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★ 2017年2月に読んだ本 ★

沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉社)
庄野潤三『逸見小学校』(新潮社)
マックス・エルンスト『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』(河出文庫)
明珍昇『小野十三郎論』(土曜美術社出版販売)
川上未映子『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』(青土社)
『古寺巡礼 京都 19 萬福寺』(淡交社)……萬福寺を訪れてのお土産代わり。
山田兼士『小野十三郎論』(砂子屋書房)……副題に「詩と詩論の対話」。
 良い詩を読むようにスリリングで、とても面白かったです。
富岡多惠子『釋迢空ノート』(岩波書店)……図書館で借りて、再読。
 自分で購入して、手元に置きたい。今なら、岩波現代文庫に入っているし。
 或る意味、上質なミステリーとして読めます。釋迢空はどこから現れたのか? 
『別冊宝島2543 プロレス 仮面の告白』(宝島社)
J・D・サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)……村上春樹・訳。
 マイ・クラシック。2月の「二人の読書会」のテクストだったのだけれど。
『おとなの工作』(アントレックス)
『角川 短歌 1月号 2017』(角川文化振興財団)
『恋しくて TEN SELECTED LOVE STORIES』(中公文庫)
 ……村上春樹の翻訳本を読み返している流れの中で、手に取りました。
 以下の短編を収録。ローレン・グロフを一押し、次いでジム・シェパード。
 マイリー・メロイ「愛し合う二人に代わって」
 デヴィッド・クレーンズ「テレサ」
 トバイアス・ウルフ「二人の少年と、一人の少女」
 ペーター・シュタム「甘い夢を」
 ローレン・グロフ「L・デバードとアリエット――愛の物語」
 リュドミラ・ペトルシェフスカヤ「薄暗い運命」
 アリス・マンロー「ジャック・ランダ・ホテル」
 ジム・シェパード「恋と水素」
 リチャード・フォード「モントリオールの恋人」
 村上春樹「恋するザムザ」
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

モナコ公妃展

2月28日(火)、「阪急うめだ本店」9階へ上がりました。
阪急うめだギャラリー」で開催中の「グレース・ケリー展」が目的でしたが、
女性客ばかりで、黒一点となってしまい、随分と神経を使うことになりました。
日頃から、いろいろな局面で、アウェイな場所へ赴くことは割と多いのですが、
周囲を見回して完全に女性ばかりという状況は、本当に久方ぶりのこと。
何十年前だか……『ランゲルハンス島の午後』の出版時(1886年)、
京都のギャラリーで開催された安西水丸のサイン会以来の黒一点かも。
日本・モナコ10周年記念での展覧会だったようですが、モナコ公妃を飾った
ファッション・アイテムの展示がメインなので、正直、う~むという感じ。
グレース・ケリー自身の手掛けた押し花は、愛らしかったですけれども。
ぼく個人が興味を持てるのは、あくまで、女優のグレース・ケリーとして。
モナコ后妃としての生涯にはさほど関心が無いのだなあ、と思います。
帰りのグッズ売り場で、ヒッチコック監督の映像ソフトも無いのを見て、
悪態をつきたくなりましたよ。レディーたちの前では無理ですけれども。

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : つぶやき映画

折々の豆腐(1)

良くも悪くも、短歌の時代なのかなと思います。
時代が“抒情”に流されてしまうのではないかという予兆に
アンビヴァレントな感情、忸怩たる思いを抱き、
詩において「歌と逆に」ではもはや間に合わず、
歌の渦中で「歌と逆に」が試みられるべきではないか?
と、同人小説家の歪んだ夢想が繰り広げられてしまう今日この頃。
――『角川 短歌 1月号 2017』(角川文化振興財団)を読んでいて、
目についた豆腐を詠ったものを拾い上げてみます(敬称略)。
※第477回「角川歌壇」の特選作にもあったのですが、そちらは今回見送り。
       ☆
高野公彦(コスモス)
湯どうふに刻みショウガをのせて食めば冬の寒さを越えむ力湧く
       ☆
東直子(かばん)
崩れつつつぶやいていたお豆腐が星のかけらのようにまだいる
       ☆
高野は俳句ならば季重なりでしょうが、何であろうが、闇雲に明快な歌。
“わかりやすさ”に傾きたい気持ちは、よくわかります(生姜は旨いもの)。
東もまた鍋の描写でしょうか? 「つ」の連なりが文字面と相まって、
豆腐の肩を揺らしながらの朴訥な語りが目に浮かんでくるような気がしました。
それ以上、「つ」が続くようだと、“す”が入ってしまうので、早く引き上げなくては
……欠けてしまった豆腐の破片が、鍋宇宙のあちらこちらに白く瞬いています。

