糸を引かない納豆

公開特許公報から「糸が切れる納豆」(特開2013-192525)を紹介しよう。発明者にして出願人の小林正幸氏(広島・福山市)が掲げた課題は「粘る納豆は必ずしも食べる味わいを豊かにはしない。たれを多く使い、水浸しの納豆ではいささか食欲がそがれることもある。これら糸を引き食べにくい納豆の、糸切れをよくし、より食べやすくする」ことだった。たれを多量に使えば、糸を引きにくくなるが、水っぽくなってよろしくない。というのであれば、従来のたれ以外に活路を求めることになる。

小林氏の解決手段は「納豆や調味料などに油脂を混入する。たれを水分過剰の状態にして食することなく、サラダ油や、クリームなど油脂成分を添加することで糸切れは大幅に改善される。納豆をパンなどのブレッドペーストに使用することもできる」というもの。具体的には、調味料として使用するたれなどに、サラダ油など油脂を適量、添加するか、納豆に直接散布するという具合になる。粘りを作り出す分子に油の幕を張り、分子間の結合の邪魔をすることで、粘りの糸を切り、軽快に食べられる、というのだが……。

納豆そのもの、あるいは調味料などに油脂を添加することで、格段に納豆の糸引きは阻害される。が、課題そのものが問題なのではないか、と言わないまでも、非常に興味深いものであることは確かだ。小林氏も念を押すように「納豆の粘る糸はひとつの魅力でもあるが」と断っている。それでも「食べにくいと感じるものでもある」として、「この粘る糸を切断し食べやすくする」ことに取り組んだのである。その結果、糸引きを味わう旧来の納豆ではなく、糸を引かないブレッド・ペーストとしての使用法にも思い至っている。

ところで、「全国納豆鑑評会」での評価項目は、形(外観)・色・香り・味に、糸引きも入って5項目。糸を引くことが良い納豆としてのプラス評価につながっている訳だ。また、北海道や東北地方を中心に、納豆に砂糖(や塩)をわざわざ入れて、糸引きをよくしようという人だっている。納豆が糸を引くのは「当たり前」と思い、糸引きこそ納豆の美点という観念がまだまだ根強い一方、次代の納豆に対する受け入れ方、感性もはぐくまれつつあるようだ。不易流行の伝統食品であるからこそ、本質に関わらない要素は捨象できるということかもしれない。
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通りすがりの夢想家。元(にして最後の)「トーヨー新報」編集人。現在は、一介の編集素浪人?



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「トーヨー新報」は、昭和33年(1958)創刊。大豆加工品(豆腐・油揚げ、納豆、豆乳、湯葉、凍り豆腐、もやし等)、こんにゃく、総菜業界をメイン購読者層に、月3回の旬刊紙「トーヨー新報」や業界関連データブック『豆腐年鑑』を発行。平成25年(2013)12月21日号、第1851号をもって終刊に至る。

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