中国南部の血豆腐

美しい色合いと深みのある味わいで、沖縄が誇る「豆腐よう」。泡盛と組み合わせれば、最強タッグだ。豆腐ようを作る際の漬け汁は、紅麹を泡盛に一夜漬けておいてから、すり鉢ですりつぶし、塩・砂糖を適宜加えて味を調えたもの。

決め手となる紅麹は、紅麹菌の胞子を蒸したコメにまいて作り、鮮紅色を呈する。この色が豆腐ようの出来上がりに反映されて、「東洋のチーズ」とも言うべき匂いと味で鼻と舌を楽しませてくれるばかりか、眼福まで与えてくれるわけだ。

サーモンピンクからパステルピンクまで、目に優しく食欲をそそる豆腐よう。だが、世界は広い。同じ“赤い”豆腐でも、対極を行く豆腐がある。

中国南部の雲南省や四川省、広西壮族自治区、貴州省あたりに行くと、豚血料理で有名な「大腸血豆腐(タアチャンチトウフウ)」というのが食べられている。これを食った時も、正直言ってずいぶん不味いものだと思った。その料理は、豚を屠ったときに出た血をとっておいて、それにニンニクや唐辛子、その他幾つかの香辛料を加え、豆腐をつくる時にその血を加えて固める。つまり血豆腐ですな。それを「白菜(パイツァイ)」の葉で包み、蒸し器で蒸したものである。

日本のおにぎりよりやや大きめのものなのだが、それを一つもらって食べた。口の中で噛むと、歯のゴワゴワした中からやわらかい豆腐の感触がしてきて、これはなかなかいけそうだわい、と思った直後、血から出てきた例の鉄錆の臭いが鼻にガーン!と押し寄せてきて、一瞬たじろいだほどであった。そして、さらにモグモグと噛んでいるうちに、口の中では豆腐から漏れ出してきた血の味、すなわち、やや塩っぽいような味と鈍く重い味が口中に溢れ出した。

その不気味で嫌な味は、血の中のたんぱく質が唾液の酵素で一部分解されてアミノ酸となり、それが血に豊富に含まれている金属イオンと反応して、えぐい味となったのであろう。噛めば噛むほど鼻に血の匂いが襲ってきて、ああ、これはもう俺の大脳味覚野を破壊してしまうぞ、と思ったほどである。


重たく沈む血の色……。長い歴史を通して、多種・大量の肉を食らってきた人たちの嗜好にはかなわないのか、確かにどの民族にもそれぞれ好みの匂いというものがあるのだろう。

参考文献:小泉武夫『発酵食品礼讃』(文春新書)小泉武夫『不味い!』(新潮文庫)
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通りすがりの夢想家。元(にして最後の)「トーヨー新報」編集人。現在は、一介の編集素浪人?



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「トーヨー新報」は、昭和33年(1958)創刊。大豆加工品(豆腐・油揚げ、納豆、豆乳、湯葉、凍り豆腐、もやし等)、こんにゃく、総菜業界をメイン購読者層に、月3回の旬刊紙「トーヨー新報」や業界関連データブック『豆腐年鑑』を発行。平成25年(2013)12月21日号、第1851号をもって終刊に至る。

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