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鹿沼こんにゃくフライ

2012年のB級ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」は10月20、21の両日、北九州市で開催。この「B-1グランプリ in 北九州」で第7回を数えることになるが、豆腐・納豆などの関連食材をざっと拾ってみても、「いなり寿司で豊川市をもりあげ隊」(愛知・豊川市)、「姫路おでん普及委員会」(兵庫・姫路市)、「『大曲の納豆汁』旨めもの研究会」(秋田・大仙市、2012年10月「大曲納豆汁」参照)、「鳥取とうふちくわ総研」(鳥取市)、「笠間のいなり寿司いな吉会」(茨城・笠間市)、「伏見稲荷寿司ひろめ隊」(京都市)――などが目に留まる。

さらに、この地域活性化を目指す町おこしイベントに名は見えなくとも、全国各地で様々なB級グルメが地元の人らに愛され、根付いている。

例えば、栃木県のB級グルメ。あまりに存在が大き過ぎる「宇都宮餃子」は別格としても、他に「じゃがいも入り焼きそば」(栃木市)や「いもフライ」(佐野市)などがある。餃子自体もそうなのだが、戦後の物資に乏しい時代、大陸から内地へ戻った帰還兵らが栄養価の高いレシピを改良・工夫して生み出した物語に裏打ちされるなど、地域を勇気づけた庶民の味と言えよう。さて、栃木には「鹿沼こんにゃく」という地域ブランドがある。地場産の原料と伝統製法から成る特産品だが、この栄えある「鹿沼こんにゃく」がB級グルメ(当初は裏メニュー)の食材として提供されている。

こんにゃく田楽の販売時に余ったこんにゃくをそのまま田楽味噌で煮てしまい、甘辛く煮付けたこんにゃくにさらにパン粉を付けて揚げれば出来上がり。鹿沼こんにゃく同様に、味噌も「かぬまブランド認定品」のはとむぎで作られている。類似のこんにゃくフライは他地域でも散見されるようだが、B級グルメとはいえ、「鹿沼こんにゃく」というブランドの持つ強みが光る逸品だ。ソースも何も付けずにそのまま食べても、鹿沼こんにゃくの絶妙な噛み心地と、噛み締めるたびに口中にあふれる甘辛い味噌の味に病みつきになるリピーターが続出したとか。

昨秋、かぬまブランド推進協議会、鹿沼蒟蒻商組合が中心となり、この鹿沼こんにゃくフライを名物にしようと、「まちの駅“新・鹿沼宿”」の軽喫茶コーナー「仲まち家」において土・日の限定販売が開始された。現在も好評販売中(1本100円)で、鹿沼市を訪れる人々の舌を楽しませている。
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ジャンル : 学問・文化・芸術

大曲納豆汁

地域活性化を目的とする町おこしイベント「B-1グランプリ」――2012年は10月20、21の両日、「第7回 B級ご当地グルメの祭典! B-1グランプリ in 北九州」として開催される。今回は秋田・大仙市の「大曲の納豆汁 旨めもの研究会」も出展。秋田を中心に東北地方で昔から愛されてきた家庭料理・行事食「大曲納豆汁」をもり立て、郷土・大仙のPRに全力を挙げる。

ただ「B-1グランプリ」へ参戦するから、というだけではない。「大曲納豆汁」はバージョン・アップを図ってきた。それも無駄な物を取り去るという洗練された形で。従来だと、見た目のインパクトを与え、なおかつ食べ応えがある物にしようと、納豆汁に温泉卵とお焦げを加えた「大曲の納豆汁」としての発信だった。地域対抗の鍋コンテストで優勝し、県内外のイベントにも招待されるなど、広く認知されてはきた。だが、「愛Bリーグ」正会員になると同時に「B-1グランプリ」参戦を前にした時、今一度「大曲を知ってもらう・覚えてもらう」という原点に立ち返る機運が盛り上がった。

温泉卵やお焦げのトッピングは、いわばよそ行きのスタイル。そうではなくて、古くから地元・大曲で家庭の味として親しまれてきた自然体の納豆汁、肩肘張らない地域本来の納豆汁で打って出ようという次第だ。それに伴って、名称もよりシンプルに「大曲の納豆汁」から「大曲納豆汁」へ変えた。地域で育まれてきた食のスタイルに正直になろうと、「旨めもの研究会」は「大曲納豆汁」を精緻に定義し直した。具材は
1. 味噌仕立て
2. 納豆は秋田県産納豆、あるいは自家製納豆を使用
3. その他の具材は基本的に地場産(秋田県産品)を主体
とされている。

