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北辰尊星

昨年末に観た「八陣守護城(しゅごのほんじょう)」の主人公は、加藤正清=加藤清正
徳川幕府の成った後も亡君(豊臣秀吉)への恩を忘れず、北条時政=徳川家康に
警戒されています。秀吉の遺児・秀頼と家康との会見を二条城で取り持った加藤が
熊本への帰途、発病し、帰国後間もなく亡くなったことから、家康に毒を盛られたと
取り沙汰され、作品の設定に仕込まれていますが、“星”が重要なポイントです。
毒酒を呷りながらも、まだ倒れる訳にはいかない加藤は、本国に引き籠もると
「百日の心願」を立てました。毒が回るまでに、幼君を守護する後ろ盾を見届けたい
との物忌みですが、児嶋元兵衛=後藤又兵衛がその1人であることを証す品こそ
北斗尊星より授かるところの七星丸」で、「俄に一天照り輝き、北斗に映ずる
剣の光、赫々たるその有様
」と語られています。正清本城の段で、加藤の持つ
旗にも「南無妙法蓮華経」と記されるように、加藤清正は法華経(=日蓮宗)の人。
日蓮以前から北極星北斗七星信仰はある訳ですが、日蓮宗寺院で祀られる
事例が多いですね。北極星を神格化した名称が「妙見菩薩(=妙見尊星王
北辰妙見菩薩)となります。名こそ“菩薩”ですが、本来の仏教は星辰を信仰しない
ことから、天部に属しています。ここまで来ると、加藤が高楼で最期を遂げる場面の
文章がはっきりと読み取れるようになります。「注連引きはへし楼に端坐合唱、
古今の英雄、見上ぐる空に星象光、照らす威徳ぞありがたき
」……「星象」は
単なる星でなく、北極星を指していると読むべきでしょう。南無妙法蓮華経。

参考文献:『文楽床本集 国立文楽劇場 平成29年11月』(独立行政法人日本芸術文化振興会)
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テーマ : 伝統芸能
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 文楽

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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