こんにゃく関税とドーハ・ラウンド
わが国における輸入農産物の「重要品目」の税率をWTOの算定方式で試算すると、下表のようになる(「日本経済新聞」2008年7月29日号)。コメの778%も大きいが、こんにゃく芋(精粉)の1,705%には到底及ばない。

この輸入こんにゃくに対する高関税が、新多角的貿易交渉の結果次第でどのような影響を受けるか、群馬県が試算を行った。試算方法は、「75%以上の関税については66〜73%の削減が必要とされる」とする農業交渉議長案に織り込まれた関税の削減率(最大73%)を適用した。
こんにゃくが「重要品目」から漏れ、削減率の大きい「一般品目」に選別された場合、中国産の輸入こんにゃく粉は現状の1kg当たり3,413円から1,372円に急落してしまう。他方で「重要品目」として関税削減率が24%にとどまった場合は2,741円にとどまり、国内への影響は小さい。
群馬県は国に重要品目化を要請しているが、WTOのパスカル・ラミー事務局長が提示した裁定案によると、先進国の農産物の重要品目数は全品目の4%が原則、低関税の輸入枠を拡大したとしても2%の上乗せで6%までしか認められない。日本の全農産物は1,332品目で、重要品目数が6%の場合、対象は約80品目。コメ類だけでも17品目、麦や乳製品類を加えるだけで96品目になり、6%のラインを超えてしまう。
新多角的貿易交渉は、世界貿易機関(WTO)に加盟する約150か国・地域による通商交渉で、農産物や鉱工業品の貿易自由化、サービス分野の規制緩和などを幅広く行うための包括交渉。先の多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)からしばらくの間を置いて、2001年のドーハ閣僚会合で立ち上げられたため「ドーハ・ラウンド」とも呼ばれる。2003年、メキシコ・カンクンの閣僚会合での交渉決裂を経て、2004年にスイス・ジュネーブで「枠組み合意」が採用された。
その後2008年7月、ジュネーブで閣僚会合が行われたが、市場開放を促す関税率の引き下げや、関税を引き上げるセーフガード(特別緊急輸入制限措置)の扱いをめぐって、米国など先進国と、インドや中国など新興国との利害が対立し、交渉は決裂した。年内の合意が期待されるところだが、米証券大手のリーマン・ブラザーズの経営破綻から世界的な金融恐慌の懸念が高まったため、年内の妥結は困難になり、閣僚会合が2010年まで持ち越されるのではないかとの意見も出ている。

この輸入こんにゃくに対する高関税が、新多角的貿易交渉の結果次第でどのような影響を受けるか、群馬県が試算を行った。試算方法は、「75%以上の関税については66〜73%の削減が必要とされる」とする農業交渉議長案に織り込まれた関税の削減率(最大73%)を適用した。
こんにゃくが「重要品目」から漏れ、削減率の大きい「一般品目」に選別された場合、中国産の輸入こんにゃく粉は現状の1kg当たり3,413円から1,372円に急落してしまう。他方で「重要品目」として関税削減率が24%にとどまった場合は2,741円にとどまり、国内への影響は小さい。
群馬県は国に重要品目化を要請しているが、WTOのパスカル・ラミー事務局長が提示した裁定案によると、先進国の農産物の重要品目数は全品目の4%が原則、低関税の輸入枠を拡大したとしても2%の上乗せで6%までしか認められない。日本の全農産物は1,332品目で、重要品目数が6%の場合、対象は約80品目。コメ類だけでも17品目、麦や乳製品類を加えるだけで96品目になり、6%のラインを超えてしまう。
