台湾の三杯もの
言語表現や映像、音声、都市にまつわる批評活動を精力的に続ける四方田犬彦氏は、世界各国の食にも造詣が深く、いくつかの料理論を著している。四方田氏が台湾料理を構成する独自の要素として挙げる3つの味付け(食材、料理)――滷味(ルゥウェイ)、九層塔(ガオザンダー。北京語ではチュウツォンター)、〓仔煎(オーアーチェン)は、台湾のどこの街角でも入手できるというが、中でも九層塔の活躍する料理「三杯(サンペイ)もの」には、豆腐を用いることもあるらしい。
説明を加えると、まず滷味。「滷」の漢字には「にがり」の意味もあるのだが、ここでは醤油と酒、砂糖に桂皮や八角、陳皮、生姜といった香料を加えて煮込んだタレの風味を指す。このタレ、滷水(ルゥシュエイ)には、砂糖や五香粉、場合によっては米酒を加えることもあるとか。台湾の大衆食堂の店先に並ぶ牛の胃袋や鶏の肝臓、豚の子袋といった内臓類は、滷味で煮込まれている。〓仔煎は、一言で言うと牡蠣を使ったオムレツのこと。
さて、注目の九層塔は、英語で「Taiwanese basil」と呼ばれる。ドクダミに似た尖った葉を持ち、バジリコ(バジル)をいくぶん苦くしたような独特の風味のハーブ。台湾料理に欠かせない貴重な脇役だが、特に「三杯もの」を彩る食材だ。作り方は中華鍋を熱し、胡麻油を垂らす。鍋底に大蒜と生姜を敷き詰め、強火にして、ぶつ切りの鶏肉を入れる。米酒を振りかけ、若干の砂糖を加え、醤油を回し入れる。弱火にして十分に火が通り、汁気が半分ほどになったところで、九層塔を大量に投入し、鍋にふたをして、とろ火で気長に待つ。「三杯」の名は、3種類の液体(胡麻油、米酒、醤油)を用いることに由来する。
三杯ものに使用する肉は鶏に限らず、四方田氏が台湾で通っていた屋台では、よく兎が供されたという。もちろん、豆腐の出番もある。「ちなみに三杯ものは何も肉でなければいけない理由はないのであって、水気を絞った豆腐を用いたものもまた美味であったことを、付記しておきたい。おそらくこの料理で用いる香辛料を少し組み替え、火の使い方を少しずらしたところに、沖縄のチャンプルーが位置しているのではないだろうか」と、興味深い指摘もなされている。
※「〓」は「虫」偏+「可」
参考文献:四方田犬彦『ひと皿の記憶』(ちくま文庫)
説明を加えると、まず滷味。「滷」の漢字には「にがり」の意味もあるのだが、ここでは醤油と酒、砂糖に桂皮や八角、陳皮、生姜といった香料を加えて煮込んだタレの風味を指す。このタレ、滷水(ルゥシュエイ)には、砂糖や五香粉、場合によっては米酒を加えることもあるとか。台湾の大衆食堂の店先に並ぶ牛の胃袋や鶏の肝臓、豚の子袋といった内臓類は、滷味で煮込まれている。〓仔煎は、一言で言うと牡蠣を使ったオムレツのこと。
さて、注目の九層塔は、英語で「Taiwanese basil」と呼ばれる。ドクダミに似た尖った葉を持ち、バジリコ(バジル)をいくぶん苦くしたような独特の風味のハーブ。台湾料理に欠かせない貴重な脇役だが、特に「三杯もの」を彩る食材だ。作り方は中華鍋を熱し、胡麻油を垂らす。鍋底に大蒜と生姜を敷き詰め、強火にして、ぶつ切りの鶏肉を入れる。米酒を振りかけ、若干の砂糖を加え、醤油を回し入れる。弱火にして十分に火が通り、汁気が半分ほどになったところで、九層塔を大量に投入し、鍋にふたをして、とろ火で気長に待つ。「三杯」の名は、3種類の液体(胡麻油、米酒、醤油)を用いることに由来する。
三杯ものに使用する肉は鶏に限らず、四方田氏が台湾で通っていた屋台では、よく兎が供されたという。もちろん、豆腐の出番もある。「ちなみに三杯ものは何も肉でなければいけない理由はないのであって、水気を絞った豆腐を用いたものもまた美味であったことを、付記しておきたい。おそらくこの料理で用いる香辛料を少し組み替え、火の使い方を少しずらしたところに、沖縄のチャンプルーが位置しているのではないだろうか」と、興味深い指摘もなされている。
※「〓」は「虫」偏+「可」
参考文献:四方田犬彦『ひと皿の記憶』(ちくま文庫)
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