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うかれ左京

「おとべちゃん、タバコ」
 小松左京さんの声がすると、スクリーンの小松さんの顔に大量の白煙が吹きつけられた。
 二〇一二年七月十六日、大阪のサンケイホールブリーゼで行われた小松左京一周忌イベント「宇宙の知性と融合した うかれ小松左京に出会う会」での最後のサプライズシーンである。
 続いて「タバコが身体に悪いというけどな~、生きているのが一番身体に悪いで」という文字が表れると、会場を埋め尽くしたお客さんは、大爆笑。
 桜橋にあったサンケイビルは、小松さんが作家として生まれる前にサンケイ新聞(現産経新聞)でコラムを書いたり、ラジオ大阪で夢路いとし・喜味こいしさんのために漫才台本を書いたりと、インキュベーター(孵卵器)として大きな役割を果たしてくれた今でいう「インテリジェントビル」だった。
 その同じ場所で、大阪の友人たちが大阪の「うかれ」として旅立った小松さんを自分たちの手でもう一度迎えたいと「出会う会」を開催してくださった。
『小松左京マガジン』のコラム「小松左京自作を語る」の聞き役として長年小松さんにインタビューしてきた京都大学教授(当時)の澤田芳郎さんが基調講演し、パネルディスカッションには桂米朝師匠と米團治さんも出演した。
 その米朝師匠は、「きょうは小松さんに会いに来たんやから。ああ、そこに来てはりますなぁ」と、あの世とこの世を繋いでくださった。私も活字にできないエピソードを含め、「膝のり秘書」の妄想から「オニ秘書」などへの変遷を披露した。
 第二部では、小松さんが原作・脚本・製作・総監督として精根込めて作った映画「さよならジュピター」を鑑賞。作品に込められた暗喩などを細かく分析し、生前に小松さんや出演者、監督などにも会って詳細な研究書を執筆している下村健樹さん(生命科学博士)の解説を聞いたあとの上映なので、映画公開時よりも深い理解を得られたと思う。
(中略)
 二十一日は、大阪市立科学館プラネタリウムで「小松左京のSF宇宙を見る」と題した「小松左京ナイト」。堀晃さん(SF作家)、福江純さん(天文学者)が小松作品に描かれた宇宙像をヴィジュアル化して投影しながら紹介したあと、未完の長篇SF『虚無回廊』に登場する「SS」という宇宙に浮かぶ超巨大構造物をプラネタリウムに映して見せてくれたのは、圧巻だった。
 小松さんの名前がついた小惑星「Komatsusakyo」の現在位置も渡部学芸員によって解説され、投影された。そして最後に、一一年一月二十九日に東京で行った「小松左京を宇宙へ送り出す会」で上映した「小松ロケット打ち上げ」映像をドームに投射。樋口真嗣監督はじめ、東京で映像制作に尽力してくれたスタッフも上阪して、ドームに映る臨場感あふれる宇宙映像を楽しんだ。
 いずれの会も満席のお客様で、寂しがりやの小松さんは喜んでいたことだろう。

       ☆
懐かしく読み耽ってしまったのは、2012年7月16日、21日、
いずれのイベントにも、ぼくは参加できていたからなのです。
同人誌『小松左京マガジン』を創刊号から愛読していたので、
大阪で小松左京(1931~2011)の一周忌イベントが開催されるのを
予め、知っていました。開催場所も「ブリーゼタワー」や
大阪市立科学館」と、馴染みのある場所で、縁を感じたものです。
米朝師匠(1925~2015)を最後に生で見たのも、その機会でしたねえ
……あれから、もう、7年が経過しようとしています。

参考文献:乙部順子『小松左京さんと日本沈没 秘書物語』(産経新聞出版)
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

tag : 小説映画落語

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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(自称)。
好きな言葉は「ごちそうさま」。

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