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Good grief

村上春樹の初期短篇集・逆輸入版『象の消滅』を読んでいて、
女性登場人物まで「やれやれ」と呟いているのを再確認したことで、
通常ならば、違和感を免れず、マッチョな書き手だなあ、と
不信感を抱きかねないところなのですが、まあ、春樹だから、
読者側の方でも、やれやれ、仕方ないなあ、というレベルに落ち着き、
作家の刻印とも言うべき文体上の特徴とも化しているのですが、
村上春樹・訳のチャンドラーでも、フィリップ・マーロウが「やれやれ」
口にしているのに出喰わしてしまい、原文は何なんだ!と気に懸かるのでした。
       ☆
「私は彼を失望させたりはしない。彼のことを愛しているから」
やれやれ」と私は呻いた。「そして君は私をこの部屋に閉じ込めている」

(村上春樹・訳『大いなる眠り』)
       ☆
"I wouldn't let him down. I love him."
"Good grief," I groaned. "And you have me right here in the room with you."

(Raymond Chandler『The Big Sleep』)
       ☆
「Good grief」は英語の常套句。JB の「Good God!」のような感じでしょうか。
研究社の『リーダーズ英和辞典』では、「おやまあ」「へえー」「何てこった!」
といった訳を示し、「驚き・不信・嫌悪などを表す」と解説を加えています。
スヌーピーの登場する「ピーナッツ」で、主人公のチャーリー・ブラウンが
こぼす「やれやれ」という科白が、「Good grief」だったのかと今更ながらの感慨。

参考文献:村上春樹『象の消滅』(新潮社)
       レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』(ハヤカワ文庫)

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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

tag : 小説英語

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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(自称)。
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