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ふすだしう

 地下室といっても、ただ周囲の壁をま新しい明るい漆喰で塗っただけの、小さな穴倉のような部屋で、テーブルは四つしかなく、そのうちの一つが客でふさがっていたが、彼らの食事もすでに終わりに近づいていた。壁には壁画のように、イタリア名産物案内の地図が描かれていた。バニラやイチゴやふすだしうのような、淡い色調の絵であった。
       ☆
 澁澤龍彦・訳 『O嬢の物語』から引用。「ふすだしう」には
傍点が振られていましたが、一読、何を指しているのか、
全く見当がつきません。調べてみると、『旧約聖書』
(創世記)第43章に、用例を見つけることが出来ました。
       ☆
 父イスラエルは彼らに言った、「それではこうしなさい。この国の名産を器に入れ、携え下ってその人に贈り物にしなさい。すなわち少しの乳香、少しの蜜、香料、もつやく、ふすだしう、あめんどう。
 そしてその上に、倍額の銀を手に持って行きなさい。また袋の口に返してあった銀は持って行って返しなさい。たぶんそれは誤りであったのでしょう。
 弟も連れ、立って、またその人の所へ行きなさい。
 どうか全能の神がその人の前であなたがたをあわれみ、もうひとりの兄弟とベニヤミンとを、返させてくださるように。もしわたしが子を失わなければならないのなら、失ってもよい」。

       ☆
「ふすだしう」とは、ピスタチオ。ちなみに、「あめんどう」は
アーモンドを指します。『O嬢の物語』が凡百のポルノグラフィー
とは一線を画し、秘教的な聖女伝に類する内容であったことを
訳語のセレクトによって示す 澁澤の技量と言うべきでしょう。

参考文献:ポーリーヌ・レアージュ『O嬢の物語』(河出文庫)
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たまに「考える人」、歴史探偵。
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