fc2ブログ

春の帯解寺

 かねての予定どおり、母子は月修寺へ暇(いとま)乞いに行き、そこで一泊してから、東京へかえるのである。二人は十一月十八日の午(ひる)さがり、桜井線帯解(おびとけ)の駅に下り立った。まことに美しい小春日和で、黙っている娘を憚(はばか)りながらも、伯爵夫人の心は和んだ。
 老尼を煩
(わずら)わさぬために、着く時刻は知らせてなかったので、駅の人にたのんで俥(くるま)を呼んでもらったが、俥はなかなか来なかった。待つあいだ、夫人は何を見るにつけても物めずらしく、娘は一等待合室に残して物思いに耽るに委(まか)せ、人気のない駅の周辺をそぞろ歩いた。
 すぐ目についた立札は、近くの帯解寺の案内であったが、
「日本最古安産求子祈願霊場。
 文徳
(もんとく)・清和両帝、染殿(そめどの)皇后勅願所。
 帯解子安地蔵、子安山帯解寺」
 とある文字が聡子の目にふれないでよかったとまず思った。

       ☆
三島由紀夫『春の雪 ―豊饒の海・第1巻―』の終盤、
綾倉聡子が母と身を隠す「月修寺」の所在地が、奈良市は
帯解寺」の辺りという設定。4年ほど前に訪ねたことがあり、
懐かしくなりました。月修寺という名称では存在しませんが、
モデルとなったのが“大和三門跡”の一つ、「圓照寺」です。
本尊は木造如意輪観音像。基本的に拝観は無理ですねえ。

参考文献:三島由紀夫『豊饒の海(一) 春の雪』(新潮文庫)
スポンサーサイト



テーマ : 仏教・佛教
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 小説

カレンダー
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
Access Counter
総閲覧者数:
Online Counter
現在の閲覧者数:
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリー
プロフィール

ぽか

Author:ぽか
⇒ 旧プロフィール

歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
フードビジネス・コンサルタント
(自称)。
好きな言葉は「ごちそうさま」。

リンク
月別アーカイブ
検索フォーム
Amazon
QRコード
QR
RSSリンクの表示
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メルマガ登録はこちらから
購読希望者はメール・アドレスを書き入れて「送信」してね!
SOUKEN