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『ナジャ』再読―描写について―

いうまでもないことだが、私は彼(=ユイスマンス)を、小説の経験主義者たちすべてからどれだけ区別していることだろう。彼らは自分とちがう人物を登場させるつもりで、それぞれ自己流に、そういう人物を肉体的にも精神的にも生き生きと描きだすわけだが、なんの必要があってそんなことをするのか、知らないでいたほうがましである。彼らは自分ではあらまし見通しているつもりの実在の人物ひとりから、物語中の人物ふたりをでっちあげたり、実在の人物ふたりから、やはり遠慮なく物語中の人物ひとりをでっちあげたりする。(中略)私はどこまでも実名を要求する。どこまでも、扉のように開いたままの、鍵をさがさないですむ書物にしか興味をもたない。大いにさいわいなことに、いかにも小説らしい筋だてをそなえた心理的文学は、いまや余命いくばくもない。
       ☆
学生時代に読み耽ったアンドレ・ブルトンの『ナジャ』を再読する。
知らないうちに、どれだけ、自分の言動がその影響下に置かれていたことか? 
例えば、上記の引用文に連なる『シュルレアリスム宣言』における小説批判
現実主義的態度(~実証主義)、純然たる報告文体……端的に
描写ひとつひとつの、その場限りのいたずらに個別的な性格」に対して、
果たしてぼくは、峻拒し続けてきてこられただろうか? 
知的および道徳的な飛翔」を試みる者の側に立ってこれただろうか? 

参考文献:アンドレ・ブルトン『ナジャ』(岩波文庫)
       アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』(岩波文庫)
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

tag : 小説

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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