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こんにゃく問答

「こんにゃく問答」といえば、『広辞苑』にも「話のかみ合わない会話。とんちんかんな問答」と語釈が載るほど、有名な落語の演目だ。江戸落語の「こんにゃく問答」に対して、上方落語だと「餅屋問答」に相当するが、演者の身ぶりが“笑い”の大きな比重を占める仕方噺であることには違いない。元ネタは長野県下伊那郡の民話や江戸時代の小噺集にも散見される。

さて、江戸で食いつめた八五郎が上州(現在の群馬県)に流れる。上州は言わずと知れたこんにゃく芋の主要産地(「こんにゃく王国は一日にしてならず(1)」「同(2) 」参照)。当初、こんにゃく屋・六兵衛の家に転がり込むが、いつまでも居候ではいられなくて、近所の空き寺の「なんちゃって住職」に収まる。読経もできない八五郎は寺男の権助と酒を呑んでばかりの毎日。そんなある日、永平寺から高僧が(不在の)和尚を訪ねてやって来る。こんにゃく横丁(201105)

困り果てた八五郎がこんにゃく屋・六兵衛に相談すると、六兵衛が大和尚に成りすまし、禅僧の相手を務めるという。再度登場した禅僧は、黙りこくった(六兵衛演じる)大和尚が「黙行」(沈黙を貫き通す修行)の最中だと取り違える。言葉を発しての会話が無理ならば、と禅僧は、両手の人差し指と親指で小さい丸を作る。対する六兵衛が両腕で宙に大きな丸を描けば、禅僧はひれ伏す。次に禅僧が両手の指をぱっと開く。六兵衛が片手をぱっと開けば、またもや平伏する禅僧。最後に禅僧が右手の3本指を突き出すと六兵衛はあかんべえ。禅僧はそそくさと退散してしまう。

後を追いかけ、八五郎が子細を尋ねると、小さい丸で「天地の間は?」との問いに両腕で「大海のごとし」。「十方世界は?」との問いに片手で「五戒で保つ」。最後に「三尊の弥陀はいずこに?」と問えば「目の前を見ろ」と返され、禅僧は感服させられたのだ。

感心することしきりの八五郎が寺内に戻ると、こんにゃく屋は一人で怒っている。言い分を聞けば、「坊主が手まねで俺の商売物にケチつけやがった。お前のこんにゃくはこれ(手中に収まる程度)かと難癖つけるから、大手を広げるくらいとやり返した。10枚でいくらかと聞くから500だと答えた。しみったれが300に負けろと食い下がるから、あかんべえ」とのこと。事情さえ知らなければ、無言の会話も成立しているふうな見かけが愉快だ。

参考文献:立川志の輔選・監修、PHP研究所編『古典落語100席─滑稽・人情・艶笑・怪談』(PHP文庫)
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たまに「考える人」、歴史探偵。
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