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★ 2019年6月に読んだ本 ★

三島由紀夫『若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇』(岩波文庫)
 ……「黒蜥蜴」は仕掛け、ストーリー・テリングの妙を味わえる佳品。
 三島が世間に受容されるには、この辺りまで砕けて、調子を下げる要有り。
『谷崎潤一郎随筆集』(岩波文庫)……篠田一士・編。編者としての苦心譚の
 締め括りとして、このアンソロジーの眼目が谷崎の文学論であることを明言。
 現代の文楽好きには、「いわゆる痴呆の芸術について」をどう咀嚼するか? 
 との難題が突き付けられます。決して、否定ではないニュアンスを汲み取れるか。
谷崎潤一郎『吉野葛・蘆刈』(岩波文庫)……マイ・クラシック。挿絵が北野恒富
 昔はそうも感じなかったのですが、奈良・吉野や淀川流域の山崎~水無瀬など、
 小説の舞台となった現地を知ってしまうと、何とも、空恐ろしい凄みを覚えます。
平幡良雄『西国観音巡礼』(満願寺教化部)
ジョサイア・コンドル『河鍋暁斎』(岩波文庫)……錚々たる日本の近代建築家を
 育成したばかりか、河鍋暁斎に師事して、「暁英」の号まで得ているのだから、
 コンドル先生、日本文化に通暁し過ぎ。コンドルの作品はほぼほぼ東京なのね。
編集=国立文楽劇場営業課
 『第36回文楽鑑賞教室』(独立行政法人日本芸術文化振興会)
三島由紀夫『サド侯爵夫人・わが友ヒットラー』(新潮文庫)……マイ・クラシック。
 「サド侯爵夫人」は傑作ですが、畢竟、太宰治の「きりぎりす」ではあるかな。
『新潮日本美術文庫 24 河鍋暁斎』(新潮社)
 ……暁斎の絵が死んでいます。現物を見ないことには始まらない世界なのです。
編集=国立劇場営業部営業課編集企画室
 『文楽若手会』(独立行政法人日本芸術文化振興会)

吉田裕子『日本語の常識・非常識』(〓出版社)……「〓」=「木」偏+「世」
監修・後藤武士『図説 一冊で学び直せる日本史の本』(学研プラス)
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

いかすり寄席【怖いネタ】

いかすり寄席」【夏のネタ】の終演が15時2019_06_29_アジサイ
40分頃でしたか。会場となる坐摩神社会館を
出まして、境内の「上方落語寄席発祥の地
石碑やアジサイ、「火防(ひぶせ)陶器神社」を
眺めた後、西へ赴き、四つ橋筋向かいに在る
立売堀ビルディング(=下画像)を観察――
南側(手前部分)は新館部分。大阪大空襲で
焼失したため、昭和36年(1961)に再建。北側
旧館と比べると、のっぺらとした印象です――
したところで、まだ時間に余裕。「船場センタービル」に移動を図ります。
       ☆
2019_06_29_立売堀ビルディング 「船場センタービル」は東西に長く延びており、
 1~10号館までありますが、今回は9号館
 B2Fの「珍八香」に潜り込み、ほろ酔いセット
 (1,000円)の他、酢豚、野菜炒め、梅肉奴
 などを摘まみました。睡魔に襲われないよう、
 ワインも控えめに。そうして、「いかすり寄席」
 【怖いネタ】は、18時から開演。トリは桂米朝
 最後の直弟子、桂宗助でして、【夏のネタ】
 でも感心していたように、綺麗に磨かれた
上方弁が耳に心地良く、端正な芸風に触れ、思わぬ掘り出し物(?)に得した気分。
【怖いネタ】の演目は下記のとおり。シチュエーションは異なれど、「五光」における
妄念だけでさらばえ生きていた怪僧の姿に、「青頭巾」を髣髴してしまうのよねぇ。
       ☆
月亭秀都「阿弥陀池」
桂梅団治「野ざらし」
桂三歩「スリラー」
桂米平「五光」
 仲入り
桂文我「出歯吉」
桂宗助「怪談市川堤」

