リゾープスについて

「インドネシアの納豆」と呼ばれるテンペ。納豆と同じ無塩大豆発酵食品だが、最大の違いは納豆のスターターが納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)であるのに対して、テンペはテンペ菌をスターターとすること。発酵食品の製造に使用される接合菌(Zygomycetina)は、いずれもケカビ科(family Mucoraceae)に属する。その代表的な属は、ケカビ属(Mucor)、ツガイケカビ属(Zygorhychus)、クモノスカビ属(Rhizopus)、ユミケカビ属(Absidia)、ヒゲカビ属(Phycomyces)、フタマタケカビ属(Syzgites)などで、優良なテンペの製造のために使用されているのがリゾープス属菌である。

属名「Rhizopus」は、ラテン語「rhiza(根)」+「pus(足)」に由来する。その菌毛が蜘蛛の巣様であることから、「クモノスカビ」と呼ばれる。リゾープス属の菌のコロニーの生育スピードは速く、匍匐枝、仮根と胞子嚢柄が形成される。胞子嚢は多数の胞子を内蔵し、大部分が大型。最初は白色だが、熟成とともに黒褐色に変わる。柱軸は褐色、球形〜亜球形で、アポフィシス(柱軸直下の膨らみ)を持つ。リゾープス_01

リゾープス属の胞子は短楕円形で、通常不規則な角形。しばしば筋がある。大部分の種はヘテロタリック(自家不和合性)であるから、自分と異なるタイプとしか接合しない。

米国農務省・北部研究所のヘッセルタイン博士は、テンペ製造可能なリゾープス属を「R. oligosporus」「R. stolonifer」「R. arrhizus」「R. oryzae」「R. formusaensis」「R. aclamydosporus」と発表しているが、81の市販テンペのサンプルから118の単離を行った実験では、ほとんどが「R. oligosporus」であり、わずかに「R. oryzae」が見出される程度だったとの報告がある。リゾープス_02

優良なテンペ菌から「R. stolonifer」「R. arrhizus」が分離されることはないため、それらは汚染菌と推測される。後にヘッセルタイン博士が同定した「R. oligosporus NRRL 2710」株は、米国をはじめとする世界中でテンペ製造に用いられている。同株の特徴は、30〜42℃という比較的高い温度で生育が速いこと、風味が良いことなどが挙げられる。

参考文献:今野宏さん((株)秋田今野商店社長)の特別講演「日本人の食生活を守る大豆発酵食品の歴史と役割」より
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