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わが父、ジャコメッティ

3月19日(土)、大阪・中之島の「国立国際美術館」に赴く。
ダイキン工業現代美術振興財団創立20周年記念公演となる
劇団「悪魔のしるし」の演劇『わが父、ジャコメッティ』を観るのだ。
2014年が初演で、今回が再演。全3回公演の初回、13時からのマチネーを観た。

地下講堂に潜り込むと、通常は芝居の演じられる空間でもないのが一目瞭然。
キャンバスやベッド、プロジェクターやら雑多なオブジェが放り出された格好。
劇は既に始まっているのか、どこから始まったのか、きっかけがわからない。
舞台と観客席の境界線が、定まっているのか、はっきりしないのと同じように。
舞台の下手で、木口敬三大谷ひかると妻(?)に向かってパリの思い出話。

木口敬三はれっきとした画家である。作・演出を手掛ける危口統之は、実の息子。
木口は役柄として、自身をアルベルト・ジャコメッティを同一視しているという設定。
そうして、ぼけ始めた木口を介護する役どころが、大谷に振られている。
木口(=ジャコメッティ)は息子を、日本人哲学者の矢内原伊作と誤認もする。

矢内原はジャコメッティと親しく交わり、ジャコメッティは彼の肖像画や彫刻を制作。
さらにジャコメッティの妻、アネットとも深い間柄になったといわれる矢内原だが……
芝居の流れで、大谷はアネットとしても振る舞う。矢内原の『ジャコメッティ』
『完本 ジャコメッティ手帖』から、気ままにテクストが引用される。

こうした道具立てにもかかわらず、難解で、高尚な前衛劇となる訳でもなく、
ふわふわと頼りなげな(役者としての)木口統之のモノローグとともに、宙に浮き。
大谷の大望(?)もやんわりとはぐらかされ、地下講堂は緩い笑いに包まれる。
木口敬三は本当にぼけてしまってないか? 余計な心配までしたくなる。

点鼻薬と木工用ボンドを取り違えたというギャグも、子守唄のように耳に馴染んだ。
ふと、舞台上の柱時計の指し示す時刻が、現実の時刻と一致していると気付く。
舞台上の時間も、リアルな時間も、何も変わりはしないのだ。
1時間ちょっとで、お芝居は終わった。一応。幕は下りたりなどしていない。
幕なんて元々無かった。講堂の出口で木口敬三さんに見送られ、少し面映かった。
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テーマ : 演劇
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 演劇

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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