テーマ : 落語
ジャンル : お笑い

tag : 落語近代建築呑む建築豆腐小説

いかすり寄席【夏のネタ】

6月29日(土)、大阪市中央区・本町に足を向け、2019_06_29_坐摩神社
坐摩神社」会館で開かれていた「いかすり
寄席
」を楽しみました。桂文我のプロデュース。
特徴的な三ツ鳥居を潜ると、翌日の夏越
合わせて、茅の輪が設(しつら)えてありました。
境内側から入ろうとしたところ、入られず、一旦
道路に回り込んでから、会館5Fにエレベーターで
上がりました。時期的に、G20(28~29日)や
闇営業”の枕話で盛り上がっています。文我の
ヒート・アップする政治批判に、桂梅団治
人生幸朗師匠か」と突っ込んでいたのに
笑いましたが、まぁ、最低な政治家ばかりですからね。
日中と夜の2部に分かれている落語会でして、
前半が【夏のネタ】、後半が【怖いネタ】を集めた構成。
13時開演となる【夏のネタ】の演目は、下記のとおり。
       ☆
月亭秀都「遊山船」
桂宗助「蛇含草」
桂三象「読書の時間」
桂文我「須磨の浦風」
 仲入り
桂文我「蛍の探偵」
桂梅団治「青菜」

テーマ : 落語
ジャンル : お笑い

tag : 落語年中行事

Poohsticks Bridge

2019_06_28_プー棒投げ橋 6月28日(金)、「あべのハルカス美術館」に
 出掛け、「クマのプーさん展」を観てきました。
 A・A・ミルン(1882~1956)は、ぼくにとって
 『赤い館の秘密』の作者ですが、世間的には
 プーさん(Winnie-the-Pooh)の生みの親。
 E・H・シェパードの挿絵と併せて、ヴィクトリア・
 アンド・アルバート博物館(V&A)からお目見え
 となりました。橋好きのぼくの足を止めたのが、
 『プー横丁にたった家(The house at Pooh
Corner)に登場する “プー棒投げ橋Poohsticks Bridge)”の再現シーン。
正確には、棒切れを投げるのではなく、川の上流に落として、橋の下流側に現れる
順番を競う訳ですけれども……似たようなことを子供時代に、誰もがやっていたのでは
ないかしら。笹舟やら何やら、小川に流して……大雨のあった日にはスリリングでした。
モデルとなったのは、英国イースト・サセックス州のアッシュダウン・フォレストに在る
Posingford Bridge」だそうで、後の再建時、「Poohsticks Bridge」と改称。

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 小説美術

尼崎B級グルメ

言い方は悪くなりますが(むしろ、褒めているつもりです)、
2019_06_26_「鹿児島屋」
2019_06_26_「琴城ヒノデ阿免本舗」
2019_06_26_「岡」
2019_06_26_「二万翁」

