柿粉末入り黒色こんにゃく
こんにゃくには主に白と黒の2色があり、こんにゃく芋の精粉を原料に使用すると白く、生芋を使用した場合は芋の皮が混じってしまうため、黒っぽくなる。昨今は精粉を使ったこんにゃく製品が大半だが、生芋から作る伝統的な製法が根強い地方では白いこんにゃくがあまり好まれず、生芋こんにゃくに似せようとアラメやヒジキなど海藻の粉末で色を付ける場合が多かった。こういったこんにゃくの着色用途で混入する海藻類、キノコ類、野菜類などは、一般的に高価で、コスト高になる。
そこで代替原料に柿の粉末を利用する発明が、公開特許として出願されている。「柿粉末入り黒色こんにゃく製造方法及び柿粉末入り黒色こんにゃく」(特開2009-39039)である。発明者はカネマタ食品工業(岐阜県揖斐郡)の中村博さん。柿粉末は、乾燥させた青柿や急速冷凍させた青柿を粉砕することなどによって得られる。特産品の“富有柿”や“堂上蜂屋柿”で知られているように、岐阜は柿の栽培が盛んな地域である。その地元で摘果され、廃棄する他に用途がない青柿を柿粉末が原料のため、安価で大量に得られる利点がある。
この柿粉末入りこんにゃくの製造方法は、こんにゃく製粉と柿粉末を混入させた混合糊を作り、その混合糊に凝固液を混合した後に混合糊を加熱し、柿粉末によってこんにゃくを黒色化する。こんにゃく糊に柿粉末を溶解させた凝固液を混合撹拌して混合糊にし、その混合糊を加熱して柿粉末によって黒色化することもできる。また、こんにゃく製粉をこんにゃく芋すり下ろし糊に代えることも可能だ。こんにゃくが黒色に変色するのは、加熱によって柿粉末に含まれるタンニンの酸化が促進されたり、こんにゃく糊に含まれる鉄分とタンニンとが結合してタンニン鉄となったりして、黒色化が促進されるためと考えられる。
柿粉末に含まれるタンニンは加熱しても失われないので、タンニン由来の各種効果も期待できる。例えば、腸からの糖質・脂質の吸収を抑制(肥満防止やメタボリック症候群予防)、血圧降下・高血圧予防、口臭・体臭の抑制、虫歯の予防、胃腸からのアルコール吸収の抑制、アセトアルデヒドを速やかな排出(二日酔いの防止)などが挙げられる。
そこで代替原料に柿の粉末を利用する発明が、公開特許として出願されている。「柿粉末入り黒色こんにゃく製造方法及び柿粉末入り黒色こんにゃく」(特開2009-39039)である。発明者はカネマタ食品工業(岐阜県揖斐郡)の中村博さん。柿粉末は、乾燥させた青柿や急速冷凍させた青柿を粉砕することなどによって得られる。特産品の“富有柿”や“堂上蜂屋柿”で知られているように、岐阜は柿の栽培が盛んな地域である。その地元で摘果され、廃棄する他に用途がない青柿を柿粉末が原料のため、安価で大量に得られる利点がある。
この柿粉末入りこんにゃくの製造方法は、こんにゃく製粉と柿粉末を混入させた混合糊を作り、その混合糊に凝固液を混合した後に混合糊を加熱し、柿粉末によってこんにゃくを黒色化する。こんにゃく糊に柿粉末を溶解させた凝固液を混合撹拌して混合糊にし、その混合糊を加熱して柿粉末によって黒色化することもできる。また、こんにゃく製粉をこんにゃく芋すり下ろし糊に代えることも可能だ。こんにゃくが黒色に変色するのは、加熱によって柿粉末に含まれるタンニンの酸化が促進されたり、こんにゃく糊に含まれる鉄分とタンニンとが結合してタンニン鉄となったりして、黒色化が促進されるためと考えられる。
柿粉末に含まれるタンニンは加熱しても失われないので、タンニン由来の各種効果も期待できる。例えば、腸からの糖質・脂質の吸収を抑制(肥満防止やメタボリック症候群予防)、血圧降下・高血圧予防、口臭・体臭の抑制、虫歯の予防、胃腸からのアルコール吸収の抑制、アセトアルデヒドを速やかな排出(二日酔いの防止)などが挙げられる。
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嫁入り道具に豆腐一本