また、調理方法のポイントには、納豆を投入後はできるだけ沸騰させず、焦がさない状態でお客に提供できるよう、工夫・努力することが挙げられている。食を提供する側の一方的な論理ではなく、食を囲んでの時空間を共有する人々へのこまやかな心遣いが感じ取られよう。全国津々浦々から集結する地域B級グルメが並み居るグランプリだけに、秋田の納豆料理が自然体でどこまで健闘できるか非常に注目される。大掛かりなイベントになると本来の意図が見えづらくなるけれど、「B-1グランプリ」の地域活性化、町づくりとは要するに、その地域に生きる人間たちをつなぐことなのだ。

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「陶然亭」の湯豆腐(2)

前回からの話の続き。中国文学史の泰斗、青木正児(1887〜1964年)の小説と読み紛う名エッセー「陶然亭」から、湯豆腐について。酒道楽・食い道楽ならば、ぜひとも足を運びたくなる桃源郷のような店のたたずまいから、お品書きから懇切丁寧に縷々と語ってくれるのである。鴨居に懸かった扁額に「淮南遺法」と大書されているように、自信満々で「ここの料理の呼び物が湯豆腐 ・ ちり鍋にあることを標榜」している店なのだ。はて興味津々に、「特色があり」「亭主の創製にかかる自慢物の一つ」といわれる「陶然亭」の湯豆腐の詳細に迫っていこうか。

「湯豆腐はまず豆腐の品質が吟味されていたことは勿論であるが、豆腐を煮る出汁とこれを浸して食べる漬け汁とに新機軸を出していた。煮出汁は昆布出汁に葛を少々溶かしたのを用いるのが普通であるが、陶然亭のは更に野菜ソップを加えてあった。しかもこのソップたるや廃物利用で出来たもので、主として酢物や鍋物に使う蔬菜のゆで汁に蔬菜の皮や切れ端を入れて煮出したものであるというから、ますますその着想の妙が嘆称される」

この野菜ソップ(=スープ)は、まるで現代の(一部)ラーメン・マニアを狂気乱舞させる魅惑の混濁スープのようにも読める。個々の材料の原形をとどめないまでに煮込んだ、しかもその選択は融通無碍というか、天衣無縫というか。淡白な豆腐の味を生かすために、ともすれば湯豆腐のだしが透明系に偏りがちな逆を突いているようだ。が、「陶然亭」亭主の着想は、やはり漬け汁のセレクトで最も称賛されるべきではないか。常道を離れるようで、精進の道は外していない。

「亭主の考では湯豆腐は精進料理だから、いっそこれも鰹節を使わない方が好かろうと思うので、その代りに『六条豆腐』を用い、少しばかり『味の素』を補っているということであった。六条豆腐は、あるいは鹿茸豆腐とも書いて、『雍州府志』などにも見えている古法で、昔は精進料理の鰹節どころに用いたのであって、豆腐の薄くへいだのに塩を十分振って夏の天日に乾し固めたものである。この店ではこのほかに野菜の生酢や浸物にも花鰹代りにこれを使っていたが、知る人は稀で皆首をひねった」

六条豆腐については、2012年3月「六条豆腐」を参照。

参考文献:青木正児『華国風味』(岩波文庫)

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里のほほえみ

(独)農業・食品産業技術総合研究機構では、実需者などにすぐ活用してもらえる品種・技術のうち、特に勧めるものを選出した上で、研究成果パンフレットにまとめている。最新版(2012)の品種編では、大豆6種(里のほほえみ、はつさやか、あきまろ、すずほのか、すずかれん、フクミノリ)が掲載されているが、ここでは里のほほえみを取り上げる。


里のほほえみの子実のたんぱく質含量は、エンレイ並みに高く(45%前後)、豆乳の抽出率や豆腐の硬さなどから、豆腐加工に適している。エンレイより1週間ほど晩熟だが、ダイズモザイク病や紫斑病に対してもエンレイより強く、粒大はかなり大粒(百粒重40グラム前後)で、外観品質が良好。

生育中は倒れにくく、最下着莢節位が高く、莢が割れにくいことから、コンバイン収穫などの機械化適性にも優れていることが特徴である。栽培適地は東北南部など。現在は山形県、福井県、栃木県で生産されている。

特に福井では、大豆生産者、豆腐業者、農業試験場などが連携し、奨励品種大豆「里のほほえみ」を使用してのブランド商品開発を進める「福井ブランド豆腐技術解決チーム」が会合の回数を重ねるなど、活発な取り組みが続けられている。

里のほほえみの元は「東北160号」。平成8年、東北農業試験場(現・東北農業研究センター)において、ダイズモザイクウイルス抵抗性の「東北129号」を母、極大粒系統の「刈交0264MYF6」を父とした人工交配から育成された系統である。

なお、他の5種の主な用途は、はつさやかが豆腐、あきまろが味噌、すずほのか、すずかれんが納豆、フクミノリが豆腐とされている。

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たまに「考える人」、歴史探偵。
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