新多角的貿易交渉は、世界貿易機関(WTO)に加盟する約150か国・地域による通商交渉で、農産物や鉱工業品の貿易自由化、サービス分野の規制緩和などを幅広く行うための包括交渉。先の多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)からしばらくの間を置いて、2001年のドーハ閣僚会合で立ち上げられたため「ドーハ・ラウンド」とも呼ばれる。2003年、メキシコ・カンクンの閣僚会合での交渉決裂を経て、2004年にスイス・ジュネーブで「枠組み合意」が採用された。
その後2008年7月、ジュネーブで閣僚会合が行われたが、市場開放を促す関税率の引き下げや、関税を引き上げるセーフガード(特別緊急輸入制限措置)の扱いをめぐって、米国など先進国と、インドや中国など新興国との利害が対立し、交渉は決裂した。年内の合意が期待されるところだが、米証券大手のリーマン・ブラザーズの経営破綻から世界的な金融恐慌の懸念が高まったため、年内の妥結は困難になり、閣僚会合が2010年まで持ち越されるのではないかとの意見も出ている。
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鈴木三重吉の湯豆腐
鈴木三重吉(1892〜1936年)は、広島県生まれの小説家であり、児童文学者。雑誌『赤い鳥』を創刊し、芥川龍之介、小川未明、菊池寛、北原白秋、佐藤春夫、島崎藤村、谷崎潤一郎ら贅沢極まりないメンバーを執筆陣にそろえた。同誌に掲載された白秋の童話や自由詩は、人気を呼んだ。日本の「児童文化運動の父」とも呼ばれた三重吉は、夏目漱石の門下生で、我の強さは酒癖の悪さに表れた。酒の肴にやかましかったが、それだけ三重吉の料理に関する文章は細かく、洗練されている。「湯豆腐と冷奴」というエッセーから、さわりの部分を抜粋する。
宅での料理法。いずれにも絹ごしは不可。普通の豆腐でも昆布のダシで少しの間煮れば柔かくなる。普通鍋の中に昆布をしきっ放しにし、その中へ豆腐を入れるが、それでは昆布のダシが十分に出ないうちに豆腐を食うわけになり、味もなく柔かくもならず。ダシは別に作りおくを可とす。ダシの作り方は一升の水へ昆布を大一枚ぐらい(どっさり)入れ強烈な火でぐつぐつ三十分も煮て五合に煮つめ、どんぶりに取り、豆腐の鍋へ補充することになる。それ故、人数を計り一度に食うだけ数えて入れ、中身まで温かになりし頃、早く引上げて食う。煮えた豆腐が鍋の中に停滞しないこと肝要。シタジは普通、湯呑なぞを豆腐鍋のまん中に入れ、かつおぶしの粉と生醤油を入れてすましている人多し。宅では、シタジは水二合へかつおぶし粉を沢山入れ、強火で五勺に煮つめ、それへ生醤油一合半、みりん茶さじ半分を入れてさっと煮て下す。五秒位、このとき醤油を一分間も煮ると最早ダシとして失敗す。このダシを少しずつ、豆腐鍋の中の湯呑に入れ、温まったとき豆腐の上にレンゲでかける。鍋の湯呑の中のシタジへ豆腐をつけては皿にとる人あれど、それではダシには段々に湯が入りまずくなる。豆腐を皿にとり薬味を上にかけ、鍋の汁少々を豆腐の横から皿に入れ(豆腐の上からかけると豆腐が水っぽくなる)然る後シタジを、薬味をかぶれる豆腐の上にかけて進める。
……これで、まださわりの部分。三重吉の湯豆腐へのこだわりは、まだまだ続く。元々、ある友人から三重吉宅の湯豆腐の作り方を尋ねられての手紙の返事だったらしい。湯豆腐の話は巻紙で2間余りに及んだという。「私は東京流の料理は好かない。甘いのが厭だ。上方流のあっさりしたものが好きである」という三重吉ならではの、湯豆腐への執着心が強烈だ。
参考文献:嵐山光三郎『文人暴食』(新潮文庫)
