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司馬遼の仏像

夏目漱石への或る種の苦手意識(諸作品は繰り返し、
何度も読み続けてきてはいますが)とまた異なり、
昭和のサラリーマンが好き好んだ司馬遼太郎は、
ぼくが忌避し続けてきた作家なのですけれど――。
磯貝勝太郎『司馬遼太郎の幻想ロマン』を読んだ後、
歴史小説でなく、幻想小説ならば、耐えられるのではないか?
高橋克彦的な伝奇ロマンの意味合いで)と思い立ち、
福田定一”時代も含め、初期の短編集に手を染めたところ、
これが滅法面白くて、参りました。修験道、密教、忍術など、
トピックスは多々あれ、今回は“仏像”ネタに絞って抜き出してみます。
       ☆
森の中に入ると、中央はひろびろと伐り拓かれ、丹の色も乾かぬ壮麗な伽藍が、輪奐を陽の中に輝かせていた。太秦広隆寺が、聖徳太子の別墅として秦一族から献上されたのはこのときである。献上の年代は、諸説があって今日ではもはや伝説の霧の中にある。安置された仏の一つは、釈迦入滅後五億年を経て地上を救済しようという仏教の中では最もシリア思想に近似した弥勒菩薩であった。ネストリウスの追放から発した流亡のキリスト教徒の信仰への意志は、こうした所にまで、まるで怨念のごとく残ったのであろうか。
――「兜率天の巡礼」
       ☆
笹の中の恵亮(えりょう)とは別の恵亮が、この日は中堂(=叡山の根本中堂)のなかの護摩壇の座にすわっていた。
壇の中央に火炎が燃えさかり、火をはさんで、純白の牛が臥していた。牛の背に六面六臂の大威徳明王の像がすわり、一臂は剣をもち、一臂は鋒
(ほこ)をにぎり、一臂は杵をつかんで、恵亮をにらみすえていた。
(中略)
恵亮の脳漿が火中で燃え、その炎の前でかれが昏倒したとき、絵像の太白牛がまず吠え、大威徳明王が剣をあげ、杵をまわしてまざまざと感応したという。
――「外法仏」

参考文献:司馬遼太郎『ペルシャの幻術師』(文春文庫)

       ☆
考えてみたらば、「外法仏」の大威徳明王像は、平安時代の密教僧・
恵亮が主人公であることからしても、彫像ではなく、画像ですけどね。
それはともかく、ぼくは文庫本『ペルシャの幻術師』を、「Amazon」の
マーケットプレイスから入手したのですが、ページの間に挟まっていた
入場券に驚きました! 茨城県常陸太田市の「竜神大吊橋(大人300円)
でして、ぼくが橋好きであることをどこかで誰かが監視しているのか?と、
妙な感覚に襲われてしまい……橋長375m、幅員3mで、歩道橋としては
本州一”と記載があります。いずれ渡ることになる暗合でしょうか? 
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

tag : 仏像小説

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たまに「考える人」、歴史探偵。
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(自称)。
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