テーマ : 短歌
ジャンル : 小説・文学

tag : 豆腐短歌

売茶翁

またぞろ、「萬福寺」のことを思い出しました。
北側の回廊を回って、祖師堂などを覗き込んでいた時、
相方が伊藤若冲(1716~1800)の画があると言うのです。
ぼくも眼鏡を掛けて確認してみたところ、
禅画は掛かっていましたが、若冲の筆ではないようです。
ただ、萬福寺は若冲と何かと縁はございまして、
彼と親交の深かった「一杯一銭売茶翁(1675~1763)が
黄檗禅を学んだのも、萬福寺においてでありましたから、
ぼくの目の届かない所に掛かっていたものかしら?と。
若冲の「動植綵絵」に対して、「丹青活手妙通神」と
一行書の賛辞を送ったのが、売茶翁(ばいさおう)でもありましたね。
売茶翁の略歴は以下のとおり(高野澄「黄檗山萬福寺の歴史」より)
       ☆
 萬福寺の黄檗禅は肥前国(佐賀県)にひろがり、佐賀の蓮池に竜津寺(りゅうしんじ)を誕生させた。
 鍋島氏の臣下の柴山常名の子の元昭が竜津寺の化霖道竜
(けりんどうりゅう)の弟子になり、師とともに宇治の萬福寺でまなんだ。化霖は萬福寺四代の独湛性瑩(どくたんしょうえい)の弟子だといわれる(伴蒿蹊『近世畸人伝』)。
 元昭は帰郷して竜津寺に在り、師を補佐していたが、師の没後には法弟に寺務をゆずって諸国を行脚修行し、ついに僧籍を捨て、その後の人生を茶道(煎茶)に専念してすごした。
 かれの茶はひたすら俗を離れることを目指すものであった。京の道端に茶店をかまえ、「一杯一銭」を謡い文句にして茶を売ることで、脱俗の茶道に徹した。
 京のひとは、その脱俗の姿勢を称賛して「売茶翁」の名を呈したのであった。
 昭和三年(一九二八)、萬福寺の境内に売茶翁を祀る売茶堂がたてられた。


参考文献:『古寺巡礼 京都 19 萬福寺』(淡交社)

テーマ : 仏教・佛教
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 美術

歌と逆に

2月25日(土)19時から「中之島公会堂」で、同人の月例合評会。
久しぶりのような、逆に、全然間が開いていないような、変な感じがするのは、
月例合評会としては、先月が同人誌の発送作業だけで終わったせい。
同人らとの顔合わせは、その外部合評会から2週間も経っていないせい。
短編1編、中編1編、計2作の月旦を行う。みんな、“物語”が好きなのかなあと思う。
物語はある意味、普遍的……言葉を変えて言えば、“ありがち”なパターン認識。
それは、のっけから否定すべき筋合いのものではないだろうけれど、
その物語の提示の仕方に少々疑問を感じてしまうのは確かで、
書き手は自分の語っている物語に自覚的なのだろうか? 
物語の批判から“小説”は始まっていなかったか?と、今更ながらの疑いと
ともに、同じことを何十年も呟いてきたような、徒労感に打ちひしがれそうになり。
物語と抒情……別な事態のようであるけれども、悪くすれば、最低な結末に帰着
する点では同じだよなあ、と妙に政治的なことまで気に懸かり出してしまうおかしさ。
するすると抵抗なく読める、というのは、五七五と同じようなものだから、心の中で
一旦「待った」を掛けるべきで、実は読みづらい、意味が取りづらいところにこそ、
“個”の問題が潜んでいるのではなかったか。わかりやすくするために、ただ
既存の物語の枠組みに組み込んでしまっては、本末転倒であるような罪悪感。
小説は独りで読み書きするもの。みんなで声を合わせて歌うような代物ではない。

