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真夏の夜の夢

11月20日(金)、「兵庫県立芸術文化センター」阪急・中ホールに
出掛けて、“東京芸術祭 2020”(東京芸術劇場30周年記念公演)と
銘打たれた『真夏の夜の夢』を鑑賞しました。ウィリアム・シェイクスピア
・原作、野田秀樹・演出で、演出はシルヴィウ・プルカレーテ。ちゃんと、
小田島雄志・訳の『夏の夜の夢』(A Midsummer Night's Dream)も
読み返しましたから、予習は万全よ。17時45分開場、18時30分開演でした。
野田秀樹自身の演出による初演が1992年ですから、28年前の脚本となり、
当時は新鮮だったと思われる科白回しが耳覚えのある言葉遊びに風化して
いるようで、まだしも、直截な小田島・訳の方が鼓膜に突き刺さってきて、
ねじれた意識に幻惑されました。「私はあなたのスパニエル」とかね。
ヒロインのハーミアはときたまご(北乃きい)、ヘレナはそぼろ(鈴木杏)に
置換され、アテネという都市国家ではなく、“割烹料理ハナキン”という風に
舞台も矮小化(?)されています。何が一番の問題かと言えば、アテネの
権力の中枢を占めていたシーシュース公爵(+アマゾン女王・ヒポリタ)の
役回りが省かれてしまったこと。そうなると、“街”と“森”を対置させる構図が
崩れてしまいます。妖精の森はオーベロン王とタイテーニア女王が統治
するからよいとして、街(野田作品では割烹)を仕切るのが、ときたまごの
父=ハナキン主人だけでは、弱過ぎでしょう。そこで、野田が投入したのが
シェイクスピア原作にはなかったメフィスト(今井朋彦)でして、妖精パック
(手塚とおる)に成り代わり、悪魔の契約を成立させようと暗躍させるのでした。
死んでしまえ、無くなってしまえという負の叫びを引き出そうとする試みには、
前世紀末が懐かしくも蘇ってくるのですが……「新世紀エヴァンゲリオン
(1995)の頃かなぁ。もしかすると、そういった負の感情が当たり前の地点に
立つことが今や自然になり過ぎ、感覚が鈍磨している……ぼくだけかしら。
劇中劇には、『不思議の国のアリス』。夢の中で森を焼き尽くそうとする
企ては、メフィストが森と共に消滅することで(舞台的には)丸く収まります。
“現実”と措定されたところの割烹料理店は存続し、恋人たちの披露宴で
ハッピー・エンド。毒気は見事に抜かれてしまいました。良いお芝居で、
面白かったですけれども、演劇的なスリルという観点からは、鈴木杏と
北乃きいの生脚に呑まれてしまったように思います。他にも、板前デミ
(加治将樹)と板前ライ(矢崎広)のバトル、タイテーニア(加藤諒)の艶姿、
ボトム=福助(朝倉伸二)の腹芸など、役者の身体性が勝つのは当然。
ぼくは、言葉(文体)が身体と拮抗する現場を目撃したいです。そぼろの
言葉に応えて、森が燃え、雨が降る――そのイメージを顕現させること。
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テーマ : 演劇
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 演劇

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たまに「考える人」、歴史探偵。
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