八杯豆腐

前回、「三杯もの」(2013年8月 「台湾の三杯もの」参照)を取り上げたからという訳でもないが、今回は八杯豆腐について。この春、期間限定だが、奈良・葛城地域の郷土料理「八杯豆腐」がJR奈良駅構内の県営アンテナショップで販売されていた。細長く切った奈良県産の豆腐と吉野葛を使用し、汁にとろみを付けていた。「八杯」とは、水4、醤油2、酒2の割合で味付けされることが由来とされている。葛城地域だけでなく、全国的にも親しまれている郷土の総菜、と言われれば、『豆腐百珍』を想起される方も少なくないだろう。

江戸時代に出版された豆腐料理の指南書、何必醇『豆腐百珍』では「妙品」として「真の八杯豆腐」が挙げられている。福田浩氏の訳を引用する──。

絹ごしのすくい豆腐を用い、水六杯と酒一杯をよく煮返した後、醤油一杯を足し、さらによく煮返し、豆腐を入れる。煮かげんは、湯やっこのようにする。おろし大根を置く。

『デジタル大辞泉』でも八杯豆腐の定義は「薄く細長く切った豆腐を、水4杯・醤油2杯・酒2杯の割合の汁で煮て、葛を加えた料理。うどん豆腐」とされ、このレシピは葛城地方で復活させた八杯豆腐とも共通するが、『豆腐百珍』の場合、母分の“8”に基づく「八杯」は共通するとはいえ、水・酒・醤油の配合比率が異なるようだ。これは地域性なのか。それとも時代性によるものだろうか? 

説明文中、「湯やっこのようにする」とある、その湯やっこの煮加減は同書の「絶品」で触れられている。

葛湯を湯玉のたつほど煮たたせ、豆腐を一人分入れ、蓋をせず、見ていて少し動いてまさに浮きあがろうとするところをすくいあげ、器に盛る。浮きあがってしまっては煮すぎである。その塩梅は一瞬である。もちろん、器は温めておかなければならない。

参考文献:福田浩、松藤庄平、杉本伸子『豆腐百珍』(新潮社)
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通りすがりの夢想家。元(にして最後の)「トーヨー新報」編集人。現在は、一介の編集素浪人?



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「トーヨー新報」は、昭和33年(1958)創刊。大豆加工品(豆腐・油揚げ、納豆、豆乳、湯葉、凍り豆腐、もやし等)、こんにゃく、総菜業界をメイン購読者層に、月3回の旬刊紙「トーヨー新報」や業界関連データブック『豆腐年鑑』を発行。平成25年(2013)12月21日号、第1851号をもって終刊に至る。

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