宅での料理法。いずれにも絹ごしは不可。普通の豆腐でも昆布のダシで少しの間煮れば柔かくなる。普通鍋の中に昆布をしきっ放しにし、その中へ豆腐を入れるが、それでは昆布のダシが十分に出ないうちに豆腐を食うわけになり、味もなく柔かくもならず。ダシは別に作りおくを可とす。ダシの作り方は一升の水へ昆布を大一枚ぐらい(どっさり)入れ強烈な火でぐつぐつ三十分も煮て五合に煮つめ、どんぶりに取り、豆腐の鍋へ補充することになる。それ故、人数を計り一度に食うだけ数えて入れ、中身まで温かになりし頃、早く引上げて食う。煮えた豆腐が鍋の中に停滞しないこと肝要。シタジは普通、湯呑なぞを豆腐鍋のまん中に入れ、かつおぶしの粉と生醤油を入れてすましている人多し。宅では、シタジは水二合へかつおぶし粉を沢山入れ、強火で五勺に煮つめ、それへ生醤油一合半、みりん茶さじ半分を入れてさっと煮て下す。五秒位、このとき醤油を一分間も煮ると最早ダシとして失敗す。このダシを少しずつ、豆腐鍋の中の湯呑に入れ、温まったとき豆腐の上にレンゲでかける。鍋の湯呑の中のシタジへ豆腐をつけては皿にとる人あれど、それではダシには段々に湯が入りまずくなる。豆腐を皿にとり薬味を上にかけ、鍋の汁少々を豆腐の横から皿に入れ(豆腐の上からかけると豆腐が水っぽくなる)然る後シタジを、薬味をかぶれる豆腐の上にかけて進める。
……これで、まださわりの部分。三重吉の湯豆腐へのこだわりは、まだまだ続く。元々、ある友人から三重吉宅の湯豆腐の作り方を尋ねられての手紙の返事だったらしい。湯豆腐の話は巻紙で2間余りに及んだという。「私は東京流の料理は好かない。甘いのが厭だ。上方流のあっさりしたものが好きである」という三重吉ならではの、湯豆腐への執着心が強烈だ。
参考文献:嵐山光三郎『文人暴食』(新潮文庫)
納豆の官能検査法
おいしくて風味のある納豆を安定して作るには、記録を取ることが肝要だ。発酵後の品質検査では、外観(色・形)、香り、糸引き(粘り)、味などの評価を記録するとよい。訓練を重ねることによって、アミノ酸分析計よりも管理者の官能検査の方が信用できるようになる。
また継続することで異状が起きた際、すぐに原因を突き止められ、対策を講じられるようにもなる。官能評価は総合的な生産の評価であり、結果判定となる。官能検査法の一例として、農林水産省食品総合研究所・納豆試験法研究会が採用した1990年の方法を挙げよう。
納豆は冷蔵庫から出して、室温に1時間放置した後に官能検査を行う。色などの外観については、納豆の上面と下面を検査する。上面についてはポリエチレンフィルムを取って検査、下面はPSP(ポリスチレン・ペーパー)容器を外側から手で揉んで、PSP容器と納豆をはがすようにしておく。その後、容器を逆さまにして納豆を容器のふたの上に載せ、裏面の外観を検査する。粘りは、納豆を割りばしで20回かき回した後、割りばしで(50g入りの場合)納豆の2分の1または3分の1を摘まんで40センチメートルくらい持ち上げて観察する。次いで香りをかぎ、豆の硬さや味を検査する。
多数の納豆を続けて官能検査する時は、しょう油を10倍に薄めてうがいしながら行うとよい。結果は官能検査表に記載する。対照には日常食べている納豆を基準に置き、評価段階の「3」を普通とし、「5」を良い、「1」を悪いとする。備考欄には、評価した理由をできるだけ詳しくメモしておく。
判定基準としては、具体的な評価項目に(1)納豆菌の被り(2)溶菌状態(3)割れ、つぶれ、皮むけ(4)豆の色(5)香り(6)硬さ(7)味(8)糸引き(9)総合評価——が挙げられる。最後の総合評価とは、(1)〜(8)を全体的に考えての評価で、異物やチロシンの結晶などが見られた時は、総合評価の備考欄に記載するとしている。
参考文献:渡辺杉夫『食品加工シリーズ(5) 納豆 原料大豆の選び方から販売戦略まで』(農山漁村文化協会)
また継続することで異状が起きた際、すぐに原因を突き止められ、対策を講じられるようにもなる。官能評価は総合的な生産の評価であり、結果判定となる。官能検査法の一例として、農林水産省食品総合研究所・納豆試験法研究会が採用した1990年の方法を挙げよう。
