色利、煎汁、いろり
「いろり」と言っても、「囲炉裏」のことではない(確かに、冬の季語ではあるけれど)。漢字で書くと「色利」または「煎汁」。『広辞苑』の語釈では、「かつおぶしまたは大豆を煎じた煮出し汁」となっている。
続いて、源順(911〜983)の編集した平安時代の漢和辞書『倭名類聚鈔』から用例を引くと、「堅魚煎汁、加豆乎以呂利」。「加豆乎」のど真ん中に「豆」(大豆)を見出し、どきりとするが、ここは「堅魚」同様「加豆乎」も「かつお」と読む。だが、そうなると「カツオいろり」とわざわざ断らねばならないだけ、「いろり」の種類があったのではないか。また「つ」という音に当てはめる漢字はいくつもあろうに「豆」の文字を選び出したのには、それ相応の理由があったのではないかと推測が働く。
農学研究者の吉田よし子氏が、いろりについて触れている。
「日本では平安時代からいろりというだし兼調味料が使われてきた。平安時代の九条兼実の日記には『四種器、酢、酒、塩、醤、あるいは醤をやめて色利を使う。色利とは大豆を煎たる汁なり、或は魚を煎たる汁なり』とあるように、日本ではダイズのゆで汁、それも多分ダイズを煮て味噌を仕込む時に残る、ダイズの煮汁を煮つめて塩を加え、だし兼調味料を作っていたと思われる。江戸時代にも豆いろりという言葉は出てくるが、残念ながら豆いろりの作り方については、まだ情報を手に入れられずにいる」
残念なことに大豆ではないが、豆の王国・インドやその周辺では、この豆いろりが現役。使用する豆の種類はホースグラム(Dolichos biflorus)、インドではクルチ、クリチ、ミャンマーではペピザと呼ぶ。原産地はアフリカ、インドは第2次原産地。
現在もミャンマーでは、ペピザの茹で汁で「ポンイェージー」という豆いろりを作っているそうだ。茹で汁を弱火でとろとろと煮つめ、特有のコクを出す。汁が煮つまると別の鍋の汁と一緒にし、塩を加えて煮続ける。最後は練り餡を作るような案配で、こねるようにして練り上げる。出来上がった豆いろり(ポンイェージー)は八丁味噌くらいの堅さ。さらに乾燥して粉末にした商品もあるという。工場などでは茹で汁を一旦乳酸発酵させるが、家庭ではそのまま煮つめる。
参考文献:吉田よし子『マメな豆の話』(平凡社新書)
続いて、源順(911〜983)の編集した平安時代の漢和辞書『倭名類聚鈔』から用例を引くと、「堅魚煎汁、加豆乎以呂利」。「加豆乎」のど真ん中に「豆」(大豆)を見出し、どきりとするが、ここは「堅魚」同様「加豆乎」も「かつお」と読む。だが、そうなると「カツオいろり」とわざわざ断らねばならないだけ、「いろり」の種類があったのではないか。また「つ」という音に当てはめる漢字はいくつもあろうに「豆」の文字を選び出したのには、それ相応の理由があったのではないかと推測が働く。
農学研究者の吉田よし子氏が、いろりについて触れている。
「日本では平安時代からいろりというだし兼調味料が使われてきた。平安時代の九条兼実の日記には『四種器、酢、酒、塩、醤、あるいは醤をやめて色利を使う。色利とは大豆を煎たる汁なり、或は魚を煎たる汁なり』とあるように、日本ではダイズのゆで汁、それも多分ダイズを煮て味噌を仕込む時に残る、ダイズの煮汁を煮つめて塩を加え、だし兼調味料を作っていたと思われる。江戸時代にも豆いろりという言葉は出てくるが、残念ながら豆いろりの作り方については、まだ情報を手に入れられずにいる」
残念なことに大豆ではないが、豆の王国・インドやその周辺では、この豆いろりが現役。使用する豆の種類はホースグラム(Dolichos biflorus)、インドではクルチ、クリチ、ミャンマーではペピザと呼ぶ。原産地はアフリカ、インドは第2次原産地。
現在もミャンマーでは、ペピザの茹で汁で「ポンイェージー」という豆いろりを作っているそうだ。茹で汁を弱火でとろとろと煮つめ、特有のコクを出す。汁が煮つまると別の鍋の汁と一緒にし、塩を加えて煮続ける。最後は練り餡を作るような案配で、こねるようにして練り上げる。出来上がった豆いろり(ポンイェージー)は八丁味噌くらいの堅さ。さらに乾燥して粉末にした商品もあるという。工場などでは茹で汁を一旦乳酸発酵させるが、家庭ではそのまま煮つめる。
参考文献:吉田よし子『マメな豆の話』(平凡社新書)
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