遊離脂肪酸の中和に要する水酸化カリウムが30ミリグラム以下)と規定されている。

また、厚生労働省の通達「菓子の製造・取り扱いに関する衛生上の指導について」(1977年11月16日環食第248号)では、油脂で処理した菓子(ポテトチップス、スナック菓子など)を対象に、酸価5以下で過酸化物価30meq/kg以下、または酸価3以下で過酸化物価50meq/kg以下と規定されている。同じく通達「弁当及びそうざいの衛生規範について」(1979年6月29日環食161号)では、揚げ処理中の油脂が「酸価が2.5を超えたもの」はすべてを新しい油脂と交換することとしている。

以上のことから、油揚げ類の製造に用いる揚げ油の酸価値は、食品衛生法や他の通達によるAV3以下(「弁当及びそうざいの衛生規範」に従うならばAV2.5以下)の規格が適用されることが分かる。

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