モリムラ

「森村泰昌:自画像の美術史
―『私』と『わたし』が出会うとき―」を鑑賞しました。
森村先生はかつて大阪・玉造にスタジオを構えていた
というような噂を聞いたこともあって、
勝手な親近感を覚えつつ、その頃からだけでも、
ン十年、セルフ・ポートレイト写真を発表しています。
国際的に評価されるようになったのは、
絵画の登場人物に扮した美術史シリーズでしょうか。
さらに自画像を中心に据え始めて以降、
西欧の近代絵画とは何か? 画家とは何者か?
そもそも、“私”とは何者か?と追究を深めていきます。
絵画とも、写真とも言い切れないような緩衝地帯で。
哲学的な設問を投げかけているようで、根っこの部分ではポップ。
その著作同様に、はっきり言って、べたで、わかりやすいです。
現代美術がどうのこうのと小難しいことを論じる以前に、
森村泰昌の作品を前にした人々は、皆、幸せそうに笑うはず。
美術ヲタクをこじらせた挙げ句、コスプレごっこをやっているように見えるんですもの。
それで何が悪い?と、森村の創作姿勢には微塵の揺るぎも無いようです。
(初っ端から「写真撮影OK!!」の立て札に、気分を高揚させてもらいましたし)
13枚のカラー写真から成る「画家が見つめようとしたもの:ベラスケス」は圧巻。
パート2となる映像作品(60分超)「―『私』と『わたし』が出会うとき―」でも、
森村自身を加えた芸術家たち13人の一人にベラスケスも取り上げられていましたが、
(マルセル・デュシャンは不在という形式での出演?!)
個々の芸術家に、自画像という外枠から入り込みつつも、
本人になり切って、内声で語り分けていくというスタイルが、
否も応もなく、近代文学的であることだなあ、と感嘆していました。
(……デュシャンの在り方は例外として)
最終上映が始まってから飛び込んだので、レオナルド・ダ・ヴィンチなど、
数名のパートを見逃してしまいましたが、単行本で後日、補完しておきます。



参考文献:森村泰昌『踏みはずす美術史』(講談社現代新書)
森村泰昌『美術の解剖学講義』(ちくま学芸文庫)
森村泰昌『時を駆ける美術』(光文社知恵の森文庫)
森村泰昌『超・美術鑑賞術/お金をめぐる芸術の話』(ちくま学芸文庫)
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術