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詩人道真

夢の中でも酔っている。目覚めるとともに、酔いも覚まさなくては。
短歌的抒情に徹底して抗することを誓い、真のハードボイルドに
立ち返ることを思います。単に無味乾燥でなく、滅菌されただけでは
ない散文精神が必要なのです。それは、ポエジーを否定しません。
       ☆
(菅原)道真の詩のめざましい特質は、そのような成り立ち(中国の詩にたえず影響を受け、修辞の上で中国詩に典拠を持つ)でありながら、モチーフにおいてもテーマにおいても、詩は強靭な主体のコントロールのもとにあるということです。道真は何を詠うかについて、ただの一度も曖昧であったことがありません。そして、何を詠うかが明確に把持されている以上、それをいかに詠うかについても深く迷うことはなかったはずです。
 (中略)
 近代詩以後、あるいはロマン主義以後というべきでしょうが、私たちは心の純化と表現方法の単純化とは常に相伴っているはずだという暗黙の諒解を持っています。複雑な修辞の鎧におおわれた文章で書く精神は、当然純粋さからは遠いという思いこみは、日本人の心に深く棲みついているひとつの既成観念です。短歌や俳句という短くて単純な表現形式がしばしばその手近な例として想起されることも、隠れもない事実です。かつては難解呼ばわりの現代詩を書いていた詩人が、中老年になって短歌的抒情や俳句的観照の透明さに目ざめ、表現方法を単純化して心境小説的抒情詩を書くようになると、かえって賞讃を博するといったケースも稀れではありません、
 菅原道真のケースは、そういうものではありませんでした。
(中略)詩人の達観とは、詩を放棄したり薄味にしたりする所にあるのではなく、むしろ最後の瞬間にもいつもと同じように書ける、という所にあるだろうと思うからです。

参考文献:大岡信『詩人・菅原道真 ― うつしの美学』(岩波文庫)
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ジャンル : 小説・文学

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たまに「考える人」、歴史探偵。
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