意見をしても少しの手応えもなく、効き目のないことを俗に「豆腐に鎹(かすがい)」という。柄が悪くなると、「豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ」という表現もある。これらは、豆腐がいかに柔らかい食品であるかという証左である。
豆腐の柔らかさの秘密の一端は、その水分にあろう。「五訂増補日本食品標準成分表」を見ると、例えば木綿豆腐で100グラム当たり86.8グラム、絹ごし豆腐で同89.4グラムの水分を含んでいる(2007年2月「成分から見た豆腐の種類」も参照)。豆腐を冷凍乾燥することで水分を取り除くと、堅い凍り豆腐(高野豆腐)になるわけだが、豆腐の起源があるとされる中国にも、堅い豆腐は存在する。上海自由市場を訪れた嵐山光三郎はこう記す。
上海自由市場で見た豆腐は、直径一メートルはあろうかと思うタイヤのような豆腐だった。木綿ごしどころか、押すと指のあとがつく粘土の固さで、腐乾(フウガン)という豆腐の燻製もあった。この固さなら、豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまうことも出来そうだ。これは豆腐を醤油に漬けて味を染みこませ、角切りにして燻し乾したものだ。胡麻油を塗ってまた燻し、これを繰り返す。薫豆腐というのもあり、これは豆腐をよく乾かし、塩漬けにして、また乾しあげ、胡麻油を塗って燻製にしたものだ。豆腐の削り節ともいうべきもので、『続豆腐百珍』二十八に「ろくじょう」としてあるのがこれにあたる。但し、日本の場合は胡麻油を塗っていない。
五訂増補日本食品標準成分表で凍り豆腐の水分は100グラム当たり8.1グラムとあるが、薫豆腐はさらに水分量が少ないのではなかろうか。ここからアイデア無尽蔵の素人庖丁、嵐山の妄想が突っ走る。
この薫豆腐は、擂って粉にし、白飯の上に振りかけてもいいし、野菜の上に振りかけてもうまい。キャンプに持って行って削れば野菜とのあえものも忽ち出来る。こいつを擂粉木にしたらいかがであろうか。山椒の木の擂粉木を使うと、仄かに山椒の風味がうつるが、豆腐の擂粉木ならば豆腐の風味が残る。カチンカチンに乾したとはいえ、元は豆腐なのだから擂れば豆腐の粉の山となる。一家に一本豆腐の擂粉木があれば、蛋白質は十分だ。賽の目に刻んで炒め物にしてよし、防犯上のバットにもなる。これで殴られてのびちまえば、強盗は、豆腐の角に頭をぶつけて死ぬことになる。娘の嫁入り道具に是非一本持たせてやりたい。
参考文献:嵐山光三郎『素人庖丁記』(ランダムハウス講談社)
豆腐の柔らかさの秘密の一端は、その水分にあろう。「五訂増補日本食品標準成分表」を見ると、例えば木綿豆腐で100グラム当たり86.8グラム、絹ごし豆腐で同89.4グラムの水分を含んでいる(2007年2月「成分から見た豆腐の種類」も参照)。豆腐を冷凍乾燥することで水分を取り除くと、堅い凍り豆腐(高野豆腐)になるわけだが、豆腐の起源があるとされる中国にも、堅い豆腐は存在する。上海自由市場を訪れた嵐山光三郎はこう記す。
上海自由市場で見た豆腐は、直径一メートルはあろうかと思うタイヤのような豆腐だった。木綿ごしどころか、押すと指のあとがつく粘土の固さで、腐乾(フウガン)という豆腐の燻製もあった。この固さなら、豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまうことも出来そうだ。これは豆腐を醤油に漬けて味を染みこませ、角切りにして燻し乾したものだ。胡麻油を塗ってまた燻し、これを繰り返す。薫豆腐というのもあり、これは豆腐をよく乾かし、塩漬けにして、また乾しあげ、胡麻油を塗って燻製にしたものだ。豆腐の削り節ともいうべきもので、『続豆腐百珍』二十八に「ろくじょう」としてあるのがこれにあたる。但し、日本の場合は胡麻油を塗っていない。
