ル・コルビュジエと黒人音楽

ル・コルビュジエ(1887~1965)は、ニューヨークの近代美術館から招かれ、
1935年、初めて米国を訪れました。その際の3か月弱の米国印象記が
『伽藍が白かったとき』であり、第二次世界大戦前に出版されています。
建築史に関する重要な問題に触れているのは当然のことながら、
ぼくが瞠目するのは、黒人音楽に関する優れた洞察力でした。
1935年の時点において、ということで、一際、唸らされることになります。
       ☆
「黒人音楽は機械のリズムと結びつけた魂のメロディであるがゆえに、アメリカに響いたのである。それは二様の時間をもつ。一方では心のなかに涙を、他方では足・胸・腕そして頭をふり動かすという二つの様相を。革新的な、建設の時代の音楽。これは肉体と心を浸し、アメリカに溢れ、さらに世界に溢れる」
       ☆
心と身体を分離したままで、感じさせ、動かす力が、“黒い音”には潜んでいます。
分裂している事態は近代の産物であるにせよ、そこから活力が生成するのです。
機械のリズムと結び付いた魂のメロディ……それは後年に至るほど、即物的に。
例えば、打ち込み時代のマーヴィン・ゲイミネアポリス勢を含むシンセ・ファンク、
ハウス、あるいはニュー・ジャック・スウィング、そしてヒップホップという手法。
何故に、無機的なものと、最も熱い(暑苦しい?)とが手を取り結ぶのか? 
熱いマグマを抱える者のみが、“クール”という存在様式を取れるからです。
       ☆
「ブロードウェイのルイ・アームストロングの音楽を聴こう。彼は叫喚、雰囲気、爆発的笑い、雷鳴の黒い巨人だ。彼はうたい、咆える。彼は銀のトランペットをほとばしらせる。彼は数学であり、綱わたりの平衡である。彼はシェークスピア的である! どうしてそうでないことがあろうか」
       ☆
自由奔放なパフォーマンスを支えるものは、実に、非情な“正確さ”なのです。
機械しか持ち得ない超自然的な正確さ……強靭さ、速度、残忍さが物を言います。
かつて“人間的”と考えられた事象を超えた先で、次代の感覚が涵養されるはず。
       ☆
「ブロードウェイでもハーレムでも、黒人のオーケストラはすこしの欠点もなく、完璧で、規則的で、上昇するリズムでたえまなく演奏する。トランペットの音は鋭くえぐるようで、かん高く、足踏みならす音の上にきいきい叫ぶ。それは人間の会話の真只中で流れる美しいタービンと対比的な合符である。ホット・ジャズ
ジャズは摩天楼と同じく一つの事象であって、よく考え練られた創造物ではない。これらは今日のを代表している。ジャズは建築よりもっと進歩している。もし建築がジャズの到達した点にあるなら、それは信じられない光景を呈するだろう。私は繰返して言おう、マンハッタンは石と鋼のホット・ジャズである、と」


参考文献:ル・コルビュジエ『伽藍が白かったとき』(岩波文庫)
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ジャンル : 音楽

tag : 近代建築 黒い音

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小説的に言うと、
石、鉄、コンクリートを描くことで
魂を表現してみろよ、と。
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通りすがりの夢想家。元(にして最後の)「トーヨー新報」編集人。現在は、一介の編集素浪人?



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