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商船三井ビルと郵船ビル

2017_12_22_商船三井ビルディング
2017_12_22_神戸郵船ビル
 どちらの格が上だといった俗な話ではない、
 と先にお断りしておきます。過日、再訪した
 神戸市・海岸通りの近代建築2件について、
 非常にわかりやすい解説が、心に残った
 ものですから。マックス・ウェーバー
 理念型のように受け取ればよいでしょう。
        ☆
 藤森照信先生も、渡辺節(1884~1967)の
 アメリカンボザール第1作となる「大阪商船
 神戸支店
(=商船三井ビルディング)」に
 ついては、「マッキム・ミード&ホワイトと
 比しても遜色ない力量を持っていた
」と
 賞賛を惜しみません。が、わが国における
 歴史主義の到達点として、アメリカ派だけで
 なく、“ヨーロッパ派”を引き合いに出す以上、
 違いについても触れておかねばなりません。
 中條精一郎(1868~1936)はケンブリッジ
 大学に学び、帰国後、曽禰達蔵と組んで
 曽禰中條建築事務所を立ち上げました。
大正~昭和(戦前)を代表する民間設計事務所ですけれども、下野したジョサイア・
コンドル
の下で働いていたのが曽禰ですから、質・量いずれにおいても、高評価を
受けた用途様式主義の中でも、イギリス系では追随を許さなかったのも当然か、と。
       ☆
 どんな様式を様式を選ぶ場合でも、けっして自分たちの味を忘れることはなく、たとえば郵船ビル(画像下、大正12年)のようなアメリカ式オフィスの場合でも、渡辺節の大阪商船神戸支店(画像上、大正11年)と壁面の表情をくらべると分かるが、アメリカンボザールふうの彫りが深くて豪華で大味な印象は巧みに避け、平明で緻密で堅実な印象を得ている。設計を担当した徳大寺彬麿が、当初、最上階の窓をアーチにして左右の付け柱との関係が大味になってしまい行き詰ったのを中村順平が直して緻密さを回復したのだという。事務所の作風はイギリスの堅実さを旨とし、建物の表情に品がないことが一番嫌がられた

参考文献:藤森照信『日本の近代建築(下)』(岩波新書)
       ☆
今更ながらに、中條精一郎の長女が宮本百合子
と知って、ぼくはショックを受けてしまっているのですけれども。
作風から何から、全く興味を持ち得ない小説家だったのになあ。
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テーマ : 建築
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 近代建築小説

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たまに「考える人」、歴史探偵。
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