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歌仙/川端/三島

『歌仙はすごい』を読んでいると、シンクロニシティ。
先月、『女ざかり』を読んだばかりのところに、
丸谷才一(1925~2012)の話がわんさか出てきたとあれば、
『闊歩する漱石』「横しぐれ」も一読しておかねば。
ところで、辻原登永田和宏長谷川櫂の3人で巻く
歌仙において、俳優の寺田農(みのり)の加わった会があり、
会場となった江ノ島のヨット・ハーバーの対岸に、厨子
マリーナが見えることから、まさかの川端康成先生ネタ!
       ☆
 寺田 川端先生といえば、昔、僕が若い頃ですがね。市川雷蔵さんの映画に出るために京都に行っていた時、ちょうどノーベル賞を獲った直後の川端先生が京都に来られたんです。京都に「芳子バー」という有名なバーがあって、そこに川端先生がお見えになった。我々はそのへんで飲んでいたんだけれど、知り合いが芳子バーの常連だったものだから、「君もついてこい」となって、行ってみたら、先生が上機嫌で揮毫されている。羽織袴でね。みんな色紙を持って書いていただくのを待っているんです。そのうちに僕も「何でも好きな字を書いてもらえるから、君も何か書いてもらいなさい」と言われた。それで、僕は色紙を貰って、「嘘って書いてください」と言ったんです。
 辻原 えっ。そうしたら? 
 寺田 そうしたら、川端先生はギロっと、凄い目で僕を見た。しまった、しくじったかなと思ったら、先生は「嘘という字は嫌いです」とおっしゃって、口という漢字を大きく書いて、その中に「虚」と書いて、「康成」と。

       ☆
 寺田 川端先生つながりで、もう一つ思い出したんだけど、僕は初舞台が三島由紀夫先生の『十日の菊』(一九六一年)だったんです。抜擢だと言われたんだけど、四十五日も稽古に出させられるし、演出家には怒鳴られるし、大学にも行けないし。そもそも僕はたまたま文学座に入っちゃっただけで、やる気もなかった。だけど、初日が開いたら、三島さんが絶賛してくれて、パンフレットに「祝 初舞台 良かった」と書いてくださった。三島さんらしい綺麗な字でしたね。だけど、それもすぐどっかに行っちゃうんだ(笑)。残っていない。

参考文献:辻原登、永田和宏、長谷川櫂『歌仙はすごい』(中公新書)
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ジャンル : 小説・文学

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
フードビジネス・コンサルタント
(自称)。
好きな言葉は「ごちそうさま」。

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