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ミャンマーのペポ

「納豆トライアングル」(2012年1月「納豆トライアングル再考」参照)は、納豆を指標にした日本、ヒマラヤ、ジャワを結ぶ三角形の地域。この三角地帯において、納豆(=大豆発酵食品)という文化的共通性が認められるのではないかとの文化人類学者、中尾佐助氏の仮説だが、テンペで有名なインドネシア、タイの「トゥアナオ」(2012年11月「3タイプのトゥアナオ」参照)同様に、ミャンマーにも「ペポ」と呼ばれる納豆がある。現地語で「ペ」は豆、「ポ」は臭いという意味らしい。以下、農学研究者の吉田よし子氏の著書から、ペポの実情を探ってみる。

特に納豆を好むといわれるのは、ミャンマー北部のカレン族のパッオと呼ばれるグループの人々。一面に細かい毛が生えているため、白く見える葉を使い、大豆を一つかみくらいずつ包み、大きな籠に詰めて発酵させる。豆の表面に白い皮膜ができるくらいまで発酵させた納豆が、葉に包まれたまま市場で売られている。パッオの人々が暮らす村の農家では、裏の納屋などで、シダの葉を詰めた籠に納豆を作る。日本の藁苞納豆の稲藁に相当する役割をシダの葉が担っている。乾いたシダの葉には納豆菌が付着しているのだ。シダの葉は甘いクマリン(ラクトンの一種。有機化合物C9H6O2)の香りを放ち、消臭効果もある。生納豆の料理法には、唐辛子粉と塩、シャロットの薄切りと一緒に熱いご飯に混ぜたり、つぶしてスープに入れたり、タマネギやニンニクなどを使った各種の炒め物などがある。日本のように粘る納豆はあまり好まないそうだ。

またペポも生納豆のほか、タイのトゥアナオのように「せんべい状乾燥(調味)納豆」、「納豆味噌」、「固形乾燥調味納豆」といった加工品が見られる。せんべい状乾燥納豆は台所の常備品。塩、唐辛子、ショウガなどを加えて熟成させた納豆味噌は、なめ味噌としてそのまま総菜にしたり、他の料理の調味料に用いる。固形乾燥調味納豆は油で揚げて総菜に。納豆とその加工品の広がりと多様さ、製造量において、ミャンマーの規模はタイを格段に上回ると推測される。当時(吉田氏の著書は2000年の上梓)の東南アジアの納豆センターと目されるのがミャンマーのタウンジー周辺。タイのチエンライの納豆工場で製造を手掛けていたのはミャンマーのカレン族出身者で、タイの市場に並ぶ各種せんべい状乾燥(調味)納豆もミャンマー製(ペポ)だった――と吉田氏は傍証を挙げている。

参考文献:吉田よし子『マメな豆の話』(平凡社新書)
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