五訂増補日本食品標準成分表で凍り豆腐の水分は100グラム当たり8.1グラムとあるが、薫豆腐はさらに水分量が少ないのではなかろうか。ここからアイデア無尽蔵の素人庖丁、嵐山の妄想が突っ走る。
この薫豆腐は、擂って粉にし、白飯の上に振りかけてもいいし、野菜の上に振りかけてもうまい。キャンプに持って行って削れば野菜とのあえものも忽ち出来る。こいつを擂粉木にしたらいかがであろうか。山椒の木の擂粉木を使うと、仄かに山椒の風味がうつるが、豆腐の擂粉木ならば豆腐の風味が残る。カチンカチンに乾したとはいえ、元は豆腐なのだから擂れば豆腐の粉の山となる。一家に一本豆腐の擂粉木があれば、蛋白質は十分だ。賽の目に刻んで炒め物にしてよし、防犯上のバットにもなる。これで殴られてのびちまえば、強盗は、豆腐の角に頭をぶつけて死ぬことになる。娘の嫁入り道具に是非一本持たせてやりたい。
参考文献:嵐山光三郎『素人庖丁記』(ランダムハウス講談社)
志ん生の納豆売り
五代目・古今亭志ん生(1890-1973年)は、本名・美濃部孝蔵。東京・神田の生まれで徳川直参旗本の出だったが、放蕩無頼の生活の果てに落語家となる。朝太・円菊・馬太郎・武夫・馬きん・志ん馬・馬生……など、18回以上にわたる改名を繰り返したことから分かるとおり、売れない時代は長かったが、満州慰問から生還した後は、人気・評価ともに高まった。落語協会会長を務め、紫綬褒章、勲四等瑞宝章を受章している。
その志ん生が前座同然の扱いを受けて、困窮極まる貧乏長屋時代に、「少うし朝が早いけどね」との留保付きながら勧める人があり、手を染めたのが“納豆売り”だった。
とにかく働こう、働かんことにはアゴが干あがっちまう。自分ひとりなら、あわてはしないけれども、一家五人ですから、心中おだやかじゃなかったんです。そこで納豆売りをやろうてんで、納豆を仕入れてきたんですよ。ところが、高座の上なら大きな声で言えるけれども、表へ出てはどうしても、その呼び声が出ない、いい調子にどなれないんですよ。仕入れた納豆をちっとも売らないでは丸損だけれども、どうもそれを売って歩く気になれない。
「恥ずかしいてえのか、馴れないてえのか、人家の前で大きな声なんぞ出せるもんじゃァありませんよ。そのかわり、人ッ子一人通らないところへ来ると、『なっとォ』なんて、天までとどくような声も出る」という次第で、納豆売りの次には醤油屋の御用聞きを始めるのだが、家に醤油がないため商品に手を付けて、醤油屋も踏みつぶしてしまう。
さて、1合も売れなかった醤油同様に、「納豆だって一本も売れやしない」のだった。「一本」とあるからには、藁づと納豆なのだろうか。売るつもりで仕入れた納豆だから、随分の量がある。
(納豆を)みんな食っちまうのももったいないと思ったから、金馬(三遊亭金馬)の所へ売りに行ったんです。するとその納豆を甘納豆とまちがえやがって、楽屋へもっていってみんなで食べようと思ったわけだ。中から甘納豆と思いのほか本物の納豆が出てきたから大さわぎになってしまった。まったくその頃のことを思いますと、実にさんざんなもんでしたナ。
参考文献:古今亭志ん生『なめくじ艦隊』(ちくま文庫)
、古今亭志ん生『びんぼう自慢』(ちくま文庫)
その志ん生が前座同然の扱いを受けて、困窮極まる貧乏長屋時代に、「少うし朝が早いけどね」との留保付きながら勧める人があり、手を染めたのが“納豆売り”だった。
とにかく働こう、働かんことにはアゴが干あがっちまう。自分ひとりなら、あわてはしないけれども、一家五人ですから、心中おだやかじゃなかったんです。そこで納豆売りをやろうてんで、納豆を仕入れてきたんですよ。ところが、高座の上なら大きな声で言えるけれども、表へ出てはどうしても、その呼び声が出ない、いい調子にどなれないんですよ。仕入れた納豆をちっとも売らないでは丸損だけれども、どうもそれを売って歩く気になれない。
