ゲゲゲの豆腐小僧

今春はアニメ映画化されたこともあり、巷間の知名度も上がったのではないかと思われる妖怪、豆腐小僧。小松和彦『妖怪文化入門』では、主な特徴が3点ほど挙げられている。小雨の降る中に笠をかぶって現れる、盆の上に載った豆腐は紅葉の葉が付いている、豆腐を食べた者は身体にカビが生えてしまう――である。

豆腐小僧という妖怪は、出来事としての妖怪でもなければ、超自然的存在としての妖怪でもない。造形化された妖怪の典型で、近世に町人(=消費者)文化が成熟した時代の流れの中で登場した豆腐小僧こそ、蓄積されたデータベースから発生したキャラクターと言えよう。当然、妖怪をキャラ化した妖怪漫画の第一人者、水木しげるの世界と相性が悪いはずがない。やはり「ゲゲゲの鬼太郎」にも登場する。

水木版の豆腐小僧は、山林で大木の伐採に勤しむ作業員らの前に現れる。雨こそ降ってないが鬱蒼と茂る森の中、笠をかぶって登場する定型パターンだ(ただし、盆上の冷や奴には紅葉が描かれていない)。また尖った舌先をぺろりと出した表情は、江戸時代の黄表紙の挿絵でもよく見られたもので、酒徳利の代わりに、よく冷えた瓶ビールを伐採員らに勧める。仕事上がりのビールは格別だが、この場合はくせもの。近世の豆腐小僧のルールに従い、その豆腐を食べた者は、身体にカビが生えてしまうのである。口のいやしいねずみ男もやはり同様の症状にかかって、ようやく鬼太郎の出番となる。

目玉おやじの解説によると、豆腐小僧の豆腐を食べて生えるのは「豆腐カビ」らしい。また、豆腐小僧は山林に住んでいる子供の妖怪で、山が荒らされたりすると豆腐を持って現れる――と。元々、豆腐小僧は町中にしか現れなかったはずだから、この辺りは自然に優しい、現代のエコロジー志向に合わせてリニューアルしたようだ。

鬼太郎チームは妖怪医学によって、天井なめ(カビが大好物の妖怪)の胃液1さじに風呂おけ1杯の水を混ぜ、カビ消しの妙薬を作り、豆腐カビに苦しむ人々を助ける。髪の毛針も通用しない豆腐小僧の増殖した軍団と鬼太郎との最終決戦では、豆腐小僧の弱点が豆腐そのものにあると目玉おやじが見破る。形勢逆転で次々と倒し、最後の一体となった豆腐小僧に指鉄砲でとどめを刺そうとする直前、山の神「山神」が現れ、豆腐小僧のために許しを請う。調停が成立した後、山神に供された豆腐は「カビ落とし」という腹の中を綺麗にする豆腐。「腹の砂おろし」と呼ばれたこんにゃくにも似た効能を持っているようだ。

参考文献:小松和彦『妖怪文化入門』(角川ソフィア文庫)水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎 5 』(中公文庫)
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通りすがりの夢想家。元(にして最後の)「トーヨー新報」編集人。現在は、一介の編集素浪人?



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「トーヨー新報」は、昭和33年(1958)創刊。大豆加工品(豆腐・油揚げ、納豆、豆乳、湯葉、凍り豆腐、もやし等)、こんにゃく、総菜業界をメイン購読者層に、月3回の旬刊紙「トーヨー新報」や業界関連データブック『豆腐年鑑』を発行。平成25年(2013)12月21日号、第1851号をもって終刊に至る。

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