座禅大豆

安楽庵策伝(1554〜1642年)『醒睡笑』「巻之六」の内容は、児(ちご)の噂。天台・真言宗などの寺院には、児と称する童子がいた。僧侶の男色の対象とされ、「児(ちご)」は寵愛する少年の呼び名にもなったという。

同時代には、“児物語”と称する同性愛を綴った(現代で言うところのBLか)小説も出現している。もっとも、児の噂がすべて男色ネタということもなく、欲を張っての失敗談など、微笑ましい話柄にも事欠かない。

ある法師のもとより、二人おはして遊ばるる児のもとへ、座禅大豆を少し送りたりしことあり。大児(おおちご)嬉しげに手を出し、憚らずつかまんとしけるを、小児ちやくと手をとらへ、「そのやうに不得心な風情、陰より人の見る目をもかへりみ給へ」とて、箸を二膳とり来り、一膳を渡し、「大児役に、そなたは二粒づつおまゐれ。われは小児役に、一粒づつ給はらん」といふ。はさむに、大児はともすればはさみはづし、小児の矢さきはづれず、ほしりほしりと当りしことよ。

ある法師が2人の童子に座禅大豆を送り届けた。(年齢か、体格かはわからないが)大きな童子が喜んで、豆を手づかみに食べようとしたところ、小さな童子が邪魔をした。他人の目もあるかもしれないのに、そういう無作法な食べ方はよろしくないとたしなめる。なるほど、ごもっとも。手づかみで勢いよく食い散らかせば、大児の取り分が多くなるだろうとの、こすっからい計算を内に秘め。小児の提案は、箸で食べようというもの。しかも「大児は大きいのだから、1回に2粒ずつ(箸で摘まんで)頂く。自分は小さいから1粒ずつ頂こう」と。目先の得に心弾ませ、箸を伸ばす大児だが、2粒同時に豆は摘まめず。一方で、しっかりと狙いどおりに1粒ずつ豆を摘まんで食する小児なのだった。

「座禅大豆」とは、黒大豆を甘く煮しめた物。座禅の時に食べると小用を少なくする効用があるとのいわれから、この名前が付いたとか。現在もいくつかの国語辞典等に、「座禅豆(ざぜんまめ、ざぜまめ)」の名を確認できる。黒大豆は、大豆の豊富な健康機能性成分に加え、ポリフェノールの一種、アントシアニンも含まれるため、何かと効能は多く、古人も漢方として使用するなどしていた。夜間頻尿の改善にも役立つらしいから、座禅の際にも具合が良かったのだろう。

参考文献:安楽庵策伝『醒睡笑(下)』(岩波文庫)
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