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★ 2018年3月に読んだ本 ★

マリアンヌ・ジェグレ『殺されたゴッホ』(小学館文庫)……ゴッホ自殺説を
 鵜呑みにしてきた世代には、是非とも読んでいただきたい小説。なるほど、
 “炎の人”などではさらさらなくて、弱気で、無抵抗な生活無能力者としての
 ゴッホ像に合点の行く点も多々。小説としては、もっと描き込んでくれても
 よいかなあ、と感じましたが。ライトな読み心地で、訪れるゴッホ展では
 画材となった人物や地名に触れるたび、馴染み深い感慨を覚えることに。
『角川 短歌 2月号 2018』(角川文化振興財団)
宮本輝『蛍川・泥の河』(新潮文庫)……マイ・クラシック。
 3月の「二人の読書会」テクスト。今回は、浄正橋に着目してみました。
三島由紀夫『鍵のかかる部屋』(新潮文庫)……三島の作品は、好悪が
 はっきり分かれてしまうのです。この短編集の中では、「怪物」、「美神」、
 「鍵のかかる部屋」に賞賛を惜しみませんが、感心できない作品もちらほら。
岡村隆『泥河の果てまで』(ハヤカワ文庫)……スリランカを舞台にした冒険小説。
 時代背景は1986~1987年頃で、1989年作とあれば、風化も否めず。
車谷長吉『鹽壺の匙』(新潮文庫)……再読したつもりが、未読だったかも。
車谷長吉『漂流物』(新潮社)……いわゆる“私小説”作品のつもりで
 読み進めていると、いつの間にやら、突き抜けて、幻想に足を踏み入れた観。
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

西宮市貝類館

兵庫県西宮市に在る西宮浜は人工島で、2018_03_30_西宮市貝類館
そのまま、町名でも通用します。阪神・西宮
駅から阪神バスに乗って、西宮大橋を渡り、
西宮市貝類館」へ行ってきました。
貝類専門の博物館という、なかなか面白い
趣向です。ぼくは「ニッポン貝人列伝」展で
存在を知りました。“貝聖黒田徳米博士の
胸像を見て、懐かしくなったくらいです。
晩年の黒田博士と親しくした菊池典男
貝類の研究家であるとともに、西宮回生病院院長だったことから、
西宮市に貝類館が設けられる運びとなったようです。
平成11年(1999)5月7日の開館で、安藤忠雄の設計。
妙な曲面構成だなあ、と思っていたらば、ヨットの帆をイメージしていた模様。
黒田博士~菊池典男コレクションを核とした様々な貝類標本だけでなく、
生きているオウムガイ、クリオネ、ヒダリマキマイマイも観察できますよ。
特集展示は「世界のイモガイ」。地球上、最強の猛毒を持つといわれる
アンボイナガイ(=ハブガイ)は標本のみでしたが、何とも魅力的な……。
お土産に小さな貝を1個、ハナビラダカラを選ばせてもらいました。

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 建築

鹿芝居

2018_03_30_天満天神繁昌亭 3月30日(金)、日中、灘五郷の一つを巡ると、
 大阪に帰ってきまして、「天満天神繁昌亭」を
 訪れたのです。地下鉄・南森町駅から天神橋筋
 商店街を南へ。左手に折れると、繁昌亭の上、
 東の空に小望月が浮かんでいました。満月の
 前夜です。ちなみに、大阪市営地下鉄は
 民営化され、4月1日から「Osaka Metro(=
 大阪市高速電気軌道)」の名称となります。
 この日は18時から「第9回 露の五郎兵衛
追善落語会
」。全2回の興行で、第1夜は“女組”、女性落語家のみの出演でした。
2代目・露の五郎兵衛(1932~2009)一門の露の都は最初の女性落語家であり、
都の弟子や五郎兵衛の娘、露のききょうといったメンバーが名を連ねていました。
プログラムで注意を引いたのが“鹿芝居”。「鹿」は「噺家(はなしか)」の略語ですから、
落語家の演じるお芝居のこと。古典落語「悋気の独楽」を基に作っていましたね。
西宮(灘五郷)の散策で疲れが出てきつつあった中入りの後、目が覚めました!
個々の演目は以下のとおり。
       ☆
 露の棗「松山鏡」
 露の紫「皿屋敷」
 露の眞「目薬」
 露の団姫「お血脈」
 露のききょう「延陽伯」
 仲入
 鹿芝居「悋気の独楽」=瑞、陽照、眞、団姫、紫、棗
 露の都「花嫁御寮」

