弥勒菩薩=布袋

“偶像崇拝友の会”、もとい仏像鑑賞が目的でして、
今回は特に、弥勒菩薩像を目当てに絞り込みました。
弥勒像といえば、「広隆寺」の国宝1号に代表される
優美でたおやかな姿態の像を思い浮かべがちですが、
今回は真逆を行くイメージです。萬福寺は承応3年
(1654)、中国・福建省から渡来した隠元禅師の開創。
「日本のなかの異国である京都のなかのさらなる
異国」が萬福寺だと、五木寛之が記していたように、
同寺は鎖国時代から中国色濃厚なエキゾチックな場所
だった訳です。その天王殿に鎮座するのが、中国仏師、
范道生の作となる弥勒菩薩坐像なのです……が、
ご覧のとおり、布袋像の姿を取っています。唐代末期の実在僧、契此(かいし)、
俗称「布袋和尚」は中国の弥勒菩薩信仰と交わって、いつしか
“弥勒菩薩の化身”として崇められており、范道生はその姿を採用した、と。
弥勒菩薩(布袋)像の背面には、韋駄天立像。

男ぶりが良く、夜遊びが過ぎる韋駄天を諌めるために
周りを金網で囲っているそうです。天王殿では、
弥勒と韋駄天の周囲を四天王立像が取り囲んでおり、
他のお寺では見かけない仏像の配置が面白いです。
大雄宝殿(=禅宗寺院における本堂)の本尊、
釈迦如来坐像を両サイドから固める十八羅漢像、
祖師堂の達磨太子坐像も范道生・作で、見応え満点。
十八羅漢のキャラの描き分けも、笑ってしまうほど
凄いですが、達磨太子はほとんど赤い悪鬼のようで、
弥勒菩薩とはまた違った意味で、頭の中の達磨の
イメージが、がらがらと音を立てて崩れていきましたよ。
参考文献:『古寺巡礼 京都 19 萬福寺』(淡交社)
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