五~七段目
いつだったかなぁ。7月12日の午前中だったか、窓口で
「夏休み文楽特別公演」第3部のチケット入手は楽勝
でしたのに、第2部は全席完売、売り切れ。国立文楽劇場
開場35周年記念の“通し狂言”ですものね。仕方ないか。
でなくとも、昔から根強い忠臣蔵人気もあるでしょうし。
しかし、諦めません。千穐楽まで間も無い7月30日(火)、
開館となる10時前から、大阪メトロ・堺筋線で日本橋へ急げば、
既に、劇場前に(親子連れを含め)行列が出来ていて、びっくり。
それでも、どうにか、当日・第2部の補助席(追加のパイプ
椅子席)を押さえられて、一安心。胸を撫で下ろしたのです。
座り心地や窮屈さを思えば、2等席(~19列)と変わらない
料金(2,800円)に、ちょっと、納得が行きませんけれど。
☆
14時開演の第2部(名作劇場)は、「仮名手本
忠臣蔵」(5~7段目)――五段目=山崎街道
出合いの段/二つ玉の段、六段目=身売りの
段/早野勘平腹切の段、七段目=祇園一力
茶屋の段となります。「七段目」は落語の演目
として熟知しているような気がしますし、各所で
どこかで耳にしたような名科白がぽんぽん飛び
出してくるので、何を考えなくとも、面白くて。
例えば、「勘平早まりし」、「手を出して、足を
戴く蛸肴」、「さて錆びたりな赤鰯」、「道理で、船玉様が見える」、「勘平は、勘平
で、やつぱり勘平だわい」。床に太夫が居並んで語り、場の登場人物ごとに太夫が
入れ替わるのも、見ていて飽きなかったです。大星由良助は豊竹呂太夫、おかるが
竹本津駒太夫、九太夫が竹本三輪太夫、力弥が豊竹咲寿太夫でした。呂太夫は
ふらふらした腑抜け状態から義士モードへの切り替えが格好良かったなあ、うん。
☆
例によって、冷静に脚本の子細を考えてみるならば――猪と誤って人を撃った勘平は、
その場で即刻、被害者の人品骨柄を改めようよ、と。懐を探り、財布だけを奪い取る
時点で、顔やら体格やらチェックしてしまうものではないかな? 山崎に在るおかるの
実家に運び込まれてきた与市兵衛の死骸も、「殺された」と言いながら、死因について
誰も触れない不自然さ。ようやく、「鉄砲傷には似たれどもこれは刀で抉(えぐ)つた
傷」と看破する千崎弥五郎にして、勘平が腹を切った後のことだから、確認の順番が
おかしくない? 遅いのは弥五郎の方でしょ、と突っ込みながら観るのは、楽しいです。
☆
早野勘平を遣っていたのは吉田和生。女房おかるは吉田一輔。二つ玉の段だけの
出番ですが、『東海道四谷怪談』との関連から、斧定九郎には個人的に注目。
その父、斧九太夫(人形は桐竹勘壽)も三輪太夫の語りも与って、存在感が抜けて
いました。大星由良助の桐竹勘十郎も流石でしたが、何と言っても、祇園一力茶屋の
2階のみ、ピン・ポイントで女房おかるを遣った吉田簑助が物凄かったです。2階から
由良助を見遣る場面ですから、下半身が隠れ、上半身の動きに視線が集中するので、
主遣いの技量が全て。息を呑みましたよ。梯子を下りるところで、一輔に代わりました。
贔屓ということもないのですが、ぼくは吉田玉勢を応援していて、今回は千崎弥五郎
でした。舞台に上がっている時間は長いけれど……同世代くらいの人形遣いの役回りも
気になりまして、吉田玉翔が大星力弥、吉田玉助が寺岡平右衛門(=おかるの兄)
……どんな役でも大事なのは承知していますが、良い役が付くと、やはり嬉しいので。
「夏休み文楽特別公演」第3部のチケット入手は楽勝
でしたのに、第2部は全席完売、売り切れ。国立文楽劇場
開場35周年記念の“通し狂言”ですものね。仕方ないか。
でなくとも、昔から根強い忠臣蔵人気もあるでしょうし。
しかし、諦めません。千穐楽まで間も無い7月30日(火)、
開館となる10時前から、大阪メトロ・堺筋線で日本橋へ急げば、
既に、劇場前に(親子連れを含め)行列が出来ていて、びっくり。
それでも、どうにか、当日・第2部の補助席(追加のパイプ
椅子席)を押さえられて、一安心。胸を撫で下ろしたのです。
座り心地や窮屈さを思えば、2等席(~19列)と変わらない
料金(2,800円)に、ちょっと、納得が行きませんけれど。
☆

忠臣蔵」(5~7段目)――五段目=山崎街道
出合いの段/二つ玉の段、六段目=身売りの
段/早野勘平腹切の段、七段目=祇園一力
茶屋の段となります。「七段目」は落語の演目
として熟知しているような気がしますし、各所で
どこかで耳にしたような名科白がぽんぽん飛び
出してくるので、何を考えなくとも、面白くて。
例えば、「勘平早まりし」、「手を出して、足を
戴く蛸肴」、「さて錆びたりな赤鰯」、「道理で、船玉様が見える」、「勘平は、勘平
で、やつぱり勘平だわい」。床に太夫が居並んで語り、場の登場人物ごとに太夫が
入れ替わるのも、見ていて飽きなかったです。大星由良助は豊竹呂太夫、おかるが
竹本津駒太夫、九太夫が竹本三輪太夫、力弥が豊竹咲寿太夫でした。呂太夫は
ふらふらした腑抜け状態から義士モードへの切り替えが格好良かったなあ、うん。
☆
例によって、冷静に脚本の子細を考えてみるならば――猪と誤って人を撃った勘平は、
その場で即刻、被害者の人品骨柄を改めようよ、と。懐を探り、財布だけを奪い取る
時点で、顔やら体格やらチェックしてしまうものではないかな? 山崎に在るおかるの
実家に運び込まれてきた与市兵衛の死骸も、「殺された」と言いながら、死因について
誰も触れない不自然さ。ようやく、「鉄砲傷には似たれどもこれは刀で抉(えぐ)つた
傷」と看破する千崎弥五郎にして、勘平が腹を切った後のことだから、確認の順番が
おかしくない? 遅いのは弥五郎の方でしょ、と突っ込みながら観るのは、楽しいです。
☆
早野勘平を遣っていたのは吉田和生。女房おかるは吉田一輔。二つ玉の段だけの
出番ですが、『東海道四谷怪談』との関連から、斧定九郎には個人的に注目。
その父、斧九太夫(人形は桐竹勘壽)も三輪太夫の語りも与って、存在感が抜けて
いました。大星由良助の桐竹勘十郎も流石でしたが、何と言っても、祇園一力茶屋の
2階のみ、ピン・ポイントで女房おかるを遣った吉田簑助が物凄かったです。2階から
由良助を見遣る場面ですから、下半身が隠れ、上半身の動きに視線が集中するので、
主遣いの技量が全て。息を呑みましたよ。梯子を下りるところで、一輔に代わりました。
贔屓ということもないのですが、ぼくは吉田玉勢を応援していて、今回は千崎弥五郎
でした。舞台に上がっている時間は長いけれど……同世代くらいの人形遣いの役回りも
気になりまして、吉田玉翔が大星力弥、吉田玉助が寺岡平右衛門(=おかるの兄)
……どんな役でも大事なのは承知していますが、良い役が付くと、やはり嬉しいので。
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