納豆は冷蔵庫から出して、室温に1時間放置した後に官能検査を行う。色などの外観については、納豆の上面と下面を検査する。上面についてはポリエチレンフィルムを取って検査、下面はPSP(ポリスチレン・ペーパー)容器を外側から手で揉んで、PSP容器と納豆をはがすようにしておく。その後、容器を逆さまにして納豆を容器のふたの上に載せ、裏面の外観を検査する。粘りは、納豆を割りばしで20回かき回した後、割りばしで(50g入りの場合)納豆の2分の1または3分の1を摘まんで40センチメートルくらい持ち上げて観察する。次いで香りをかぎ、豆の硬さや味を検査する。
多数の納豆を続けて官能検査する時は、しょう油を10倍に薄めてうがいしながら行うとよい。結果は官能検査表に記載する。対照には日常食べている納豆を基準に置き、評価段階の「3」を普通とし、「5」を良い、「1」を悪いとする。備考欄には、評価した理由をできるだけ詳しくメモしておく。
判定基準としては、具体的な評価項目に(1)納豆菌の被り(2)溶菌状態(3)割れ、つぶれ、皮むけ(4)豆の色(5)香り(6)硬さ(7)味(8)糸引き(9)総合評価——が挙げられる。最後の総合評価とは、(1)〜(8)を全体的に考えての評価で、異物やチロシンの結晶などが見られた時は、総合評価の備考欄に記載するとしている。
参考文献:渡辺杉夫『食品加工シリーズ(5) 納豆 原料大豆の選び方から販売戦略まで』(農山漁村文化協会)
「丹波黒」の品種特性
かつての「丹波国」である京都と兵庫の丹波地域で作り続けられてきた黒大豆は、古くから「丹波黒大豆」と呼ばれ、現在「丹波黒」と「新丹波黒」が品種登録されている。極大粒で食べると甘く、独特のもちもち感がある。
「丹波黒」は、兵庫県農事試験場(現・兵庫県立中央農業技術センター)が兵庫・丹波地域で栽培されていた在来種を取り寄せ、当時の明石本場と但馬分場での比較試験を経て1941(昭和16)年に命名された品種名。一方、「新丹波黒」は、京都府立農業研究所(現・京都府農業総合研究所)が京都の丹波地域で栽培されていた在来種を収集し、純系淘汰を行った系統に対して1981(昭和56)年に命名した品種名。「新丹波黒」も「丹波黒」と同じく、丹波地域で古くから作られてきた「丹波黒系」の中から選抜された優れた系統である。
そのほか、産地によって「波部黒」「河北ダイズ」といった在来種、販売名として「和知黒」「作州黒」などと呼ばれるものも存在するが、いずれも「丹波黒」「新丹波黒」と系統や品種特性に大差はない。農林水産省『国産ダイズ品種の事典』(平成12年)から「丹波黒」の品種特性をピックアップし、タマホマレと比較したのが下表である。「新丹波黒」の特性は「丹波黒」とほぼ同様。

参考文献:松山善之助、山下道弘、矢ケ崎和弘、佐藤久泰『黒ダイズ ― 機能性と品種選びから加工販売まで ― 』(農山漁村文化協会)
「丹波黒」は、兵庫県農事試験場(現・兵庫県立中央農業技術センター)が兵庫・丹波地域で栽培されていた在来種を取り寄せ、当時の明石本場と但馬分場での比較試験を経て1941(昭和16)年に命名された品種名。一方、「新丹波黒」は、京都府立農業研究所(現・京都府農業総合研究所)が京都の丹波地域で栽培されていた在来種を収集し、純系淘汰を行った系統に対して1981(昭和56)年に命名した品種名。「新丹波黒」も「丹波黒」と同じく、丹波地域で古くから作られてきた「丹波黒系」の中から選抜された優れた系統である。
そのほか、産地によって「波部黒」「河北ダイズ」といった在来種、販売名として「和知黒」「作州黒」などと呼ばれるものも存在するが、いずれも「丹波黒」「新丹波黒」と系統や品種特性に大差はない。農林水産省『国産ダイズ品種の事典』(平成12年)から「丹波黒」の品種特性をピックアップし、タマホマレと比較したのが下表である。「新丹波黒」の特性は「丹波黒」とほぼ同様。

参考文献:松山善之助、山下道弘、矢ケ崎和弘、佐藤久泰『黒ダイズ ― 機能性と品種選びから加工販売まで ― 』(農山漁村文化協会)