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納豆トライアングル再考

かつて、インドネシアのとある大学教授が「ジャワの人は3Tで生きている」と言ったらしい。3つのTとは、テンペタウゲ(もやし)、タフー(豆腐)を指す。ジャワ島の主食は日本人同様にコメだが、おかずのメインはこれら大豆加工品であるとのこと。妙に親しみを感じさせてくれる。

栄養機能性も極めて高い大豆ではあるが、難点もある。穀類でん粉が水を加えて加熱するだけで容易に食べやすく、消化しやすくなるのに対して、大豆を含む豆類は水を加えて煮てもなかなか軟らかくなりにくいことだ。テンペ(無塩発酵大豆食品=インドネシアの納豆)、もやし、豆腐という大豆の料理加工法は、どれだけ絶妙の創意工夫であったことか。



インドネシアの豆腐は、発音からも分かるとおり、中国から比較的新しく伝来したもののようだが、テンペやもやしは歴史が古い。ジャワ島で最も重要な食品とされるテンペは、日本の糸引き納豆に相当する無塩発酵食品。大豆をよく煮て軟らかにしたものをバナナの葉などに包んで発酵させる。日本の納豆が元々藁(つと)に存在した納豆菌を利用したように、バナナの葉などに生息するテンペ菌を利用する自然な手法が面白い。

納豆に相当する無塩発酵大豆食品を作っているもうひとつの地域が、東ネパール、シッキム、ブータンなどのヒマラヤ中腹だ。そこでは、日本の大豆(=あぜ豆)のように大豆を水田のあぜに植えて栽培している。主に冬の加工となり、日本の糸引き納豆そっくりのものや乾燥品もある。ネパール語では「キネマ」と呼ばれている。そこから、文化人類学者・中尾佐助氏が提唱した仮説が「ナットウの大三角形」(=納豆トライアングル)である。

日本、ヒマラヤ、ジャワのナットウの存在が偶然の一致でなく、もしどこかからこの三地域に伝播したと仮定すれば、おのずからその仮説中心地は雲南省あたりに求められることになるだろう。そして、ナットウが伝播したということは、他の文化要素も複合して伝播したと当然推測ができる。そうなると、これら地域間の文化的共通性が予測されることになるだろう。その範囲は、当然ナットウを指標にすると、日本、ヒマラヤ、ジャワを結んだ三角形の地域になる。

参考文献:中尾佐助『料理の起源』(吉川弘文館)
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たまに「考える人」、歴史探偵。
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