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アール・ヌーボー

モダン・アートの源泉としての“アール・ヌーボー”について、
見取り図(海図)とも言うべき文章の一節を引いておきます。
       ☆
 アール・ヌーボーは絵画・彫刻といった純粋芸術よりも建築、応用芸術を中心とした不純性のうちに存在し、近代の妄執につかれている。近代の妄執とはあらゆるものが互に照応しあい、孤立した現象が成立不可能となっていることである。
       ☆
 照応性相対性象徴主義(サンボリスム)が近代の原理である。(中略)芸術においてはもちろんボードレールが照応の美学をつくりだそうとする。ことばとことば、ことばとイメージ、文学と音楽、文学と絵画はひびきあい、あらゆるジャンルは照応する。
       ☆
アール・ヌーボーは純粋芸術としてよりも装飾芸術として、絵画、彫刻よりも建築・工芸を中心としている。それは世紀末の造形芸術の全面をおおっているわけではない。ここでアール・ヌーボーと同時代の造形芸術との関係にふれよう。十九世紀は絵画の優位の時である。ディドロが美術批評の父とされるのは、その『サロン』によってであり、十八世紀後半からすでに絵画の優位が始まっている。建築は十七世紀のバロック時代が終ると衰弱し、十九世紀には混乱した折衷様式になってしまう。十九世紀後半の美術史は絵画史の内在的発展として語られる。世紀末芸術アール・ヌーボーは印象派、後期印象派、フォービスム、キュービスムという流れからはみだしてしまう。現代がアール・ヌーボーを近代芸術の歴史に組入れようとするのは、十九世紀の絵画の優位が崩れ、二十世紀は建築・デザインが中心となっていること、アール・ヌーボーはこの座標変換のさかい目に位置していることからきている。印象派からキュービスムへの近代芸術はすきまなく連続しているように見えるが、よく見るなら、かなりの空白があり、世紀末にはヨーロッパのいたるところに、この流れに入らずに、例外的に孤立している現象がある。

参考文献:海野弘『アール・ヌーボーの世界』(中公文庫)
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ジャンル : 小説・文学

tag : 美術

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