テーマ : 落語
ジャンル : お笑い

tag : 落語演劇

妄ソーセキ

3月29日(木)19時、大阪市の「あべのハルカス」近鉄本店
ウイング館8階、「近鉄アート館」で開催された
イッセー尾形の「妄ソーセキ劇場+1」を観に行きました。
実は、同館を訪れるのは初めてでして、お芝居と同じくらいに
劇場という場所に心を惹かれるので、ちょっと、どきどき。
大き過ぎず、狭過ぎず、ちょうどぼく好みのキャパでした。
ピンのお笑い芸人として「お笑いスター誕生!!」で名を売った
という意味では、でんでんとも被るかなぁと思うのですが、
怪優(?)路線に転じることなく、飄々とした一人芝居を
そのまま続けてきて、現在に至るといったマイ・ペースぶり。
舞台袖で衣装替え、化粧直しを行う様も、観客に丸見えです。
       ☆
演題にも掲げられているとおり、夏目漱石の諸作品が元ネタ。
フライヤーに目を遣ると、『坑夫』『草枕』『道草』『門』『明暗』
……言われてみれば、なるほど、そうか!と納得するのですけれど、
かなり、ぐしゃぐしゃに弄られ、10~20分の場に再構成されているため、
黙って観ている限り、よっぽどの漱石好きでもなければ、
その場では腑に落ちないように思います。面白いのはその崩し方。
噺家の語りから入る『坑夫』、『草枕』にぶち込む「夢十夜」の時間感覚、
『道草』からは島田でなく、島田の先妻・お常を引っ張り出し、
『門』では宗助の弟・小六のニートぶり、そうなれば、『明暗』は吉川夫人
非常におかしくて笑えるのですが、会場を爆笑の渦に落とし込むのでなく、
くすくすとくすぐるように、訳のわからなさも許容できる空気を作った上で、
芸術味や文学性を匂わせる演出が、ずるいなあとも。名作文学作品から、
脇役の喰えない小市民を抜擢した時点で、お膳立ては出来ているのです。

テーマ : 演劇
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 演劇小説

Kill My Vibe

 Mayer HawthorneTerrace Martin
 の諸作における客演で覚えていたのですが、
 存在が大きくなり過ぎてしまったとはいえ、
 Kendrick Lamar は愚作が無いですね。
 どの歌詞もきちんと読み込みたいと思わされた
 のは、ひょっとすると、2Pac (1971~1996)
 以来かもしれません。現在は、2012年発表の
メジャー・デビュー盤 『good kid, m.A.A.d city』 を聴き返しているところです。
『DAMN』ほどではないですが、曲構成が巧妙。編集感覚の冴えに舌を巻きます。
       ☆
 I am a sinner who's probably gonna sin again
 Lord forgive me, Lord forgive me
 Things I don't understand
 Sometimes I need to be alone
 Bitch don't kill my vibe, bitch don't kill my vibe

テーマ : Soul, R&B, Funk
ジャンル : 音楽

tag : 黒い音

妙香院(2)

大阪・西寺町の「妙香院」は通常非公開。モダンな2015_01_23_妙香院_毘沙門天
意匠の門構えが目を引きますけれど、大抵は
そそくさと足早に通り過ぎるばかりでしょう。ところが、
打ち放しのコンクリートに嵌め込まれたプレートには
毘沙門さんの寺 浄土宗 妙香院」の文字有り。
そう、同寺の本尊は阿弥陀仏ですが、重要文化財に
指定された木造兜跋毘沙門天立像を所蔵して
いるのでした。もちろん、拝観できる機会はそうそう
無いのですが、ぼくは3年ほど前、大阪市北区の
イベント「北区ぶらぶら~2014 WINTER~小さな旅に
でかけよう」の第1回「北区の幸招きめぐり」で対面。
(画像は2015年1月23日撮影分です)
藤原時代の制作といわれ、頭部の宝冠が八角形なのが特徴。
こんな所に、こんな仏像が隠れていたのかあ、と嬉しくなったものです。
いつ、どこで、どんな出逢いがあるやも知れず、心のアンテナは常に鋭敏に。

テーマ : 仏教・佛教
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 仏像

妙香院(1)

