夏の千穐楽

「国立文楽劇場」へ移動。本年度「夏休み
文楽特別公演」の鑑賞で、ちょうど千穐楽に
当たっていました。第2部(名作劇場)は既に
観ており、今回は18時15分開演のサマー
レイトショーを愉しみました。演目は「新版
歌祭文」野崎村の段、「日本振袖始」大蛇
退治の段です。鑑賞前に床本等を一読して
いたので、常よりも舞台上の一挙手一投足
することが出来ました。お夏/清十郎の道行きを下敷きに、お染/久松の心中へ
至る経緯が描かれる「新版歌祭文」で、野崎村の段はお染に恋を譲り、仏門に入る
久松の許婚・おみつに焦点が当てられます。結末は知れているので、支障は無い
にせよ、この段だけ聴くと、久松に都合の良い展開に思えて仕方がありません。
久松の在所を訪ねてきたお染と、おみつの応酬が笑えます。また、親・久作の
持つ(山の芋の入っていたとされる)藁苞が、納豆の藁苞に見えて困りました。
「日本振袖始」は、岩長姫のかしら=角出しのガブが良いですね。毒酒を仕込んだ
8つの壺がセッティングされますが、大蛇の首は4つしか登場しない仕様。
しかし、稲田姫より、岩長姫の衣装の“鱗文”に目を奪われていて、ほとんど直喩
として作用する 古典芸能における“象徴”機能が羨ましいような気にもなりました。
(どうでもいいことですが、ぼくは大蛇好きで、大蛇物の映画作品も随分と観ています)
刀剣マニアならば、十握(とつか)の宝剣(≒天の叢雲の剣)、蝿斬(はばきり)の名剣に
惹かれてしまうかなあ。因みに、外題にもある「振袖」という言葉の由来ですが、
大蛇を刺せと、素戔嗚尊(すさのおのみこと)が稲田姫に預けた蝿斬の御剣に対して、
「姫は脇明(わきあけ)の袖に太刀を一振(ひとふり)忍ばせ給ふ。脇明を振袖とは
この時よりぞ始まりける」と註されています……突っ込んだ方が負けです。
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