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『猟犬探偵』註

12月の読書会のテクストは、稲見一良(1931~1994)の
『セント・メリーのリボン』でした。その表題作を契機に、
失踪した猟犬探しを生業とする探偵・竜門卓のシリーズが
書き継がれ、一冊にまとまったのが『猟犬探偵』です。
竜門は北摂の能勢に住んでおり、主要な舞台が関西と
なるのは自然の流れながら、大阪市内の建物等に関して、
ぼくの注意を引いた個所をピック・アップしておきます。
       ☆
 カスバのように入りくんだ地区を、一つずつ歩いて、広い暗い通りへ出た。関西テレビの建物の電飾が見えた。
 道路には客待ちの無線タクシーが、それぞれの表示灯
(あんどん)をつけて並んでいた。不法に駐めた自転車やバイクが道を狭くしている歩道の片側には、間口一間ほどの店がぽつぽつと並んでいた。
(第2話 ギターと猟犬)
       ☆
「ギターと猟犬」は「小説新潮」1993年12月号に発表。
引用した文章に描かれたカスバのような地区とは、
現在は「お初天神裏参道」や駐車場などに替わった
曽根崎2丁目の一部の界隈ではなかろうか、と推定。
伊波普猷に縁故の女将が営業していた沖縄料理店
物外館」を訪ねたこともありました……竜門は新御堂筋を
過ぎ、寺町通りを東へ進んだのだろうと思われます。
現在は「扇町公園」の一画を占めている「関西テレビ」の
社屋(大阪市北区扇町2丁目1番7号)は、平成9年(1997)
10月1日に移転するまで、西天満6丁目に在ったのです。
       ☆
 教わった金波楼宝石店というのは、JR鶴橋駅に近い大通りにあった。間口の広い大きな明るい店だ。俺は有料駐車場に車を入れて、店を訪ねた。昼間から煌々と明りをつけた店では、十人ほどの男女が働いていた。
(第4話 悪役と鳩)
       ☆
その昔、鶴橋に「大日本印刷」大阪工場が在った頃、
通勤していた関係上、鶴橋界隈には覚えがありますから、
(「金波楼宝石店」という店名だったかどうかはともかく)
確かに、大通りに面した貴金属・宝石店が在りましたよ。
派手な店構えをぼんやりと覚えており、どこがというのでなく、
曽根崎の「足立宝石店」とイメージが被ってしまいます。
同じ「悪役と鳩」の後半で、「猪飼野新橋」、「新城見橋」も
登場。新城見橋の説明で、「平野川と寝屋川の合流点」と
書かれていて、現在ならば、「第二寝屋川」と記す方が正確
なのでしょうけれど、昔はそう呼んでいなかったように記憶。
       ☆
 段平船は軽やかなエンジン音を響かせて、寝屋川を左へ向かった。旧造幣局の跡を通った。戦後はアパッチ村といわれて名を高めた所だ。百鬼横行したかつての廃墟は跡を留めず、今は交通局の工場だと小松が言った。
       ☆
『猟犬探偵』は1994年発行で、「悪役と鳩」は書き下ろし。
手元の単行本から参照しており、文庫本も読んでいました
けれど、改訂されていたかどうかは、検証できていません。
“アパッチ村”はかつての「大阪砲兵工廠」跡地であって、
造幣局」とは何の関係ございませんので、誤記というか、
単純に事実誤認と思われます。ちゃんと、校閲してあげたいな。

参考文献:稲見一良『猟犬探偵』(光文社文庫)
参考記事:梅田に「物外館」という店が在った!
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

tag : 小説建物

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鶴橋

鶴橋の宝石・貴金属店は
紫光」だったかな。
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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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(自称)。
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