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吉朝拾遺

戸田学 『随筆 上方落語四天王の継承者たち』を読んでいると、
第3章「四天王以後の俊英たち」で、桂吉朝(1954~2005)に
一節を割かれており、非常にうれしくなってしまいました。
その一節だけでなく、他のページでも吉朝さんに触れている個所が
あったので、メモを取っておきます。最初は平成13年(2001)7月20日、
関西テレビ「桂米朝喜寿祝い 米朝さんの大いなる世界」において
寄せたコメント。次が後輩で、桂ざこば門下の桂喜丸(1956~2004)
との絡みで登場しています。最後は、彼の実験的な試みにも触れています。
       ☆
 (学生時代に父親と第一回「桂米朝独演会」を鑑賞した時のことを証言)トップが朝丸――現ざこば。二つ目に枝雀でしょ。当時、小米ですやろ、まだ……。トップ『不動坊』ですわ。これがまたマクラ振って、ウェ―――ッ! 受けさして……それでネタが『不動坊』でしょ。それで枝枕の『蛇含草』。ねえ。もうこれで十分やないかいう感じですよね。そこへ次に『地獄八景』、中入り、『市川堤』ですよねえ。そらもうなんか、帰りもね、もう親父と二人で、夢見てるような感じで、ボォ――! として帰りましたですわ。
       ☆
 (=桂喜丸)の“天然”といわれる所以の最も有名なエピソードは、先輩の桂吉朝が「咲くやこの花賞」を受賞した際の彼の祝いの言葉である。
 「兄さん、なんか賞を受賞したそうでんな。おめでとうございます……なんでまた?」
 煙草を指に挟んで「チェイ~す!」と挨拶するイメージが喜丸にはある。例によって、煙草を指に挟み吸いながら手招きして吉朝に話しかけた。「兄さん、あの、『池田の猪買い』の、あの部分ね、どないやってはりまんの?」。先輩に質問した。吉朝は、煙草を吸っている喜丸の側へわざわざやって来て「おお、あの部分なあ……」と話しかけて、途中で自分が先輩だということに気がつき、「お前が(訊きに)来い!」。
 京都で学校落語(学生を対象とした落語鑑賞会)があったときに、車で来ている喜丸に吉朝が訊いた。「喜丸、お前、帰りどっか行くんか?」。つまり良かったら送ってくれという意味である。すると喜丸氏。「北海道!」。周りの人間の頭の中には「!!」が湧く。気づいた吉朝は「おい、嫌やったら、そない言え!」とつっ込んだので笑いになった。

       ☆
 実際、談志と枝雀が落語で演った実験は、似ていたような気がする。枝雀は「フリー落語の会」(昭和六十年六月七日~六十一年七月四日)という落語の実験の会を開催していたことがあった。この中で客席から演目のリクエストを採って、それらのネタの一部分を繋ぎ合わせながら一席の落語に仕立てて口演したことがある。談志も『落語チャンチャカチャン』というタイトルで、落語のフレーズを繋いで一席に仕立てていた(桂吉朝も同じような趣向を『連鎖落語』として演じていた)。

参考文献:戸田学『随筆 上方落語 四天王の継承者たち』(岩波書店)
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ジャンル : お笑い

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たまに「考える人」、歴史探偵。
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