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

tag : 同人

怒り天神

今年も「大阪天満宮」の「てんま天神梅まつり」に2017_02_24_怒り天神
足を運びました。主会場は、書院造り(100畳敷き)の
参集殿で、「盆梅と盆石展」が催されています。
樹齢200年オーバーの梅の古木・銘木などのほか、
昨年同様、和歌山県みなべ町の瓜渓石(うりだにいし)
飾られていました。同宮所蔵の“天神画像”なども
展示され、毎年、掛け軸は替わっているのですが、
怒り天神」に目を奪われる次第となりました。現在、
天神=菅原道真公といえば、学問の神様として
毒気を抜かれたイメージで思い浮かべてしまいがち
ですけれども、時の左大臣・藤原時平の讒言により、
九州・大宰府へと左遷されて没した菅公ですから、
一般的な天神画像の面貌表現が、怒り天神の
伝統を踏まえて血走った瞋目
(しんもく)であり、唇を強く噛むことが多い」(松浦清・
大阪工業大学准教授)訳ですよ。元は祟りをなす怨霊、祟り神ですものねえ……。

2017_02_24_ぜんざい 牛と戯れ、梅の花を愛でる、学問好きの歌詠み
 なんて、ぼくの甘っちょろいイメージの方こそ、
 修正されて然るべきなのでしょう。起点は“怒り”。
 縁側に出ると、「梅の木餅」だけでなく、ぜんざいも
 注文しました。去年は売り切れていたのかな?
 梅の木餅には昆布茶、ぜんざいには抹茶が
 添えられています。何気に、塩吹き昆布が美味。
 江戸時代から、北前船の西回り航路を経て
 大坂に流入していた北海道の昆布の来し方に、
 しばし思いを巡らせます。境内で演じられていた
 「二助企画」の猿回しを終演まで見届けた後、
 弄堂(ロンタン)」南森町店に寄って、生煎饅頭
(焼き小籠包)を美味しく頂きました。紹興酒とともに。

参考文献:「大阪天満宮社報 第71号 てんまてんじん」(大阪天満宮社務所)

テーマ : 神社仏閣
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 年中行事呑む

イギリス積み

近代建築」と聞いて、何を思い浮かべますか? 
大阪の中之島公会堂もそうなのですが、例えば、ぼくは赤煉瓦
過日、京都府宇治市で目にした宇治駐屯地の展望塔について、
調べていたところ、その煉瓦部分が“イギリス積み”だと知りました……
では、イギリス積みとは何なのか? 煉瓦の積み方(組積法)の名称です。
煉瓦を置いた場合、小口長手がありますが、正面から見た時に
全ての列に小口だけが見えるように重ねる積み方が「小口積み」、
全ての列に長手だけが見えるように重ねる積み方が「長手積み」。
一列は長手、その上列は小口、その上列は長手……と重ねていくことで、
長手列と小口列が交互に積み重なっているのが「イギリス積み」、
一つの列に長手と小口が交互に並んで見えるのが「フランドル積み」となります。
フランス積み」というのはフランドル積みの俗称、というか、誤訳のようですね。
他にドイツ積み、オランダ積み、アメリカ積みなどもあるようで、まさに文化です。

