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一葉と豆腐

「昔取った杵柄(きねづか)」とでも言いましょうか。
樋口一葉の小説と義太夫の縁について触れた
とあらば、一葉と豆腐の絡みについても引用して
おきましょう。まずは、「にごりえ」から。お力に
入れ込んで零落してしまった元・布団屋の源七が
棟割り長屋に帰宅するや、女房・お初が夕飯を
支度する場面です。貧乏所帯のつらさ、切なさ。
       ☆
帯まきつけて風の透(す)く処へゆけば、妻は能代(のしろ)の膳のはげかかりて
足はよろめく古物に、お前の好きな冷奴
(ひややつこ)にしましたとて
小丼
(こどんぶり)豆腐を浮かせて青紫蘇の香(か)たかく持出せば、
       ☆
続いて、赤鬼の与四郎の妻(美尾)と娘(町)の虚栄
と悲哀を剔出する「われから」で、美尾(みを)が己の
若さと美貌を意識してしまった決定的な瞬間です。
“豆腐”を離れることが、悲劇へ踏み出す一歩でしょうか。
華美な生活に憧れてどうするよ?と苦虫を嚙み潰したく
なるのですが、若い娘らの性向を矯めることも出来ず。
身を売ろうが売るまいが、結局は皆が売女ではないか
と、執拗に一葉が恨み言を呟くのが聞こえてきます。
       ☆
豆腐(おかべ)かふとて岡持(おかもち)さげて表へ出(いづ)れば、
通りすがりの若い輩
(ひと)に振かへられて、惜しい女に
服粧
(みなり)が悪るいなど哄然(どつ)と笑はれる、
思へば 綿銘仙の糸の寄りしに色の褪
(さ)めたる紫めりんすの幅狭き帯、
八円どりの等外が妻としては これより以上に粧
(よそほ)はるべきならねども、
若き心には情なく
(たが)のゆるびし岡持に豆腐(おかべ)の露のしたたるよりも
不覚
(そぞろ)に袖をやしぼりけん       ※「〓」=「箍」-「手」偏

参考文献:樋口一葉『にごりえ・たけくらべ』(新潮文庫)
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

tag : 小説豆腐

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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(自称)。
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