蔵屋敷とは何か
「天下の台所」と呼ばれた江戸時代の大坂では、1630年代までに市中の水運の整備が進んでおり、寛文12年(1671)には西廻海運も確立されました。大坂は瀬戸内海の東端、西廻り航路の終点であるという地の利があります。堂島~中之島辺りにも諸藩の蔵屋敷が建てられ、その数は延宝7年(1679)に79、元禄10年(1696)に81、延享4年(1747)に92、天保6年(1835)に111――ピーク時には125も在ったといわれますが、明治4年(1871)の廃藩置県によって、蔵屋敷は新政府に接収されてしまいました。
お陰で、大阪経済は大混乱に陥る仕儀に立ち至る訳ですけれども、江戸時代経済の心臓のような機能を果たしていた蔵屋敷とは何だったのか。蔵屋敷とは、諸国の大名らが年貢米や特産品を売り捌く拠点とした屋敷です。蔵屋敷を経由する物資を「蔵物」と呼びますが、最も多かった米は「蔵米」と呼ばれていました。諸国から廻送されてきた米という意味では「廻米(かいまい)」、「登米(のぼりまい)」と呼ばれます。
蔵屋敷の役割を整理しますと、先程も述べたとおり、蔵物を売り払うこと――年貢米の搬入・保管・売却に当たりました。次に、領内非自給物資(例えば高級衣料品・美術品・武具)の調達。そして、借銀をすることでした。また、(大坂以西の)大名の蔵屋敷では、参勤交代時の道中宿泊所としての役目を持つところも多いです。
蔵米払米業務に当たった初期型の町人蔵元の代表が例の淀屋辰五郎なのですが、淀屋についてはまた後程。寛文以降、米仲買を蔵に集め、入札によって蔵米を販売する入札制に移行しますと、蔵元の主な役割が、仲買の選定、入札時期の決定、蔵の出し入れ業務に変わります。蔵ごとに指定されていた幕府公認の入札資格を持つ米仲買は「蔵名前」と呼ばれていました。入札制実施の結果、米仲買から代銀を受け取り、必要に応じ大名に為替を用いて送金する業務を請け負う掛屋が独立。蔵元が蔵屋敷の管理者とすれば、掛屋は蔵屋敷の出納係と言えましょうか。
入札の場も諸藩の蔵屋敷とされていたのは藩によって廻米の到着時期が異なり、入札時期が揃わないためです。蔵屋敷で落札した米仲買は、3分の1に当たる手付金(敷銀)等を掛屋に支払い、領収書の銀切手を受け取ります。銀切手と引き換えに蔵屋敷で米切手が発行されるシステムです。米切手は、1枚で10石の米と引き換えられる手形証券のような物。蔵屋敷が整わない時代の現物=米とお金の遣り取りから、米切手を用いた取引に変わりまして……米仲買同士が米切手を売買する場が「堂島米市場」でありました。
© 2022 林 まこ
お陰で、大阪経済は大混乱に陥る仕儀に立ち至る訳ですけれども、江戸時代経済の心臓のような機能を果たしていた蔵屋敷とは何だったのか。蔵屋敷とは、諸国の大名らが年貢米や特産品を売り捌く拠点とした屋敷です。蔵屋敷を経由する物資を「蔵物」と呼びますが、最も多かった米は「蔵米」と呼ばれていました。諸国から廻送されてきた米という意味では「廻米(かいまい)」、「登米(のぼりまい)」と呼ばれます。
蔵屋敷の役割を整理しますと、先程も述べたとおり、蔵物を売り払うこと――年貢米の搬入・保管・売却に当たりました。次に、領内非自給物資(例えば高級衣料品・美術品・武具)の調達。そして、借銀をすることでした。また、(大坂以西の)大名の蔵屋敷では、参勤交代時の道中宿泊所としての役目を持つところも多いです。
蔵米払米業務に当たった初期型の町人蔵元の代表が例の淀屋辰五郎なのですが、淀屋についてはまた後程。寛文以降、米仲買を蔵に集め、入札によって蔵米を販売する入札制に移行しますと、蔵元の主な役割が、仲買の選定、入札時期の決定、蔵の出し入れ業務に変わります。蔵ごとに指定されていた幕府公認の入札資格を持つ米仲買は「蔵名前」と呼ばれていました。入札制実施の結果、米仲買から代銀を受け取り、必要に応じ大名に為替を用いて送金する業務を請け負う掛屋が独立。蔵元が蔵屋敷の管理者とすれば、掛屋は蔵屋敷の出納係と言えましょうか。
入札の場も諸藩の蔵屋敷とされていたのは藩によって廻米の到着時期が異なり、入札時期が揃わないためです。蔵屋敷で落札した米仲買は、3分の1に当たる手付金(敷銀)等を掛屋に支払い、領収書の銀切手を受け取ります。銀切手と引き換えに蔵屋敷で米切手が発行されるシステムです。米切手は、1枚で10石の米と引き換えられる手形証券のような物。蔵屋敷が整わない時代の現物=米とお金の遣り取りから、米切手を用いた取引に変わりまして……米仲買同士が米切手を売買する場が「堂島米市場」でありました。
© 2022 林 まこ
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tag : 史跡
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手詰まり
屋敷神の件で、「日本銀行大阪支店」文書課
(TEL06-6206-7706)に問い合わせて
みましたが、ぼくの知っていること以上の
情報は得られず。島原藩なのか?と疑って
いるのですが、物証に欠けているのよね。
(TEL06-6206-7706)に問い合わせて
みましたが、ぼくの知っていること以上の
情報は得られず。島原藩なのか?と疑って
いるのですが、物証に欠けているのよね。