心中=密室
「文楽プレミアムシアター」に加えて、新たなオンライン
有料配信「国立劇場くろごちゃんねる」が始まりました。
「プレミアムシアター」が「国立文楽劇場」での公演記録
映像を取り扱うのに対して、「くろごちゃんねる」は「国立劇場」
での公演記録映像を配信。前者が「e+(Streaming+)」から
販売されるのに対して、後者は「MIRAIL」が販売しています。
東京の「国立劇場」に入った経験がないものでして、そういう
観点からも興味深く。記念すべき第1回は、第72回文楽公演から
「心中宵庚申」上田村の段/八百屋の段/道行思ひの短夜
――昭和60年(1985)2月21日の上演でした。上田村は、九世
竹本文字太夫(後の七世竹本住太夫)と豊澤富助。八百屋は
四世竹本越路太夫と鶴澤清治。清治がとにかく初々しく……
越路太夫も生で聴けなかった1人でしたね。床が暗くて、ぼんやりと
映っているだけなのですが、津駒太夫時代の竹本錣太夫、
清二郎時代の鶴澤藤蔵の姿を見つけて、嬉しくなりました。女房
お千代は若き日の吉田簑助、八百屋半兵衛は初代・吉田玉男。
八百屋から出遣いとなり、伊右衛門女房を遣っていた桐竹紋壽
(1934~2017)の佇まいに引き込まれ……良い顔をしているのです。
2時間18分の上映時間中、ご褒美は庚申参りの男女で登場する
吉田玉女(現・吉田玉男)と吉田簑太郎(現・桐竹勘十郎)のコンビ
でしょう。正直、全体に辛気臭いストーリーの中、ぱっと華やいで、
心が浮き立ちます。近松門左衛門(1653~1724)最後の世話物。
☆
これも、仲の良い夫婦が何故心中しなければならないのか?
単に姑が悪いとは済まされないところが、いやらしい筋の運びです
――義母の嫌う嫁を義母の顔を潰さずに、半兵衛の口を通して
家を去らせる。お千代に対しては、離縁するのではなく、夫婦で
連れ立って庚申まいりを行うため、共に家を去る。また、実家に
嫁を戻らせはしないと、義父との約束も守る。以上の条件を満たす
解が、(身籠もった子も巻き込んでの)夫婦心中と言うウルトラC。
近松のロジックは、常々、推理小説(パズラー)にも似て、奇妙な
歪さを示すことよ、と呆れ返ってしまいますが。リアルな心中事件を
題材にしたにせよ、密室のための密室、先に“心中”ありきなのね。
では、どうしても心中させるためには、どう詰めていこうか?という。
現実は、もっとどうでもいいことで、たまたまどうにかなって、人の
生き死にがある。しかし、そこに、“必然”を読み取れないことには
(フィクショナルな何かを導入することには、敢えて目を瞑り)、納得
できない人たちも一定数いる訳で、近松はその欲望に応えます。
「MIRAIL」の視聴期間は購入日から14日間で、10月14日に1度
鑑賞して、複数回に分けて2度目の鑑賞。2時間超のボリューム
ですから、時間を作るのがなかなか大変で、あっと言う間に期限が。
有料配信「国立劇場くろごちゃんねる」が始まりました。
「プレミアムシアター」が「国立文楽劇場」での公演記録
映像を取り扱うのに対して、「くろごちゃんねる」は「国立劇場」
での公演記録映像を配信。前者が「e+(Streaming+)」から
販売されるのに対して、後者は「MIRAIL」が販売しています。
東京の「国立劇場」に入った経験がないものでして、そういう
観点からも興味深く。記念すべき第1回は、第72回文楽公演から
「心中宵庚申」上田村の段/八百屋の段/道行思ひの短夜
――昭和60年(1985)2月21日の上演でした。上田村は、九世
竹本文字太夫(後の七世竹本住太夫)と豊澤富助。八百屋は
四世竹本越路太夫と鶴澤清治。清治がとにかく初々しく……
越路太夫も生で聴けなかった1人でしたね。床が暗くて、ぼんやりと
映っているだけなのですが、津駒太夫時代の竹本錣太夫、
清二郎時代の鶴澤藤蔵の姿を見つけて、嬉しくなりました。女房
お千代は若き日の吉田簑助、八百屋半兵衛は初代・吉田玉男。
八百屋から出遣いとなり、伊右衛門女房を遣っていた桐竹紋壽
(1934~2017)の佇まいに引き込まれ……良い顔をしているのです。
2時間18分の上映時間中、ご褒美は庚申参りの男女で登場する
吉田玉女(現・吉田玉男)と吉田簑太郎(現・桐竹勘十郎)のコンビ
でしょう。正直、全体に辛気臭いストーリーの中、ぱっと華やいで、
心が浮き立ちます。近松門左衛門(1653~1724)最後の世話物。
☆
これも、仲の良い夫婦が何故心中しなければならないのか?
単に姑が悪いとは済まされないところが、いやらしい筋の運びです
――義母の嫌う嫁を義母の顔を潰さずに、半兵衛の口を通して
家を去らせる。お千代に対しては、離縁するのではなく、夫婦で
連れ立って庚申まいりを行うため、共に家を去る。また、実家に
嫁を戻らせはしないと、義父との約束も守る。以上の条件を満たす
解が、(身籠もった子も巻き込んでの)夫婦心中と言うウルトラC。
近松のロジックは、常々、推理小説(パズラー)にも似て、奇妙な
歪さを示すことよ、と呆れ返ってしまいますが。リアルな心中事件を
題材にしたにせよ、密室のための密室、先に“心中”ありきなのね。
では、どうしても心中させるためには、どう詰めていこうか?という。
現実は、もっとどうでもいいことで、たまたまどうにかなって、人の
生き死にがある。しかし、そこに、“必然”を読み取れないことには
(フィクショナルな何かを導入することには、敢えて目を瞑り)、納得
できない人たちも一定数いる訳で、近松はその欲望に応えます。
「MIRAIL」の視聴期間は購入日から14日間で、10月14日に1度
鑑賞して、複数回に分けて2度目の鑑賞。2時間超のボリューム
ですから、時間を作るのがなかなか大変で、あっと言う間に期限が。
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