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おでん内おでん

豆腐について考えると、いつの間にか田楽について考えていることがしばしばある。本当だ。「お豆腐ランド」の中で田楽を検索してみても結構な数がヒットする。豆腐ネタに思いあぐねていると、不思議と田楽ネタにぶち当たるのである。豆腐と田楽とは切っても切り離せない関係なのか。

繰り返し説かれていることだが、田楽とは、名は体を表すとおり、田植えに舞う豊作祈願の農村芸能で、「高足」という1本の竹馬(あるいはポゴ・スティック)に似た棒につかまり、ホッピングして踊った。その様を見れば人が串刺しになっているように見えたので、串刺しのことを田楽刺しとしゃれた訳だ。豆腐横丁(201104)

上方落語で、武士に対して町人が切る啖呵に「二本差しが怖くて、田楽が食えるか」というものをよく聞く。「二本差し」とは、腰に大小2本の刀を差していた武士のことをいう。逆にこのことから、上方の豆腐田楽は、2本の串を刺していたのだなと想像される訳だ。実際、先の割れた細い竹串を2本刺していたことが『守貞謾稿』などからもわかる。江戸の田楽は平たい竹串を1本しか刺しておらず、江戸と上方の間、東海道の辺りでは根元が1本で先が2本に分かれているY字形の串が使われていたともいう。

田楽の女房言葉から「おでん」が生まれたのだが、厳密には田楽=おでんとはならないだろう。調理法が異なるからだ。田楽は香ばしい焼き目を付けるのが必須条件で、おでんの方は湯の中で煮るものとされる。焼くか/煮るかの違いが問われる。そこで思い出されるのが、こんにゃくの田楽。こんにゃくのアレは、湯炊きしたものに味噌だれをかけたものなので、こんにゃくの(味噌)おでんだ。細かい人はそう指摘するだろう。

そうして、また、おでんのことでつらつら思い返すのだけれど、具材に豆腐が入っているものは「おでんの豆腐」とシンプルに呼べば済むだろうけど、焼き豆腐がぐつぐつと鍋の中で煮えているおでんの店もあるではないか。焼き豆腐なのだから当然、焼き目も元々入っている。あれは一体、おでんの豆腐なのか、それともおでんの田楽なのか? そもそも、おでんが田楽から派生した言葉なのだから……などと頭の中まで、ぐらぐらと煮えたぎってくるようなのである。

参考文献:杉浦日向子『大江戸美味草紙』(新潮文庫)
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たまに「考える人」、歴史探偵。
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