2018_03_26_妙香院 大阪市内の旧“北野村”に相当する地域の
 中で、兎我野町の南端、東西に延びている
 「西寺町」は、大体、「露天神社」から堀川に
 かけて、多くの寺院が連なっています。
 「堀川戎」の頃、梅田方面からの参道となる
 一帯です。現在の勤務先から天満へ歩いて
 帰宅する際、時折、西寺町を東進するルートを
 選んでみたりするのですが、「妙香院」門前で
 “豆腐”の文字に、ぐいっと足を引き止められ
……読めば、隠元禅師の「豆腐賛」に代表される豆腐アンセムで、にやりと笑い。
(以下、全文書き起こし。原文ママ)
       ☆
信仰とはお豆腐の様になる事
豆腐は煮られてもよし
焼かれてもよし 揚げられてもよし
生で冷奴でご飯の菜によし
湯豆腐で一杯 酒肴にもよし
柔くて老人や病人にやさしく
子供や若者からも好かれ
男性によし 女性にもよし
平民的でありながら気品もあり
上流へも好かれる
行儀よく切って吸物となり
精進料理によし
握りつぶして味噌汁の身となり
家庭料理に向く
四季春夏秋冬 常に使われ
安価であってもご馳走で
山間に都会に歓迎せられ
貴顕や外客の招宴にも迎えられ
簡単な自炊にも喜ばれる
徹した人は豆腐の如く柔く形を崩さぬ
味がないようで味があり
平凡に見えて非凡なのです

テーマ : 仏教・佛教
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 豆腐

同人の日

2018_03_25_中之島公会堂まで 3月25日(日)、大阪市中央公会堂にて
 同人の月例合評会が行われました。作品を
 提出する番でしたが、思うようにまとまらず、
 メール等で断りを入れる余裕も無いままに
 未提出といった仕儀に至りました。情けない。
 他に長尺の2作品が届いていたので、
 月旦の材料には困りませんでしたけれども。
 ただ、それ以上に問題なのが、同人誌制作の
 進行具合……遅れに、遅れ倒しています。
金沢行きを懸けて、退路を断って、発破をかけているのですが、常にも増して窮状。
請け負っている契約のブラック過ぎる条件に縛られ、身も心も蝕まれつつあるなぁ。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

tag : 小説同人呑む

御影郷「福寿」

2018_03_20_「福寿」 大阪駅前ビルはリーマン天国だけあって、表に
 裏に、名店・実力店揃い。駅前第1ビルB2F、
 以前紹介した「九州もん」の左隣に在るのが
 御影郷福寿」。灘五郷(=西郷御影郷
 魚崎郷西宮郷今津郷)の一つ、御影郷で
 “福寿”を醸す「神戸酒心館」の直営する
 居酒屋ですから、お酒に間違いは無し。
 アテも気取らず、お手頃価格で、かつ美味。
 旬の菜の花の他、「豆富味噌漬け」、「納豆
袋焼き
」などもしみじみと旨く、お酒が進んで困ってしまうほど。いつか、灘五郷を
リサーチする折あらば、蔵元「神戸酒心館」は是非とも訪れる腹積もりでいます。

テーマ : ご当地グルメ
ジャンル : グルメ

tag : 呑む豆腐納豆おでん

青児美人

3月23日(金)、「あべのハルカス美術館」に2018_03_23_東郷青児
赴き、生誕120年「東郷青児展」を鑑賞。
サブ・タイトルが「夢と現の女たち」です。
川端康成先生の言葉を引くと、「東郷青児
氏が終始一貫描きつづける女を、私たちは
鮮明にもってゐる。一つの完全に個性
独創の美であるが、すでに一つの普遍の
美のように親しい
」となります。東郷青児
(1897~1978)の描く女性像、いわゆる
青児美人”は装飾性に秀で、“夢二美人”に負けず劣らずの人気ぶりか、と。
個人的には、前衛画家の佇まいを見せる初期の画風が好みで、
超現実派の散歩」などは何度観ても、見飽きませんけれど……。
デパートの壁画を含め、装丁やデザインにおける商業方面での活躍が明かすように、
根底的にポップな画家だなあ、と感じます。芸術的にどうのこうの論じるより先に、
キャラの立った作風ですもの。当日、会場が空いていて、リラックスして観覧。
安田火災海上保険(=現・損保ジャパン日本興亜)や藤田嗣治らとの
つながりから、作品が“売れる”ということの意味をしばし考えさせられます。
「損保ジャパン日本興亜美術館」は当然ながら、「鹿児島市立美術館」の
所蔵品が意外と多いのは、青児が鹿児島県出身といった縁からなのでしょう。

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 美術

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
フードビジネス・コンサルタント
(自称)。
好きな言葉は「ごちそうさま」。

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