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タイムトラベル大阪

2018_10_09_逆櫓の松跡 前夜から泊まり込みの夜勤業務に入り、10時過ぎに
 引き継ぎを完了して帰宅。仮眠を取った後、図書館で
 借りている資料を進めるのでした。読書は苦痛でなく、
 活字を拾い読むのは、ぼくの純然たる愉しみですから。
 以下、小松左京『タイムトラベル大阪』(『大阪タイム
 マシン紀行』の改題)から、気になる個所の抜粋です。
        ☆
  戦前まで、人口に膾炙(かいしゃ)していた「源平の
 古戦場」のほとんどは、京都山城を中心に、
 摂津、近江につらなっていて、河内、和泉、
 大和のほうは「表」の歴史に対して落人の末路を
 哀れにうたった「裏」の物語の舞台として、後世の
記憶につたえられた。――大阪市内で、ただ一つ、合戦故事のよすがと
いえそうなものといえば、「逆櫓
(さかろ)の松」あとぐらいであろうか。
 福島区の公設市場あたりを、なにわ筋からちょっと西にはいった所の
ビルとビルのはざまに、何代目かの松が、今もひょろりと立っているのは
殊勝のかぎりであるが、もとよりこれは浄瑠璃、歌舞伎ファンには先刻
御案内の如く、十八世紀中葉、文耕堂、三好松洛らの作で、竹本座で
当たりをとった人形浄瑠璃「ひらがな盛衰記」三段目の切
福島逆櫓松の場」にあてこんでのことであろう。

       ☆
『平家物語』等で、源義経と梶原景時が、屋島の合戦を前に、
船を前後進できる逆櫓を舳先に付けるかどうかについて、
軍議の評定を行ったとされるのが、松の木の下であったとか。
兄との確執から、後の無い義経としては、前進を主張するしかなく……。
現在、大阪市福島区福島2-2-4に「逆櫓乃松址」が建っていますが、
松の木自体は、近代に入る以前から、とっくに枯れていたそうです。
「ABCホール」を含む、隈研吾・設計の「朝日放送新社屋」(2008)も間近。
       ☆
 その(源頼光の四天王の筆頭、渡辺)綱の2018_09_29_渡辺橋
養母が摂津国西成郡渡辺の地にいたので、
渡辺氏を名のった。――ちなみにいえば、
渡辺橋は、大阪では仁徳帝のかけた
長柄橋に次いで古い橋で、現在の中之島に
かかる渡辺橋よりずっと東にあったらしいが、
これも九世紀はじめに名の見える「大江

(おおえの)御厨(みくりや)」あたりにかかった
大江橋とともに、大阪で最も古い橋名である。
むろん、いずれも現在その名の橋のかかるあたりとは、あった場所もずれて
いるが、朝夕、渡辺橋、大江橋をわたる北のサラリーマン、OL諸氏諸嬢は、
時に橋畔にたたずんで、千年の昔、その名の橋のかかっていたころの、
葦と洲と水禽魚族の難波の津を想像してごらんになるといい。

       ☆
「古い橋」やら「最も古い橋名」やら、記述内容自体に
揺らぎが窺えますが……最も古い橋と言うならば、
つるのはし」(⇒鶴橋)ではないか、と思います。
また、大江橋(~淀屋橋)、渡辺橋(~肥後橋)も
日中は勤め人の往来が激し過ぎるので、橋を眺めながら、
歴史に思いを馳せたいのであれば、「水晶橋」から大江橋、
中之島ガーデンブリッジ」から渡辺橋を見遣るのがお勧め。
       ☆
 この(京都市伏見区)淀の周辺に、大山崎油座、石清水八幡麹座など、
「加工生産」の一種のカルテルが、すでに平安末期から発達した。
――とくに、淀の西南、天王山西麓にできた大山崎油神人のカルテルは
強力で、はるか近世初頭にまでその力を維持しつづけた。
 国鉄山崎駅、阪急大山崎駅の近くに「離宮八幡宮」という、日本でも珍しい
油の神様」が鎮座している。対岸の石清水八幡宮が、九州宇佐から動座
してくる時、いったんこの地にとどまったというのが縁起で、嵯峨帝のつくった
河陽
(かや)離宮あとが社地になったので、この名があるという。
が、この八幡社の神人は、油座をつくって、平安期から近世へかけて、
灯油、食料、加工用の荏胡麻
(えごま)の油を大和をのぞいて近畿一円に、
十三世紀初頭には、美濃尾張あたりまで、ほとんど一手で供給していた。
 荏胡麻は、ゴマと違ってシソ科の植物だが、この種を播磨、備前、
阿波、伊予、肥後から水路、陸路ここへ集荷し、油をしぼり精製して、
京、近江、東国へと販売する権利をもっていた。


参考文献:小松左京『タイムトラベル大阪』(ケイブンシャ文庫)
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ジャンル : 小説・文学

tag : 史跡建築文楽大豆

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たまに「考える人」、歴史探偵。
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