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ラファエル前派の感傷

今現在、ラファエル前派に関する著作も読み進めつつ、
高階秀爾 『世紀末芸術』から、示唆に富む指摘を抽出
してみましょうか。世紀末芸術(19世紀末)について、
新しい時代を開く第2のルネサンス(文芸復興)と見た場合――。
       ☆
世紀末のこの豊かな芸術運動の出発点に、ウォルター・ペイターの名著『文芸復興』と、ロセッティを中心とするラファエロ前派の運動があったことは、象徴的である。
       ☆
ただし、15~16世紀のかけての第1のルネサンスと
世紀末芸術との間には、写実主義美学の肯定/否定
といった本質的相違があり、写実主義美学の残滓を払拭
し切れていないラファエル前派は、やはり、世紀末芸術の
先触れといった役どころに留まるのかもしれません。
同じく、世紀末芸術における象徴主義の先駆けとしての
役回りも認められますが、まだ“素朴”であるとの留保付き。
       ☆
 中世的な意味での象徴の復活は、すでにイギリスのラファエロ前派の画家たちによって積極的に推進されていた。彼らの場合には、その象徴主義が時にはあまりに煩雑に過ぎるような場合もしばしばあったが、しかしそれにしても、バーン=ジョーンズやロセッティたちが、カンディンスキーの言うように、《外的な手段によって内部生命を求める人びと》であったことは事実であった。
 ラファエロ前派の用いた象徴主義は、いかに複雑であっても、いわば一種の「絵解き」に過ぎず、根本原理はどちらかと言えばかなり幼稚なものであった。

       ☆
象徴主義の代表的芸術家がオディロン・ルドンであったとしたら、綜合主義を代表する天才は言うまでもなくゴーガンである。もしゴーガンの嵐のように激しい個性と優れた造形感覚がなかったら、フランスの綜合主義は、単なる装飾趣味に堕するか、かつてのラファエロ前派のように文学的感傷に安住することになったであろう。

参考文献:高階秀爾『世紀末芸術』(ちくま学芸文庫)
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

tag : 美術

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たまに「考える人」、歴史探偵。
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