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もやし工場・イン・ニューヨーク

主演作『レスラー』(ダーレン・アロノフスキー監督)が2008年の「第65回ヴェネツィア国際映画祭」で金獅子賞を受賞し、本格的復活を確信させた米国の俳優、ミッキー・ロークは1980年代に絶大な人気を博していた。映画デビュー後も批評家受けはしていたが、一般受けの端緒となった作品はやはり『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(1985年)だろう。監督は『ディア・ハンター』(1978年)で知られるマイケル・チミノ。「第51回アカデミー賞」などを獲得した同作はベトナム帰還兵の悲劇を描いたものだが、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』でミッキー・ロークが演じる主人公、スタンリー・ホワイトもまた、ベトナム帰りのニューヨーク市警刑事という設定だ。

着任したばかりのニューヨーク市では、イタリアン・マフィアと中国(香港)マフィアが暗闘を繰り広げ、そのチャイニーズ・マフィアを率いる若きボス、ジョーイ・タイ(演じるはジョン・ローン)とスタンリーが激突する。チャイナ・タウンを陰で支配するマフィアの物語に対して、他のチャイナ・タウンでまっとうな生活を営む中国(系米国)人から非難の声も上がったが、そんな階級間(持てる者と持たざる者……端的には世代間)の闘争は作品内でもほのめかされている。

ジョーイ・タイは組織内での己の発言力を高めるため、配下の鉄砲玉を2人、覆面姿で長老のレストランを襲撃させた。首謀者は対抗組織だと言いくるめるが、まずいことに銃撃に当たった兄弟は負傷して、人目に立ち過ぎる。定石として、用済みとなった若い兄弟2人は口封じのために消されてしまうのだが、死体は何ともやし工場の水槽に廃棄されていた。ビルの所有者は香港に住んでいるらしく、連絡が取れず。その「in a basement(地下、地下室、地階)」では、どろどろになった中国人労働者の群れがうごめいている。黄褐色に汚れた水はもやしを栽培するもので、水揚げされた兄弟の死体には何やらびっしりと白いものがへばり付いており、それがもやしだった。

日の差さないもやし工場で40年以上も働いてきた老中国人は、旧世代の勤勉さを誇らしげに語り、手段を選ばない非合法な活動にいそしむ新世代を痛罵する。スタンリーは「モヤシ工場で死体を発見した」とジョーイ・タイを問い詰め、彼の野望をくじこうと執念を燃やす……。ちなみに日本語字幕にある「モヤシ工場」に該当する単語は、英語(字幕)で見当たらなかった。米国人には、一目でもやし工場と判別できたのだろうか? 

参考映像:マイケル・チミノ監督『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)
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たまに「考える人」、歴史探偵。
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