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仁鶴の食卓

戸田学の『随筆 上方落語 四天王の継承者たち』第2章は、
「爆笑王 枝雀と仁鶴」。現在、過小評価され過ぎと思われる
笑福亭仁鶴に光を当てているのは流石です。その仁鶴が
桂米朝からも稽古をつけてもらっていたと知り、意外でした。
       ☆
 『池田の猪買い』という演目は、桂米朝から仁鶴、枝雀が一緒に並んで教わった演目である。桂米朝自身は、五代目笑福亭松鶴から唯ひとりこの噺を伝承され、それによってこの名作は後世に残ることとなった。落語の中で、山猟師の六太夫が「猪之(いの)よ」と息子を呼ぶシーンがある。仁鶴も枝雀も両眼を寄せて、「う~ん!」と猪之が顔を突き出し、それぞれに漫画的な可笑しさを誘うのが印象に残る。
 仁鶴は『池田の猪買い』のマクラで、子ども時代のエピソードを披露した。それ自体がそのまま上方落語の世界であった。

       ☆
その枕は、仁鶴の幼い頃の家族での夕食風景。
ご馳走であった牛肉のすき焼きが食卓に上ると、
一体、如何なる事態が勃発するのか? 焼き豆腐
ばかりか、糸こんにゃくも登場していますよ。
       ☆
十二、三人の家族が……私とこ八人兄弟でしたから家族多かった。こんな(自分の顔を指し)型ばっかり八つありましたんや。この十二、三の家族がやねえ、一つのすき焼きの鍋をとり囲んでるんやなんていうのは、そら……和やかな中にも緊張感がありました。ニコニコ笑いながら食べてるけど、目ェだけは、肉離さへん。横向いて、ホッと見たら、もうあらへんねやから。もう見つけたら自分のは自分で手前へ引き寄せないかん。この作業を怠ると家の中で餓死すんねやから。高等技術がいります。ネギの中へ包み込んで持ってきたり。焼き豆腐の横へ引きずって持ってきたり。ある程度溜まりますと、これが敵方に発見されんようにせないかん。そのために肉の前に壁をこしらえます。壁の材料が東京ネギであったり、糸こんにゃくであったり、焼き豆腐であったり。肉の前に万里の長城みたいなもんが出来る。いよいよ肉の塊に箸つけようかな~ッと思たら、母親も心得たもんで、鍋クルッと回した。空切った箸で太もも突いたことありましたけど……。

参考文献:戸田学『随筆 上方落語 四天王の継承者たち』(岩波書店)
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テーマ : 落語
ジャンル : お笑い

tag : 落語豆腐こんにゃく

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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