バケモン
7月9日(金)、「なんばパークスシネマ」(シアター9)に出掛け、
16時35分から、山根真吾・監督のドキュメンタリー映画 『バケモン』
(2021)を鑑賞しました。複合施設「なんばパークス」は、かつての
「南海ホークス」の本拠地であった「大阪スタヂアム」=通称
「大阪球場」(1950~1998)の跡地において、2003年10月7日に
開業(第1期部分)。建物の設計は、Jon Jerde。ぼくが学生時代に
観た「大阪球場」でのロッテVS南海戦や、鶴橋で働いていた頃の
半ば放置されていた球場跡のことなど、何やかやと思い出されて……
映画の主役は、笑福亭鶴瓶。映像の一部は、「芸文センター」でも
目にしています。午前中、落語界の席の予約で、「味わい企画」に
連絡を入れたところ、桂文鹿さんに直接対応されまして、直後に、
「東方見文鹿」の記事を拝見。「崖から突き落とされるくらい、凄い
映画」と仰られるならば、その1時間59分59秒を目に焼き付けて
みようではないか、と。ナレーションは香川照之。監督が2004年から
自主製作で、「らくだ」という大ネタに取り組む鶴瓶を撮影してきた
という触れ込みではあります。山根真吾はテレビ番組の構成演出家
であり、そこに鶴瓶のマネジメントを手掛ける千佐隆智が絡んできて、
よくわからない生煮えの状態で供された観はあります(だが、それが
いい)。鶴瓶という個の噺家を超えて、師の笑福亭松鶴(6代目)や、
「らくだ」を完成させた桂文吾(鶴瓶が墓参を欠かさなかった3代目
ではなく、正しくは4代目という落ちも有り)に遡っていく筋は、鶴瓶と
いう得難いタレントに導かれて来た観客を途方に暮れさせるかも
しれませんが、「死ぬまで世に出したらあかん」と本人が念押しした
映像(の一部)を韜晦させる役割を担っているとも言えますし、もしか
すると、本当の主役は鶴瓶でなくて、6代目・松鶴であり、(実際に、
ナレーションで「バケモン」呼ばわりされている)4代目・桂文吾――
に至る “化け物”的な噺家の系譜を継ぐ者たちなのでしょう。文学的に
言えば、「呪われた詩人たち」の係累です。亡き師匠への敬慕の念も
強烈ですが、兄弟弟子の笑福亭松喬、鶴志らへの哀惜の念にも、胸を
締め付けられます。落語を通して、つながっている感が半端なくてね。
だからこそ、時代を超え、4代目・桂文吾(1865~1915)とリンクする
シンクロニシティ。笑福亭鶴瓶もまた、一人の“バケモン”であったか
どうかは、亡くなった後、はっきりとするでしょうから。そのためには、
生きている(ぼくらのうちの)誰か、生き残ってくれるであろう誰かが
見届ける必要があります。そうやって、物語は延命していくのです。
16時35分から、山根真吾・監督のドキュメンタリー映画 『バケモン』
(2021)を鑑賞しました。複合施設「なんばパークス」は、かつての
「南海ホークス」の本拠地であった「大阪スタヂアム」=通称
「大阪球場」(1950~1998)の跡地において、2003年10月7日に
開業(第1期部分)。建物の設計は、Jon Jerde。ぼくが学生時代に
観た「大阪球場」でのロッテVS南海戦や、鶴橋で働いていた頃の
半ば放置されていた球場跡のことなど、何やかやと思い出されて……
映画の主役は、笑福亭鶴瓶。映像の一部は、「芸文センター」でも
目にしています。午前中、落語界の席の予約で、「味わい企画」に
連絡を入れたところ、桂文鹿さんに直接対応されまして、直後に、
「東方見文鹿」の記事を拝見。「崖から突き落とされるくらい、凄い
映画」と仰られるならば、その1時間59分59秒を目に焼き付けて
みようではないか、と。ナレーションは香川照之。監督が2004年から
自主製作で、「らくだ」という大ネタに取り組む鶴瓶を撮影してきた
という触れ込みではあります。山根真吾はテレビ番組の構成演出家
であり、そこに鶴瓶のマネジメントを手掛ける千佐隆智が絡んできて、
よくわからない生煮えの状態で供された観はあります(だが、それが
いい)。鶴瓶という個の噺家を超えて、師の笑福亭松鶴(6代目)や、
「らくだ」を完成させた桂文吾(鶴瓶が墓参を欠かさなかった3代目
ではなく、正しくは4代目という落ちも有り)に遡っていく筋は、鶴瓶と
いう得難いタレントに導かれて来た観客を途方に暮れさせるかも
しれませんが、「死ぬまで世に出したらあかん」と本人が念押しした
映像(の一部)を韜晦させる役割を担っているとも言えますし、もしか
すると、本当の主役は鶴瓶でなくて、6代目・松鶴であり、(実際に、
ナレーションで「バケモン」呼ばわりされている)4代目・桂文吾――
に至る “化け物”的な噺家の系譜を継ぐ者たちなのでしょう。文学的に
言えば、「呪われた詩人たち」の係累です。亡き師匠への敬慕の念も
強烈ですが、兄弟弟子の笑福亭松喬、鶴志らへの哀惜の念にも、胸を
締め付けられます。落語を通して、つながっている感が半端なくてね。
だからこそ、時代を超え、4代目・桂文吾(1865~1915)とリンクする
シンクロニシティ。笑福亭鶴瓶もまた、一人の“バケモン”であったか
どうかは、亡くなった後、はっきりとするでしょうから。そのためには、
生きている(ぼくらのうちの)誰か、生き残ってくれるであろう誰かが
見届ける必要があります。そうやって、物語は延命していくのです。
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