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アルカリで固める

食品添加物の安全性が問題視されて久しいが、中には歴史的にも長く使われていることから安心感を持たれている添加物もあり、そういった添加物は得てして個々の食品加工において不可欠である場合が多い。

例えば、豆腐を固めるにがり(塩化マグネシウム)、羊羹などを作る寒天、そしてこんにゃくを固める水酸化カルシウム。水酸化カルシウム[=Ca(OH)2]とは、『広辞苑(第5版)』を引くと「酸化カルシウム(生石灰)に水を加えて製する白色の粉末。水溶液からは無色の結晶が得られる。わずかに水に溶解する。飽和水溶液を石灰水という。さらし粉・漆喰などの製造、土壌中和剤・殺虫剤・医薬品に用いる。消石灰・水化石灰」とある。日ごろ口にする大多数の食品は酸性を示すのだが、極めてまれな例として、こんにゃくがアルカリ性を示すのは、この水酸化カルシウムの働きによる。

こんにゃくを食べ始めた初期(文献上では平安時代とされる)は、もっぱら芋こんにゃくとして食用に供されたようだが、江戸時代後半に荒粉・精粉加工法が開発され、「粉こんにゃく」の普及によって、こんにゃくの需要はケタ違いに増加したと思われる。この際の中島藤右衛門の活躍については、武内孝夫著『こんにゃくの中の日本史』に詳しいが、芋こんにゃくであれ、粉こんにゃくであれ、その主要成分であるグルコマンナンを固めるのが、アルカリの水酸化カルシウムとなる。

コンニャクマンナンは、グルコースとマンノースが結合したグルコマンナンであり、水による膨潤性がきわめて大きく、水を加えると糊状になって強い粘性を示す。これにアルカリを加えると、抱水したままでかたまり、膨潤性を失う。これはアルカリ処理をすることにより、エステル状に結合したコンニャクマンナン分子のアセチル基が脱離し、化学的な構造変化が起きるためである。アセチル基の脱離は、コンニャクマンナンのゲル形成に必須の反応である。コンニャクの食品加工は、このようなマンナンの性質を応用したものである

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参考文献:群馬県農業改良協会『最新 こんにゃく全書 ― 栽培・経営・流通・加工 ― 』
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