尼崎市ほど、B級グルメが似合う街もまたと無いように
思います。子供時代(小学校に上がる前頃まで)、ぼくは
兵庫県西宮市民で、西宮と言っても、ほぼ尼崎市に近い
界隈で育っていたので、尼崎のことは憎からず思っています。
       ☆
昨今の“ホルモン屋”と言えば、焼き肉屋が気負って提供
するような肉料理が多く、昭和の時代のホルモン焼きじゃ
ないわ、と嘆かわしいのですけれども、三和本通商店街
南の外れに在る「鹿児島屋」(尼崎市玄番北之町21)は合格。
朝10時オープンからいきなり、近所の呑んだくれらが集まり、
テーブル席を埋めていて、苦笑い。ぼくもその一員となり、
ホルモン焼き350円。女将のそつない客あしらいが見事です。
ホルモンは味噌と醤油で煮込んだタイプで、一味が合います。
個人的には、焼きを入れた串焼きタイプの「中畑商店」が
好みとはいえ、「鹿児島屋」は「鹿児島屋」の味わいが有り。
       ☆
日本最古の中華そば”を提供する大正元年(1912)創業の
中華料理「大貫」でランチを取る予定でしたが、残念なことに
水曜日は定休日。本店しかないのかな?と思いきや、割と
近くで見かけた「大貫支店(尼崎市神田北通3丁目37)に
突入。鶏ガラと豚骨、昆布や野菜から採られたスープは、
芳醇にしてノスタルジックな味わい。半チャン・セットを注文
しますと、炒飯が絶品。ちょうど昼時で引っ切り無しの来客。
       ☆
尼崎城」見物の後は、「開明橋」袂に店舗を構える「琴城
ヒノデ阿免本舗
」(尼崎市開明町1-36)を訪問。尼崎名産
ヒノデ水飴」は、砂糖を使わず、もち米を発酵させた自然の
甘味が疲れ切った身体に染みます。喉にも良さげです。
ところで、店名に含まれる“琴城”(暖簾にも琴柱の図)は
尼崎城の別名、尼崎の古名が「琴之浦」でして、あの菅原
道真が「この地は殊の外よき浦なり 又 松は琴柱の竝び
立つ如し
」と激賞……天神さんは尼崎にも寄っていたのね。
       ☆
寺町の南側の路地に面した たこ焼き「」(尼崎市東桜木町16)は、
14個200円という衝撃価格! 開業時から値上げしていないそうで、
タイム・スリップした感覚に陥りましたよ。紅生姜ではなく、葱を使用。
黙々と焼き続ける老夫の脇で、女将が尼崎案内。そろそろ、帰阪の
つもりでしたが、勧められるがまま、「世界の貯金箱博物館」等に
駆け込むことと相成りました。駆け足でしたけれども(“近松の里
探訪も、今回は割愛せざるを得ませんでしたが)、尼崎を満喫して、
最後に、阪神・尼崎駅前の「二万翁」(尼崎市神田中通1-2-1)の
たい焼きを賞味。小豆70円、カスタード90円。季節限定となる
おぼれたい焼き”を試すのは、次回ということにしておきましょう。

テーマ : ご当地グルメ
ジャンル : グルメ

tag : 呑むおやつ文楽

尼崎城

モーリス・デイのライヴを愉しんだ翌日(6月2019_06_26_庄下橋と尼崎城
26日)、何故だか、兵庫県尼崎市に在る
尼崎城」にやって来ていました。阪神電車を
利用して、尼崎駅で窓の外を見ると、いつの日
からか、天守閣が目に留まるようになっており、
気に懸けていたのですねえ。何故に、平成も
終わる頃に、尼崎なんぞに城郭が……?
       ☆
オリジナルの尼崎城は、元和3年(1617)、
戸田氏鉄(うじかね)が築きました。別名「琴浦城」。
戸田氏の後、青山氏が4代、(桜井)松平氏が7代、
城主を務めています。最後の藩主は松平忠興
尼崎城もまた、明治6年(1873)の廃城令によって
取り壊されました。跡地は「尼崎城址公園」となって
いましたが、今年(平成31年)3月29日、突如、園内に
再建された尼崎城が一般公開され、ぼくも探索の手を延ばした次第。
2019_06_26_尼崎城        ☆
 複合式の四重天守を見せていますが、内部は5階。
 城下町を再現したVRシアターなども入っているにせよ、
 シンプルに5階の展望ゾーンが、落ち着けました。
 特に見るべき何かが見えるということもないけれど、
 尼崎市全体を見渡すという行為に、地図を読む楽しみ
 と同質のものを感じます。現在の尼崎市内には、
 超高層ビルが見当たらないようですし。さて、この
 復元天守の寄贈者(?)は、旧「ミドリ電化
 (現「エディオン」傘下)の創業者、安保詮(あきら)
 いろいろとあるでしょうが、「ミドリ電化」創業の地である
 尼崎市への恩返しという文脈で語られていまして、
問題は、城に対する愛、歴史に対するリスペクトはどこまで本物だろう?というところ。
復元された尼崎城は元の位置から離れているだけでなく、建っている向きも異なる…
…尼崎のイメージ挽回を目して、史実に則るよりも、短兵急に“客寄せ天守”を拵えた
と、難じるべきかしら? 尼崎市民がそれでよいと言うのならば、それもまた良し。
本来の尼崎城に関する知見は押さえた上で、かつ、フィクションも必要なのです。

テーマ : 城郭
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag :

Morris Day & The Time

6月25日(火)、「ビルボードライブ大阪」に赴き、
Morris Day & The Time の来日公演(1st ステージ)を堪能。
モーリスは現在、何歳になったのかしら? 61歳??
全盛期と同じことしかしないのだけれど、それが良くて。
自分に与えられた役割をきっちりと果たす、
求められているキャラクターを演じ切る“大人”です。
双眼鏡で顔を覗き込めば、汗だくになっていて、
“老い”は隠せないのですが、それもまた愛しいです。
MCの受けが今一つで、翻訳者を欲しがる様も切なく、
「俺はまだクールに見えるかい?」と
強気に問いかけるダンディズムを粋に感じました。
オリジナル・メンバーは、ジェリービーンモンテ・モアのみ
(ついでながら、幇間ならぬ“鏡持ち”も代替わり)
でしたけれども、モーリスがいれば、ザ・タイムなのだな、と。
そのキャラの濃さを買って、殿下もバンドを創作したのでしょう。
つなぎのSEに、殿下の曲を効果的に使用していました。
オープニングに「1999」、「Purple Rain」、
気付け薬に「Let's Go Crazy」...etc.
D.M.S.R.」は本当は自作曲だよというアピール?
愛の哀しみNothing Compares 2 U)」から
超絶バラード「Gigolos Get Lonely Too」への流れも最強、
Get It Up」、「The Walk」、「777-9311」、
Jerk Out」、「Jungle Love」……と大ファンク大会。
ソロ曲「Fishnet」も元々、ザ・タイムの音であるから
全くの無問題。「The Bird」で締めましたかね。
いつの間にやら、ぼくも汗だくになっていましたが。
ぼくらは、まだまだ、Funk し続けていける?
       ☆
 Morris Day - Vocals
 Thomas Austin - Mirror guy
 Jellybean Johnson - Drums
 Monte Moir - Keyboards
 Ricky "Freeze" Smith - Bass
 Terrell Ruffin - Guitar

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テーマ : Soul, R&B, Funk
ジャンル : 音楽

tag : 黒い音

上方落語協会会館

2019_06_21_上方落語協会会館 現在補修中の上方落語の定席、「天満天神繁昌亭
 (大阪市北区天神橋2−1−34)とそうも離れることなく
 建っているのが「上方落語協会会館」(大阪市北区
 天満4丁目12−7)です。「大阪天満宮」のお膝元に
 在る訳ですが、打ち放しのコンクリート外壁……は
 やはり、安藤忠雄の設計。正面から見て、右上方の
 切り取られた三角窓は、三角形の入り口部分と対を
 成しています。鉄筋コンクリート造りの地上3階建て、
 2012年竣工。1階から3階まで連続するスリットに
 目が行き、よくよく観察すると、地面の線と合わせて
 「」の字を形作っていますね。特に奇を衒った風で
 なく、天満の街に自然と馴染んでいる良いビルです。