参考記事:(有)吉田工業所「れんがについて―各種積み方」

テーマ : 建築
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 近代建築

篠山市立歴史美術館

ぼたん亭」で牡丹鍋を愉しんだ後は、
2017_02_21_篠山市立歴史美術館
2017_02_21_マンホール

日本遺産の街、篠山市を徘徊。風は冷たい
ですけれども、「鳳鳴」で温まっているので
無問題。岡山県倉敷市のように、馴染みの街
となりそうな気がしています。美味しいお酒と
食べ物、観て愉快な美術品があれば良し。
この日は「篠山市立歴史美術館」を探訪。
建物を外から見て、昔の小学校舎か何かと
思ったところ、明治24年(1891)に落成した
篠山地方裁判所の庁舎だった模様。
木造建築の裁判所としてはわが国最古
であり、篠山市指定文化財となっています。
日本建築史上の定義(by Wikipedia)、
戦前に建てられた建築物のうち、
西洋の建築様式や技術を用いた建築物や、
西洋風の意匠を取り入れた建築物
」という
観点から考えると、篠山市立歴史美術館は
“近代和風建築”の位置付けに当たりそう。
外観だけでなく、旧・法廷も従来の姿で保存
されています。法廷では記念撮影も可能です。
街の名前の基となる史跡篠山城跡篠山城大書院も、いずれ訪れたいところ。

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 美術近代建築

「ぼたん亭」再訪

2017_02_21_「ぼたん亭」 2月21日(火)、昨年に続いて丹波篠山へ向かいました。
 「ぼたん亭」で、牡丹鍋を頂こうと既に予約済みです。
 JR丹波路快速に乗って篠山口へ。神姫バスに乗り換え、
 (今年はバス停を間違えることなく)二階町で降車。
 ものごっつい猪のオブジェに出迎えられて入店します。
 玄関口や店内にも、うり坊の剥製が飾られていますが。
 肉の種類は当日選んでOKでして、並肉とロース肉の
 ミックス肉の牡丹鍋を注文しました。腿肉など並肉を
 追加で注文し、地元のお酒「鳳鳴」を燗で頂きました。
 昨年もJRで大阪から兵庫県篠山市への道中、
 車窓から見える光景に雪がちらついていましたが、
 今回も市中で粉雪に見舞われてしまい。
寒の戻りか、冷え込みます。そんな寒さの中、特製の栗入り味噌で
ぐつぐつと煮込まれた猪肉の美味しいこと。居心地も良く、冬の年中行事になるかも。

テーマ : ご当地グルメ
ジャンル : グルメ

tag : 呑む

昴と参

「おお、小十郎、おまえを殺すつもりはなかった。」
 もうおれは死んだ、と小十郎は思った。そして、ちらちらちらちら、青い星のような光が、そこらいちめんに見えた。
「これが死んだしるしだ。死ぬとき見る火だ。熊ども、ゆるせよ」と小十郎は思った。それからあとの小十郎のこころもちは、もうわたしにはわからない。
 とにかく、それから三日目の晩だった。まるで氷の玉のような月が、空にかかっていた。雪は青白く明るく、水は燐光をあげた。すばる
(しん)の星が、緑やだいだいにちらちらして、呼吸をするように見えた。
(宮沢賢治「なめとこ山の熊」)
       ☆
「すばる(=)」は、おうし座の散開星団「プレアデス星団」。
「参の星」は中国の星座名“二十八宿”の一つで、オリオン座三つ星に該当。
すばる自体も二十八宿の一つ、「昴宿(ぼうしゅく)」に当たります。
文字面だけを追っていると、位置関係がよくわからないかもしれませんが、
頭に冬の夜空を思い描き、オリオン座の三つ星の並びをそのまま西へ延ばしていくと、
おうし座の一等星、アルデバランAldebaran)が目に入ってくるはずですし、
さらに、その延長線辺りにすばるが位置している訳ですね。
星の運行上は、すばるの後にアルデバランが上ってくるので、
アルデバランは「後に続くもの」という意味から名付けられたようです。
ともあれ、オリオン座とおうし座の星をさりげなく並置することで、
天上に描かれるオリオンと牡牛が永遠に闘う絵姿を指し示し、
小十郎と熊(たち)……この地上で生きとし生ける物たちが、
営まざるを得なかった争闘(=宿命)の写し絵としているのでしょう。

参考文献:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』(偕成社)

テーマ : 星・宇宙
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 小説

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
フードビジネス・コンサルタント
(自称)。
好きな言葉は「ごちそうさま」。

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