「恥ずかしいてえのか、馴れないてえのか、人家の前で大きな声なんぞ出せるもんじゃァありませんよ。そのかわり、人ッ子一人通らないところへ来ると、『なっとォ』なんて、天までとどくような声も出る」という次第で、納豆売りの次には醤油屋の御用聞きを始めるのだが、家に醤油がないため商品に手を付けて、醤油屋も踏みつぶしてしまう。
さて、1合も売れなかった醤油同様に、「納豆だって一本も売れやしない」のだった。「一本」とあるからには、藁づと納豆なのだろうか。売るつもりで仕入れた納豆だから、随分の量がある。
(納豆を)みんな食っちまうのももったいないと思ったから、金馬(三遊亭金馬)の所へ売りに行ったんです。するとその納豆を甘納豆とまちがえやがって、楽屋へもっていってみんなで食べようと思ったわけだ。中から甘納豆と思いのほか本物の納豆が出てきたから大さわぎになってしまった。まったくその頃のことを思いますと、実にさんざんなもんでしたナ。
参考文献:古今亭志ん生『なめくじ艦隊』(ちくま文庫)
国産大豆の検査規格
国産大豆の入札取引においては、売り手からの情報に基づいて作成された入札ロット明細書に示された銘柄(2008年1月「産地品種銘柄について」参照)や等級などの文字情報を手掛かりにして、買い手が入札するシステムが用いられている。
これらの文字情報は“検査規格”と称され、「農産物検査法」に基づいて定められる。農林水産省の告示した「農産物検査法に基づく農産物規格規定」による検査規格を見ると、まず大豆の種類(1)が挙げられ、普通大豆、特定加工用大豆、種子大豆に分けられている。粒別はいずれも大粒、中粒、小粒および極小粒に分類される。特定加工用大豆とは、豆腐・油揚げ、醤油、きな粉など製品の段階において、大豆の原形をとどめない用途に使用される大豆をいう。次に銘柄(2)が挙げられ、粒別、産地別にI、II、IIIの銘柄区分が設けられている。
検査規格における品位(3)については、表に示した。最低限度(プラスの要素)、あるいは最高限度(マイナスの要素)として示されている数値は、平均値ではなく、ある事項がその限度をクリアしていない場合、その等級には該当せず、それより下位の等級に格付けされる。またパーセントで示される数値は、小数点1位を四捨五入した値であり、例えば最高限度が0の場合、0.4%まで許容されるという意味である。普通大豆の色の区分は、黄色、黒色、茶色、青色とし、各色の大豆にはその色以外の色の粒が1等級においては0%、2等級においては5%、3等級においては10%を超えて混入してはならないとしている。
これらの文字情報は“検査規格”と称され、「農産物検査法」に基づいて定められる。農林水産省の告示した「農産物検査法に基づく農産物規格規定」による検査規格を見ると、まず大豆の種類(1)が挙げられ、普通大豆、特定加工用大豆、種子大豆に分けられている。粒別はいずれも大粒、中粒、小粒および極小粒に分類される。特定加工用大豆とは、豆腐・油揚げ、醤油、きな粉など製品の段階において、大豆の原形をとどめない用途に使用される大豆をいう。次に銘柄(2)が挙げられ、粒別、産地別にI、II、IIIの銘柄区分が設けられている。
検査規格における品位(3)については、表に示した。最低限度(プラスの要素)、あるいは最高限度(マイナスの要素)として示されている数値は、平均値ではなく、ある事項がその限度をクリアしていない場合、その等級には該当せず、それより下位の等級に格付けされる。またパーセントで示される数値は、小数点1位を四捨五入した値であり、例えば最高限度が0の場合、0.4%まで許容されるという意味である。普通大豆の色の区分は、黄色、黒色、茶色、青色とし、各色の大豆にはその色以外の色の粒が1等級においては0%、2等級においては5%、3等級においては10%を超えて混入してはならないとしている。