テーマ : 建築
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 建築落語

文楽若手会

6月23日(日)、「国立文楽劇場」に出掛け、「文楽若手会」を聴いてきました。
文楽既成者研修発表会”と位置付けられ、次代を担う技芸員の育成が目的。
電話予約をしており、開演13時の30分前までに、劇場窓口でチケットを
引き取らなければなりません。若手の発表会のせいでしょうか、観客席も
通常公演より若返っているように見えました。演目は「義経千本桜
椎の木の段/小金吾討死の段/すしやの段、20分休憩の後、
妹背山婦女(おんな)庭訓」道行恋苧環(おだまき)――となります。
今回の失敗は、寝不足でぼんやりしていて、双眼鏡を持参し損じたこと。
眼鏡も無いので、人形遣いの細やかな動きを一つひとつ追っていくことは無理。
その分、太夫の詞章の展開や三味線に集中して、耳を澄ましましたけれどね。
主馬小金吾武里を吉田玉翔いがみの権太吉田玉勢が遣っていました。
「妹背山婦女庭訓」では、小道具の苧環がくるくる回転するのが面白くて……。
さて、文楽好きの“踏み絵”となる大谷崎の痴呆芸術観から引用してみましょう。
       ☆
 父親に腹を抉(えぐ)られてから長い告白をして父親を感激させ、どんでん覆(がえ)しになるところは、鮨屋の権太も玉手御前と同工異曲であるが、この方はまた一段と馬鹿々々しい。権太は父親に向って、「梶原ほどの侍」が維盛(これもり)を「弥助というて青二才の男に仕立ててあることを、知らいで討手(うって)に来ましょうか」といっているが、そんなことをいうなら、その梶原に贋首(にせくび)を掴(つか)ませたり、替え玉の御台(みだい)若君を渡したりして、それでうまうま彼を欺き終(おお)せると思うのが可笑(おか)しい。ところがこの浄瑠璃にはどんでん覆しが沢山あって、結局梶原は弥助が維盛であったことも、縄付の母子が実は権太の女房と悴(せがれ)であったことも、以前は不孝者の無頼漢であった権太がいつの間にやら悪い性根を入れ替えて忠義者になっていたことも、何も彼も洞察していたのであり、そういうことを百も承知でわざと一杯喰わされていたのだということになっている。そればかりでなく、梶原は頼朝の内意を受け、維盛の一命を助けて出家させようという目的で来ているので、つまるところは頼朝も梶原も弥左衛門や権太と同じ心であったことが、終りの方へ来て明かになるのであるが、それでは弥左衛門や権太の忠節も全然不必要なものになってしまうので、まことに呆然たらざるを得ない。手負いの権太もこれには驚いて「及ばぬ智慧で梶原を、たばかったと思うたが、あっちが何も皆合点、思えばこれまで騙(かた)ったも、後は命を騙らるる種と知らざる浅ましさ」といっているのはいよいよ可笑しい。この戯曲に出る梶原平三(へいぞう)景時(かげとき)恐ろしい天眼通を備えた男で、権太に褒美として与えた頼朝の陣羽織が維盛の手に渡ることも、維盛が晋の予譲の真似をしてそれを刀で刺そうとする途端に羽織の裏の歌の文句に気が付くことも、歌の謎が解けて縫い目を切り開き、中に入れてあった袈裟と数珠とを首尾よく受け取るようになることも、何も彼も予定通りに運ぶことを先の先までちゃんと見抜いていたらしいのであるが、そんなに偉い智慧者であったら、権太や弥左衛門にあんな大騒ぎをさせないでも、もっと簡単に維盛を助ける方法がありそうなものではないか。あれでは維盛を助けるよりも、権太や弥左衛門の忠節をテストするのが目的であったように見えるが、まさかそんな訳ではなかろう。とすると、「梶原ほどの侍」が権太にああいう芝居をさせて、わざと一杯喰わされたりしたのは何のためであったか分らないし、権太や弥左衛門は忠義な人間というよりも、殺さないでもよい悴を殺したり、死なないでもよい命を落したりした気の毒な愚人であったことになり、この芝居全体が無意義なから騒ぎであったことになる。
       ☆
敢えて、反問してみましょう。とどのつまり、世の中は、愚か者どもの空騒ぎ
だったにせよ……それでは、何故、いけないのか? Tell me, tell me, why...

参考文献:『谷崎潤一郎随筆集』(岩波文庫)

テーマ : 伝統芸能
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 文楽

お染・久松の墓

20190618_お染・久松の墓所 町中のちょっとしたお寺さんのように見えながら、
 予想外に歴史も古く、引き出しの多さに驚かされる
 羽曳野市の「野中寺」でしたけれど、境内西側に
 位置する同寺の霊園にも、見ものが在りました。
 「お染・久松の墓所」です……お染久松、お染・
 久松……誰だったっけ? と記憶を蘇らせるうち、
 『新版歌祭文』等で知られる二人だったと膝を
 打ちます。どうして、こんな所に? 頭を捻ります
 が、墓石の裏に「享保七年十月七日建之」、
 「大坂東堀天王寺屋権右ヱ門」とあって、
 天王寺屋は油屋の豪商。二人は油屋の一人娘と
 丁稚ではありました。心中した二人の十七回忌に、
墓石を刻み、遺品を納めたそうです。墓所の説明板のすぐにそれらしき墓石が
目立って建っているので騙されますが、本物はもっと北の奥の方に在ります。
 

テーマ : 史跡
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 史跡文楽

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
フードビジネス・コンサルタント
(自称)。
好きな言葉は「ごちそうさま」。

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